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兵機海運取材レポート

「その仕事、港湾でもできますよ」連載第1回

2020年7月14日 (火)

話題米中貿易摩擦への懸念増大に加えてコロナショックによる業績悪化と先行き不透明感は総輸出入の99%超を担う外航海運に大きな影を落としている。2020年3月期の海運各社の決算概況と次期予測には、その苦境にある実態が一様に表れていた。(企画編集委員・永田利紀)

しかし、”各社”と謳いながらも、業界大手の動向を主たる指標として説明や分析のうえ総括することが報道の常となっていることは否めない。結果として中堅以下の海運会社の業績や動向について情報が少ないことも事実だ。どこを見ても悲観材料渦巻く中、視点を変えた動向分析も必要ではないだろうか。

中堅海運会社が取り組む事業、つまり国内物流にかかわる各論についての戦略や行動の具体的な中身を考察することで、陸運や倉庫との新しい交わりや競合の可能性などが視えてくる気がしてならない。その実際を探るべく、神戸市にある兵機海運に話を聞いた。

■ 手堅い内航事業にも逆風

兵機海運執行役員倉庫部長・大東慶治氏

 

「コロナウィルスの影響としては、オリンピック延期による内航事業へのダメージが大きい。記憶にある限り、内航部門がここまで苦戦することはなかった」(兵機海運執行役員倉庫部長・大東慶治氏)

 

鋼材輸送に強みを持つ兵機海運にとって、東京オリンピック特需による建設関連の受注中断や延期は手痛い。「内航部門がここまで苦戦することはなかった」と大東執行役員は表情を曇らせる。その堅実性から、長きにわたり経営の大きな柱となっている内航事業の収支不安定化は心痛の種となっているという。

しかし、中堅海運会社は大手と比べて小回りが利く。営業拠点における保管や作業メニューの独自性を研ぎ、既存顧客に対する付加サービスの上乗せと新規顧客の開拓に舵を切る時が到来しているのではないか。

■ 規制の中でも個性を追求

▲兵機海運本社

海運や港湾作業にはさまざまな規制や届出・認可が存在するため、多くの外部者は「港湾部には独特のルールや規制があり、一般企業には敷居が高い」という感想を抱くが、業務の流れを分解して個々に検分すれば、特殊さや未知の内容は皆無といっていい。むしろ「いちいち制限したり切り分けたりしなければならない」煩雑さや、届出・認可を必要とするがゆえの多能工的企業の寡少さが目立つ。

そんな現状に至った経緯も、じっくり話を聞けば理解に易いが、実務の最前線や業務フローだけを切り取って評論すれば「港湾は独特」という一言でくくられてしまうだろう。神戸と姫路に基幹拠点を構える兵機海運にとっても、内外航に連なる港湾業務への向き合い方は、それなりの工夫と選択の繰り返しによって今に至ったのだという。

港湾部の一連の庫内作業を単独でまかなえている企業は意外に少なく、時間とコストの相関から考えても自社の強みと認識している。兵機海運執行役員倉庫部長・大東慶治氏

大東氏の言葉には、今後の事業戦略に対する自信と根拠が表れていた。

■ 特化するための投資

兵機海運の本社はポートアイランドの北端部に位置する。その南西方向へ直線距離で2.5キロ離れた兵庫ふ頭で、ことし1月に新しいセンターが稼働を開始した。

▲危険物倉庫2棟

新センターは、神戸港湾エリアで不足している危険物取扱倉庫(一部通常倉庫)として2800坪の床面積を供給。温度帯別定温保管などの設備要件を満たす単層建屋2棟と、常温並びに定温管理部分を併設する三層建屋1棟の計3棟で構成されており、敷地内には危険物を収納するタンクコンテナの野積保管スペースまで備える。

また、同センターは埠頭の北東端部に位置し、公共岸壁が海側境界となっているため、極めて効率よく輸出入貨物を取り扱うことができる。庫内荷役や保管との連動によって、合理的な業務提案と相応のコストが提案されれば、荷主企業には魅力多いに違いない。

「エリア内特化を目指す」という同社戦略の実践ともいえるが、兵庫ふ頭内で最大規模となる4665坪の敷地面積を確保したことは、その意志の表れと評価してよいだろう。

―第2回(7月17日公開予定)に続く

▲兵庫ふ頭の航空写真、手前3棟が兵機海運の新センター

永田利紀氏の寄稿・コラム連載記事
“腕におぼえあり”ならば物流業界へ~正社員不足、求人企業は偏見改めよ
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コハイのあした(コラム連載・全9回)
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