話題三井住友建設は11日、物流施設向けの耐震部材として、壁の水平方向の鉄筋が柱に定着不要な鉄筋コンクリート(RC)造耐震壁構法「バーディウォール構法」を新たに開発した、と発表した。
同社のミック構法(三井住友建設式柱RC梁S混合構法)に、高い剛性・耐力を持つRC耐震壁を容易に組み込むことが可能となった。これにより、耐震性の高さと施工スピードの速さを両立し、堅牢さと経済性を併せ持つ新たな構造の物流施設を提案していく。
物流施設では躯体コストを抑え、規模にかかわらず10-12か月程度の工期で竣工させることが主要なニーズの一つになっていることから、梁部材にはスパン(柱間隔)を大きくでき、施工性が簡便な鉄骨(S)を用い、柱部材は剛性が高く、低コストのRC造とする、柱RC梁S混合構法(ミック構法)を採用することが多くなっている。
ミック構法の工期面の特徴を最大限に生かすため、柱・梁のみで構造躯体を構成する純ラーメン構造を採用することが一般的だが、純ラーメン構造は床荷重が大きく、大スパンになるほど梁部材は圧延鋼材(ロール材)の仕様を超える高い断面性能が必要となり、コストが割高になるという問題がある。
こうした課題を踏まえ、同社はミック構法に用いる耐震部材としてRC耐震壁に着目。室蘭工業大学大学院くらし環境系領域の荒井康幸教授、溝口光男教授との共同研究で、壁横筋の柱への定着が不要なRC耐震壁構法「バーディウォール構法」を考案・開発し、設計法を確立したもの。
通常、RC耐震壁は、壁板の水平方向の鉄筋(横筋)を両側の柱に定着させる必要がある。施工計画上、壁板のみを後で施工する場合には、定着用の鉄筋を柱から突出させておくか、機械式継手を用いる必要があるため、物流施設のように階高が高く、スパンが大きい大型の壁の場合には、型枠・配筋に関わる手間(人工・時間)が膨大となっていた。
このため、これまではRC耐震壁の分離施工は行われず、RC耐震壁は両側の柱とともに配筋作業を行い、コンクリートを同時打設することが一般的で、壁の施工スピードが建物全体の工期に大きく影響していた。
バーディウォール構法の採用で、壁板と柱との分割施工が容易に可能となるため、耐震性に優れた耐震壁を短工期で実現できるようになった。
三井住友建設では、バーディウォール構法を高品質・短工期・低コストを実現する構造方式のひとつとして位置付け、ミック構法を採用する物流倉庫を中心に積極的な提案をしていく。また、RC耐震壁を造りやすいというバーディウォール構法の特長を生かし、S造やSRC造の既存オフィスの耐震補強にも展開していく。