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カスタムソフトやノウハウを活かしたSaaSで物流を支える東計電算のこだわり

物流事業者や荷主企業の管理業務をシステムで効率化

2022年3月30日 (水)

話題店舗を順番に回って荷物を配送する女性ドライバー。この日のうちに6店舗に荷物を納めなければならない。3番目の店に着いた。「さあ、ここが終わればあと半分だ」。ポケットから取り出したドライバー用のスマートフォンでアプリケーションを起動し、「荷卸し」ボタンをタップして作業開始時間を入力する。配送ルートのスケジュール表をチェックする。予定よりも5分早い。今日もここまで順調だ。

(イメージ)

店舗の納品口をくぐると、顔馴染みの在庫管理担当の男性がいつもの笑顔で出迎える。「そろそろ来ると思って待ってたよ。『もうすぐ到着します』ってスマホにメッセージが入るから、安心だね」。店舗までの距離が近づくと、自動で相手に到着を予告する連絡が入る仕組みになっているのだ。

スマホ配送管理アプリ「Trustar」(トラスター)。物流現場での活用を想定し、運行状況を「見える化」できる。ドライバーの強い味方と言える、このスマホ配送管理アプリを開発したのは、ソフトウェア開発を手がけるシステムインテグレーターの東計電算だ。車載器メーカーの矢崎エナジーシステムと共同で開発したこのアプリ。その開発プロセスから見えてきたのは、東計電算のソフトウェア開発への強いこだわりと、物流現場の業務改善への強い使命感だった。

スマホ配送管理アプリ「Trustar」特設サイト

計算機ビジネスからソフトウェアに行き着いた「ベンチャー精神」

フィルター製造を手掛ける東京濾器(ろき)の機械計算課などを母体に、公認会計士の甲田博康・現会長が1970年に設立した「東京濾器計算センター」。計算機がまだ普及していない時代だからこそ、将来性の高さを見据えて起業した甲田氏の「ベンチャー精神」は、ソフトウェアの開発に行き着く。設立10年を迎えた80年、商号を「東計電算」に変更。その名のごとく、将来の成長領域としてソフトウェア部門を設けてオンラインプログラムの開発に着手する。これが現在の社業であるシステム開発につながっていく。

▲東計電算運輸システム営業部係長の矢野貴之氏(左)と運輸システム営業部システム開発2課の瀧澤天斗氏

今でこそ、ソフトウェア開発事業者は星の数ほど存在する。しかし、老舗システムインテグレーターの東計電算には、こうした企業にはない強いこだわりがある。運輸システム営業部の矢野貴之係長は語る。「創業者は、ソフトウェアの開発にあたって貫き通している『こだわり』があります。それはカスタムを含め、お客様の目線に沿ったサービスを提供することです」

「カスタム仕様」というフレーズは、日本のシステム業界でしばしば耳にする。日本企業の強みの一要素として語られることが多い。発注者の意図をくみ取り、その企業の特性や業務内容、経営思想に応じた製品を提供する。「特別仕様」「オーダーカスタム」と呼ばれる発想だ。なかでも、経理や管理などの「事務業務」を効率化するシステム開発に強いこだわりがあったという。企業で例えるならば、現場で繰り広げられる「実業」と、それに必要な「管理」の業務を連動させる役割といったところだろうか。

▲「Trustar」の機能一覧(クリックで拡大)

カスタム仕様のソフトウェアがWMSとして一気に開花

こうした「カスタム仕様」へのこだわりは、1990年代に花開くこととなる。ある大手総合スーパーマーケットチェーンからあるソフトウェアの開発を受託したのが始まりだった。日用雑貨やアパレルを扱う物流センター向けのWMS(倉庫管理システム)。入庫、出庫、在庫管理などをデジタル化することで、物流品質や生産性の向上につながるシステムとして、流通業などを中心に導入企業が広がり始めていた。

既にソフトウェア開発では相応の知名度があった東計電算は、こうしたカスタム仕様のWMS提供を契機として、さらに顧客の要望に応じたソフトウェア提供企業として存在感を高めていく。WMSの開発を求める企業は物流業界だけではない。顧客になった物流企業と契約する荷主企業にも取引先が広がると、開発ソフトの仕様にかかる要請も多岐にわたり、「カスタム仕様」の強みが遺憾なく発揮されるようになった。

「カスタムへのこだわりが実証されたわけです。『深く広くシステムをつくる』ことが、東計電算のスローガンとなっていったのです。ついにはデータセンターを新設し、サーバーも自社で管理することになります」(矢野氏)

荷主企業にまでWMSをはじめとするソフトウェア開発の受託が広がると、もはや業種・業態に合わせたカスタム仕様は限界があるとの意見も、社内で生まれた。しかし、最後はカスタムを貫くことが東計電算の存在価値だと認識し、その方針が変わることはなかったという。

