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日本郵船など、排出ガス削減へ最適な船舶設計研究

2021年12月2日 (木)

(出所:日本郵船)

ロジスティクス日本郵船とグループのMTI(東京都千代田区)は2日、米国船級協会(ABS)と船舶用主機関設計会社のWinterthur Gas & Diesel(ウインターツール・ガス・アンド・ディーゼル、WinGD)の2者とともに、船舶の温室効果ガス排出量の削減効果最大化を目的とした、船舶用主機関のバッテリーハイブリッドシステムによる船舶設計最適化の共同研究を開始したと発表した。

船舶は、荒天時などに強い波や風の影響を受けながらも航行速度を維持するため、主機関の回転数を大きく上げることがある。機関の回転数が大きく変動するときに機関に負荷がかかる現象を「負荷変動」という。船舶のプロペラシャフトには軸発電機が接続され、主機関の回転数に応じた電力を発生させて船内に電力を供給している。

バッテリーハイブリッドシステムは、主機関の負荷変動時にバッテリーから船内に電力を供給することで軸発電機の負荷を軽減し、船が推進に使える力を増やせるとともに、効率的な主機関の運転が可能となる仕組みで、外航船舶での導入が進む。バッテリーハイブリッドシステムは、発電機関の代わりに船内の機器運転用や生活用などに電力を供給できるため、温室効果ガス排出量の削減にもつながる。

今回の共同研究は、バッテリーハイブリッドシステムによるGHG排出量の削減効果を最大化するため、日本郵船とMTI、ABS、WinGDの4者の技術の結集による船舶の統合シミュレーションモデルの創出を目指す。

▲シミュレーションのイメージ(出所:日本郵船)

日本郵船とMTIの持つ船舶の実海域性能、WinGDの持つバッテリーを含めた機関プラントのモデル化技術を組み合わせて船舶全体の統合モデルを作成。ABSが温室効果ガス削減効果の評価についてアドバイスを行いながら、デジタル空間で船舶を設計する。実海域の気象海象を想定したシナリオで運航シミュレーションを行い、明らかになった課題を反映してシミュレーションモデルを改善し、船舶設計の最適化を目指す。

共同研究は、設計段階から船舶のユーザーである日本郵船およびMTIと、船舶機器メーカーのWinGD、そして船舶の評価機関であるABSがデジタルモデルを共有してシミュレーションを行い、連携して船を造り上げるという海事産業において画期的な取り組みと言える。

日本郵船とMTIは、ABSやWinGD、造船所などと協力しながら、共同研究で得られたシミュレーションの結果と実際に完成した船の実海域でのデータを照合。シミュレーションの精度を向上させることで、今後の日本郵船グループの新造船計画における中心的な技術としていく。