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21年労災死傷者は16%増の14万人超、コロナ影響か

2022年3月7日 (月)

(イメージ)

調査・データ2021年の1年間に労働災害により、死亡したり休業4日以上のけがをしたりした人は14万3156人にのぼり、前年と比べて16%も増加したことが、厚生労働省のまとめた速報値で明らかになった。厚労省は労災事故の増加について、「新型コロナウイルス感染拡大の影響で出勤できない人が相次ぎ、少ない人員で業務を進めざるを得なくなった結果、一人あたりの業務量が増えた可能性がある」と分析。コロナ禍がもたらした「新しい働き方」の課題が浮き彫りになった形だ。

コロナ禍を契機に就労の概念が変わろうとしている今こそ、物流業界をはじめとする各業界で、労働災害に対する現場の課題認識と未然防止の取り組みの徹底が求められる。

今回の調査は、全産業における「製造業」「鉱業」「建設業」「交通運輸事業」「陸上貨物運送事業」「港湾運送業」「林業」「農業、畜産・水産業」「第三次産業」の計9業種を対象に、労働災害の発生状況を集計した。

産業別では、「第三次産業」が7万6220人と全体の半分以上を占め、前年比24.4%増。「製造業」が2万7525人で11.8%増、「陸上貨物運送事業」が1万6171人で6.4%増、「建設業」が1万5501人で7.8%増などとなった。

■2020‐2021年労災死傷者数推移
業種死傷者数(人、2020年)死傷者数(2021年)増減率
製造業2461627525△11.8%
鉱業193210△8.8%
建設業1437915501△7.8%
交通運輸事業25922860△10.3%
陸上貨物運送事業1519616171△6.4%
港湾運送業319373△16.9%
林業12621214▼3.8%
農業、畜産・水産業30743082△0.3%
第三次産業6125876220△24.4%

死亡した人も、21年で818人と9.7%増加。産業別では、「建設業」が279人と全体の3割以上を占め12.5%増。「第三次産業」が10.7%増の218人、「製造業」が3.9%増の132人、「陸上貨物運送事業」が4.8%増の87人、と続いた。

■2020‐2021年労災死亡者数推移
業種死亡者数(人、2020年)死亡者数(2021年)増減率
製造業127132△3.9%
鉱業711△57.1%
建設業248279△12.5%
交通運輸事業1018△80%
陸上貨物運送事業8387△4.8%
港湾運送業34△33.3%
林業3629▼19.4%
農業、畜産・水産業3440△17.6%
第三次産業197218△10.7%

状況別では、「転倒」が3万2180人と最も多く4%増加。「墜落・転落」は2万481人で2%減、腰痛を起こすなどの「動作の反動・無理な動作」が1万9420人で1%増となった。

厚労省によると、状況別のなかでも「転倒」と「動作の反動・無理な動作」による死傷者数は年々増加傾向で、全体の4割を占めている。「転倒」においては、半数が骨折などを伴う休業1か月以上の災害で、後遺症をともなう重篤な災害も発生。なかでも「第三次産業」のうち「小売業」と「社会福祉施設」での不安全な行動(行動災害)の割合が高まる傾向にあるという。

そこで厚労省は、新たな取り組みとして22年度から、行動災害が増加傾向にある食品スーパー・総合スーパーなどの小売業や介護施設を対象に、その本社や法人本部主導による自主的な安全衛生管理を促進するため、各労働局内に協議会「+Safe」(仮称、プラスセーフ)を設置することを都道府県労働局長宛に通知した。

+Safeは、管内での波及効果が期待されるリーディングカンパニーや地方公共団体、関係団体などを構成員とし、連携しながら取り組み目標の設定や行動災害の予防にかかわる啓発資料などの作成、構成員の安全衛生管理の好事例を紹介するなどの取り組みを行う。

物流業界の関係者が多くを占める業種「陸上貨物運送事業」でも、荷役作業時での労災が高止まりしている。

陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)と厚労省は、新型コロナの感染拡大により配達需要の増加が見込まれるなか、荷役作業の安全確保を呼びかける緊急ポスターを作成。陸上貨物の荷主や配送先、元請事業者らに、安全対策を呼びかけている。21年末には、陸上貨物運送業における荷役作業の安全対策に関する検討会を設置。保護帽の着用義務付けといった作業者教育や、トラック後部に装着する荷物積み下ろし用の昇降装置の墜落・転落防止対策などについて、議論を進めている。