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欧州鉄道の競争力、超高速構想より既存網強化を

2026年7月13日 (月)

国際欧州議会の科学技術未来パネル(STOA)は6日、2050年に向けた欧州鉄道の持続可能な発展シナリオと政策課題をまとめた調査報告書を公表した。鉄道への旅客・貨物の転換を進めるうえで、技術不足よりも、国ごとに分断されたインフラ計画や資金配分、相互運用システムの導入遅れが大きな障害になっていると指摘した。

EUは持続可能でスマートなモビリティー戦略や改正TEN-T規則を通じ、2030年から2050年にかけて中長距離の旅客・貨物輸送を道路や航空から鉄道へ転換する方針を掲げている。しかし現状の輸送実績は目標を下回っており、国境を越える列車の利便性や信頼性も十分ではないという。

報告書は、各国のインフラ整備や予算編成が国内事情を優先し、国境を越えた路線やダイヤ、輸送能力の調整に拘束力が乏しいと分析した。欧州鉄道交通管理システム「ERTMS」やデジタル運行管理の導入も地域によってばらつきがあり、国際旅客列車や貨物列車の競争力を損なっている。

今後の政策として、5つの選択肢を提示した。第1はERTMSの導入や旧式信号設備の廃止、国境区間のボトルネック解消を優先する既存制度の実行強化。第2は国ごとに分断された高速鉄道を、航空便からの転換が見込める国際回廊で一体的に整備する構想で、高速鉄道の整備により在来線の貨物輸送容量を確保する効果も想定する。

第3は、リアルタイム運行管理やデジタル輸送力配分、貨車のデジタル自動連結器「DAC」の普及などによる運行効率化。貨物鉄道については、設備の新設だけでなく、データ共有や自動化によって定時性、線路容量、車両稼働率を高める余地が大きいとした。

第4は鉄道を旅客、物流双方のドア・ツー・ドア輸送に組み込む需要主導型の複合輸送政策。旅客分野では予約・運行情報の共通化や鉄道と航空の一体商品化、物流分野では貨物ターミナル、ラストマイル輸送、リアルタイム追跡との連携強化を求めた。鉄道のシェアが伸びない背景には列車速度だけでなく、乗り換えや集配を含む輸送全体の使いにくさがあるとの見方を示した。

第5はハイパーループなどの超高速交通システムを一部の高需要回廊に整備する構想。ただし、技術面、資金面、需要面の不確実性が大きく、既存鉄道の保守や改良に充てる予算を圧迫する恐れがあるとした。報告書は、超高速システムや大規模な象徴的プロジェクトよりも、線路保守、電化、ボトルネック解消、デジタル容量管理への投資の方が、低いリスクとコストで輸送力と信頼性を改善できる可能性が高いと評価した。

5つの選択肢のうち、旅客や貨物の輸送経路全体を改善する複合輸送政策は、将来のシナリオを問わず一定の効果が期待できる「後悔の少ない選択肢」と位置づけた。一方、高速鉄道網の統合には大きな輸送転換効果が見込まれるものの、国境を越えた投資判断や運行調整を担う共通の統治体制が不可欠になる。

報告書は欧州議会に対し、EU予算や次期多年次財政枠組みを通じ、国境区間の整備、デジタル化、相互運用性の確保を条件とした安定的な資金支援を検討するよう提言した。欧州鉄道の脱炭素化と競争力向上には、新技術の開発だけでなく、既存設備の更新と各国制度をつなぐ統一的な運営体制が鍵になるとしている。

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