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AutoStoreの新たな提供モデルが、自動倉庫の選び方を変える

Pioが広げる、手が届く物流自動化の新しい入口

2026年9月29日 (火)

話題物流自動化への関心が高まる一方で、実際の導入にはなお高いハードルがある。数億円規模にもなり得る初期投資、長期にわたる要件定義やシステム設計、導入後の保守費用、そして自動化を設計・運用できる専門人材の確保だ。自動化を検討したくても、その入り口に立つまでの負担が大きい。

AutoStoreが日本市場へ投入した「Pio(ピオ)」は、こうした理由から自動化を検討したくても踏み出せなかった中堅成長企業に、新たな選択肢を示す。AutoStoreの技術を基盤としながら、構成や機能を標準化し、サブスクリプション型で提供することで、金額、時間、検討負荷、運用リスクのハードルを下げる狙いだ。目指すのは、AutoStoreを単純に小さく、安くすることではない。自動化を「何で実現するか」だけでなく、「どう始め、どう使っていくか」まで選べるようにすることだ。

AutoStoreバイスプレジデントジャパンの安高真之氏と、オカムラ スマートロジテック事業本部事業戦略部事業戦略室室長の飯寺亮介氏に、Pio投入の背景と、自動化市場をどう広げようとしているのかを聞いた。

▲「Pio」

AutoStoreが「止められないインフラ」になった

AutoStoreとオカムラが日本でパートナーシップを結んだのは2014年。国内1号機の稼働は2016年で、展開は10年目を迎えた。当時はロボット自動倉庫そのものが珍しく、飯寺氏は「展示会に出しても、まず『これは何ですか』というところから始まった」と振り返る。

現在では追随するロボット自動倉庫も増え、AutoStoreが比較対象に挙げられる場面も多い。安高氏は「ユーザーから見れば選択肢が増え、自分たちのビジネスに最適なものを選べる。良い時代になった」と受け止める。

同時に、AutoStoreに求められる役割も変わった。当初は、高密度保管とGoods-to-Personによる省人化が分かりやすい価値だった。だがECの拡大などを背景に、大規模で長時間稼働する物流拠点への導入が増え、処理能力や稼働安定性、安全性への要求も高まっていった。

プロツールの専門商社であるトラスコ中山ではAutoStoreを物流戦略の中核に据え、5拠点目の導入となる物流拠点「プラネット愛知」では10万ビン・ロボット100台というスケールで運用する。安高氏は「保管効率やGoods-to-Personであることは、むしろ当たり前の要素になってきた」と話す。設備単体ではなく、運用、保守、教育まで含めて、止められない物流を止めずに支えるインフラとしての責任が求められるようになったという。

背景には、物流の位置づけそのものの変化がある。「20年、30年前の物流は、本業の横にあるコストセンターだった。今は物流自体を武器にする会社が増え、少なくとも差別化要因になっている。だからこそ、物流にシビアにメスが入るようになった」(安高氏)

▲AutoStore 安高氏

高度化する一方で「手が出ない」企業も

一方で、AutoStoreが高度化する過程で、別の課題も見えてきた。

「AutoStoreはいいと思う。格好いいし、便利だと思う。でも、ちょっと手が出ない。そういう相談は今も多い」と安高氏は話す。

象徴的なエピソードがある。安高氏がある部品商社の導入拠点を訪ねた際、担当者は「この地域、この業界でAutoStoreを入れているのは僕らだけなんですよ」と語ったという。見学者は多く、誰もが「いい」と言う。それでも導入は1社だけ。「もったいないと思った。効果は分かっているのに、初期投資の大きさで、我々が知る前に諦めている企業がかなりいる」

ここでいう「手が出ない」は、価格だけを意味しない。大規模な自動化を何度も経験した企業であれば、自社に専門人材を置き、物量分析や業務設計、システム要件を詰めながら最適な設備をつくり込める。しかし、自動化経験の少ない企業に同じことを求めれば、導入前の検討そのものが大きな負担になる。

▲オカムラ 飯寺氏

飯寺氏は「自動化を見たことのない人が1からオペレーションを設計して、本当に想定通り動くのかという問題もある」と指摘する。

安高氏も、現在のマテハン業界を業務システムになぞらえる。

「今、経費精算システムをゼロからつくる会社はほとんどないはず。パッケージを使うのが当たり前。それなのに、マテハンはいまだにフルスクラッチが多い。もちろんカスタマイズが必要な企業はいるが、全員が本当に必要なのかと思う」