豊富な陣容が「カスタム」を支えるパワーだ

(イメージ)

東計電算の「カスタム」式ソフトウェア開発を支えるのは、その豊富な陣容だ。各業界ごとに専門部隊が組成され、ユーザーを個別にサポートしている。これは他のソフトウェア企業では実現できない布陣なのだという。

WMS開発を契機に主力領域となった物流系の業界分けは、特に細かい。「運送・物流業」「EC(電子商取引)・通販」「小売業」「流通」といった具合だ。「運送・物流業」を対象とする専門部隊は総勢120人。そのうち実に110人がシステムエンジニアだというから、ライバルのソフトウェア開発企業が聞いたら泡を吹くレベルだ。

「開発段階で必要とされる要所でのマンパワーと柔軟性。これが東計電算の強みなのです」。矢野氏は、事業計画や成長シナリオに合わせたスピード感で対応できる強みを維持するため、こうした陣容にこだわるのだと強調する。

物流へのこだわり、それは社会インフラを支える「使命感」

東計電算がWMS開発をきっかけに物流向けのソフトウェア開発に注力してきたことは分かった。しかし、現在に至るまで「物流」にここまで傾注する理由は何なのか。

「WMSの開発を通して、物流事業者や荷主企業を中心としたビジネスパートナーのネットワークが強固になっていきました。その過程で、物流が担う『社会に不可欠なインフラ』と言う使命を共有することができたと考えています」(矢野氏)

東計電算が開発し提供したWMSは、そのカスタム仕様ゆえに、納入先である物流企業の倉庫業務の効率化・最適化に大きく貢献した。その結果、荷主企業の商品管理・輸配送業務の精度も上がれば、その恩恵は広く消費者に行き渡ることとなる。こうした社会への波及効果を強く認識した東計電算は、物流領域へのソフトウェアの提供によって持続的な社会生活を支える役割を果たしていることに使命感を抱くようになった。それが今の東計電算にも受け継がれていると言うわけだ。

 

WMSからTMSへ、深化する物流管理システムへの傾倒

東計電算と名を変えると同時にスタートしたソフトウェア開発ビジネス。WMSに続く物流管理システムとして、2010年台中盤にはTMS(輸配送管理システム)の開発にも参入。その名も、運送業向け基幹システム「轟〜TODOROKI〜」(とどろき)。経営・管理に必要な「収支管理」を実現するシステムとして、物流業界に訴求を強めている。ここに配車システムとともに組み込むことで、各社が連携したTMSを構築できると考えて開発したのが、スマホ配送管理アプリのTrustarだ。

▲動態監視画面

42年の歳月を経て生み出した新サービス。東計電算のデータセンターと物流企業の管理者、さらにドライバーがインターネットでつながることで、場所を選ばず活用できる。ユニークなのは、物流現場での使用を想定した「付加作業」の機能だ。

「トラックの庫内温度や台車など集配機材など、輸送業務ならではの情報を記録する必要が、配送ドライバーにはあります。そこで、運行フローとは別に12個のアイコンで構成する『付加作業』のコーナーを設けて、各企業毎に自由にタイトルを決めて記録を入力できるようにしました」(運輸システム営業部・システム開発2課の瀧澤天斗氏)

ドライバーの仕事はあくまで車両を使って荷物を運ぶことなのであり、日報を作ることではないはずだ。瀧澤氏は、こうした課題認識こそが東計電算の「こだわり」であり、まさに物流ドライバーに「カスタム経験・培ったノウハウを活かしたサービス」を提供できる強みでもあると考えている。

究極の「カスタム仕様」はドライバー業務をスマホで完結できるシステム

「カスタム仕様」へのこだわりがソフトウェア開発の力を高めている東計電算。これから先、物流領域を軸としたソフトウェア開発の方向性をどう定めているのか。

「究極の『カスタム仕様』は、ドライバーが事務所に行かなくても業務を完結できる管理システムの開発だと考えています」(矢野氏)。トラックで配送先へ出発する前の、出勤から点呼、アルコールチェック、業務連絡といった一連の手続き。帰社後の点呼と日報などによる報告、退勤手続き。これがスマホアプリのTrustarで完結できれば、もはや事務所業務の大半が不要となる。その分、付加価値の高い業務に専念できたり、残業時間の圧縮につなげたりできるわけだ。いわば、業務のポータルサイト化だ。

顧客の要望に即して、時には逆に提案しながら、カスタム仕様のソフトウェア開発にこだわり続ける東計電算。物流領域へのソフトウェア提供に使命感を抱きながら、ついにスマホアプリ開発で新境地を開いた。汎用ソフト全盛の時代に、あえて「職人」の世界観を貫くその気風に、強い信頼感を感じずにはいられない。

▲「Trustar」のスマホ画面イメージ

東計電算運輸システム営業部HP
■運送会社の管理業務DX特集