フルスクラッチの作り込みには、もう一つの弱点がある。完成した瞬間の業務に最適化されるため、ECの拡大や荷主の入れ替わりで前提が変われば、合わなくなっていくことだ。「10年の間にお客様のビジネスが大きく変わることを、我々はコロナ禍で経験した」と安高氏は言う。

自動化は、本当に一社一社ゼロから設計しなければならないのか。その問いに対するAutoStoreの一つの回答が、Pioだ。

45平方メートルから「自動販売機のように置いて使う」

Pioの基本的な仕組みはAutoStoreと共通する。格子状のグリッド内部に専用ビンを高密度で収納し、その上をロボットが走行して必要なビンを取り出し、作業者のいるポートへ運ぶ。違いは、顧客ごとに1からつくり込むのではなく、サイズや構成、アプリケーションなどをあらかじめ標準化している点にある。

最小モデルは45平方メートルから検討できる。安高氏は「どの倉庫や工場にも、50平方メートル、100平方メートルくらいの微妙に使いにくいスペースはあるのでは」と話す。本格的なマテハン機器を広げるには中途半端で、朝の体操場所になっていたり、一時的な平置き場になっていたりする場所だ。そこにPioを設置すれば、従来は床や棚に広げていた在庫や部品を高密度で格納できる。

安高氏はPioを「飲料の自動販売機」に例える。「格納効率よく物を出し入れできる装置。カスタマイズはできないが、置ける場所があれば置いて使う。そのくらいシンプルなことが強み」。従来のAutoStoreがフルオーダーだとすれば、Pioは既製の家電製品を買う感覚に近い。個別運用の自由度を抑える代わりに、検討期間や設計工数、社内負荷を減らすことができる。

専用アプリ「Pio App」も用意され、AutoStore部分だけでなく、平置き棚のピッキング管理にも対応する。これまで本格的な在庫管理システムを導入していなかった企業でも、既存棚とPioを一つの仕組みの中で管理できる。

つまり、Pioが下げるのは設備価格だけではない。自動化を設計する専門人材やDX人材を十分に抱えていない企業でも、検討しやすいこと自体が大きな特徴となる。

▲床面積最小45平方メートルから最大262平方メートルまで4機種をラインアップするPio(出所:AutoStore)

「うちでも使えるかもしれない」と思える具体例

では、どのような現場がPioに向くのか。

1つは、倉庫や工場に余剰スペースを抱えている企業だ。50-100平方メートル程度の使い切れていない場所にPioを置き、部品庫や在庫保管エリアとして使う。外部倉庫を借り、日々横持ち輸送している企業であれば、その費用と比較して自社内への集約を検討できるケースもある。

小規模ECも対象になる。事業が成長し、手作業によるピッキングや在庫管理が限界に近づいた一方、大規模な自動倉庫を導入するほどではなく、3PLへ全面委託する段階でもない。そうした「手作業と本格自動化の間」にPioが入る余地がある。

3PLや卸売業では、契約期間との相性もある。設備の投資期間と荷主との契約期間が合わないことが、自動化の壁になってきた。安高氏によると、20人に満たない程度の小規模現場で、荷主との契約期間が3年程度の場合、従来は設備投資を契約期間内で回収することが難しく、自動化を見送るケースが多かった。Pioは最低利用期間を3年としており、契約期間と設備利用期間を合わせて投資を考えやすい。

また、「自社に合うか分からないので、まず試したい」という企業にも向く。導入当初はグリッドの半分程度しか在庫が埋まっていない企業もあるといい、事業の成長とともに埋めていける余白も、始めるハードルを下げている。

10年間使うことが最初から明確で、独自の業務要件に合わせたカスタマイズが不可欠なら、従来のAutoStoreの方が合理的な場合がある。「カスタマイズしたいのであれば、AutoStoreをご検討くださいとお話ししている」と安高氏は言い切る。一方で、まず小さく導入して効果を確認し、事業成長に応じて拡張する、あるいはAutoStoreへ移行するという使い方にはPioが合う。

最低利用期間を終えた後には、継続するだけでなく、拡張、AutoStoreへの移行、利用終了という段階的な自動化の選択肢も持てる。

「投資するリスク」だけでなく「投資しないリスク」の見極めを

Pioは、企業の投資判断にも別の視点を持ち込む。

前提となる数字がある。倉庫作業員の募集時平均時給は900円台から1230円へと、この十数年で約4割上昇した。直近3年は年4-6%のペースで上がり続けている。「今は人の方が安い」という判断の分母は、毎年動いている。

自動化を現在の人件費だけと比べれば、「今は人の方が安い」という判断になることもある。安高氏は、その判断自体を否定しない。ただし、「投資するリスクは誰もが考えるが、投資しないリスクも考えているかがますます重要になる」と指摘する。

実際、AutoStore導入企業では、自動化で余剰になった人員を削減するのではなく、より付加価値の高い業務へ配置転換するケースも多いという。長年働いてきた人材を単純作業から解放し、より重要な業務へ振り向ける。将来の採用難や人材確保まで考えれば、自動化の価値は「何人減らせるか」だけでは測れない。

飯寺氏は、Pioの月額料金に保守を含めることで、将来のランニングコストも見通しやすくなると説明する。「故障したらいくらかかるか分からない、という状態に比べ、年間どれくらい予算を確保すればよいか分かる。社内稟議や決裁のハードルを下げる要素になる」

設備投資額だけでなく、検討にかかる時間や人件費、将来の採用難、保守費用、事業継続リスクまで含めて考える。それがPioの提案する新しい投資判断でもある。

「置いて使える」を、安心して使い続けられる環境へ

Pioは、従来の自動倉庫に比べ、導入までのプロセスを大幅に簡素化したプロダクトである。一方で、実際の物流現場では、設置して終わりというわけではない。

安高氏はPioについて「ソリューションというより、プロダクトに近い」と表現する。家電製品のように、仕様や使い方がある程度決まっており、利用者がその仕組みに合わせることで、導入時の複雑さを減らす考え方だ。

その一方、稼働後には保守や運用支援が必要になる。ロボットや設備を安定して使い続けるための点検、トラブル時の対応、日常的なメンテナンスなど、現場で継続的に支える役割は残る。飯寺氏は、これまでの顧客の課題を聞き取り、仕様を詰め、個別設計するといった導入プロセスとは大きく変わり、導入前の設計負荷を抑えた分、適切な設置や立ち上げ、稼働後の運用を支えることが重要になるという。

Pioが目指すのは、専門家でなければ扱えない自動倉庫ではなく、より多くの企業が使える標準化された設備である。その使いやすさを実際の物流現場で定着させ、長く安定して使える環境を広めたいと飯寺氏は語る。安高氏は、かつて日本では未知の存在だったAutoStoreを市場に定着させたオカムラが、今度はPioという新しい選び方をどう広げるかに期待を寄せる。

(出所:AutoStore)

自動倉庫の、新しい始め方

安高氏は、Pioが目指す先を「マテハンの民主化」と表現する。これまで自動倉庫は、専門家が設計し、大規模な投資を行える企業が使う特殊な設備になりがちだった。Pioでは、高密度保管、Goods-to-Person、モジュール性、メンテナンス性といったAutoStore本来の価値を、より標準化した形で利用できる。

飯寺氏も「入れやすさは価格だけではない」と強調する。要件定義が難しい、仕様を決めるのが大変、専門知識が必要といった複数のハードルを下げることで、これまで「マテハン導入は大変だ」と感じていた企業にも検討の入り口をつくる。

ここで変わるのは、選べる設備の数だけではない。一から自社専用に設計するのか、標準化された仕組みを使うのか。大規模に導入するのか、小さく始めるのか。設備を保有するのか、サブスクリプションで利用するのか。さらには、将来AutoStoreへ移行する未来まで見据えるのか。

企業は自社の規模や人材、スペース、事業の見通しに合わせて、自動化の始め方そのものを選べるようになる。

物流インフラを支えるAutoStoreと、小さく始められるPio。その2つによって、これまで自動化の検討に踏み出せなかった企業にも新たな道筋が生まれる。Pioが広げるのは、自動倉庫という設備の選択肢だけではなく、物流自動化における「選び方」そのものだ。

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