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第3回関西物流展閉幕、新たな「見本市のあり方」提示

2022年6月24日 (金)

イベント大阪市住之江区のインテックス大阪を会場とする「第3回関西物流展」が24日、3日間の会期を終了して閉幕した。新型コロナウイルス禍によるビジネス機会の停滞からの回復が顕著になってきたなかでの開催となった今回は、関西における物流展の存在意義が再認識されたことを強く印象付けた。「第1回マテハン・物流機器開発展」を併催するなど新たな潮流も生み出した今回の関西物流展は、物流業界における見本市のあり方も提示する好機となったようだ。

話題が豊富だった感も強い今回の関西物流展。閉幕に先立って、展示会事務局の岩本匡史・営業企画部長に、今回の関西物流展における来場者の反応や見本市運営の印象を聞いた。

3回目の開催で、過去最多の来場者数も射程圏に

――今回の関西物流展における来場者の動向は。

▲第3回関西物流展事務局の岩本匡史・営業企画部長

岩本 感染が拡大していた第2回はもちろん、コロナ禍以前に開催された第1回をも上回る来場者数を記録しそうな勢いだ。特徴的なのは来場者の地域別の内訳で、地元の近畿地方からの来場者比率が第1回の70%、第2回の90%に対して今回は65%に下がった。代わりに東海や関東、中国地方の比率が高まっている。コロナ禍で関西方面の出張を自粛していたことから、今回の関西物流展が絶好の対面商談機会となったことを裏付けていると言えるだろう。

――来場者の興味や関心の傾向をどうみているか。

岩本 「関西初出展」であることを強く訴求するブースが例年よりも目立った印象だ。関西をはじめとする西日本の企業に先進機器やシステムを提案したい企業の意思が伝わってくる。来場者も、インターネットなど非対面では得にくい情報を、ブースで担当者と顔を突き合わせることで獲得できる利点を実感できたのではないか。来場者は「コスト削減」や「労働環境の改善」のテーマに高い興味を抱いている傾向があるようで、近年の物流減間における課題認識を反映している。

「物流機器開発展」はさらなるアピールが課題に

――マテハン・物流機器開発展をあらたに開催した成果と課題は。

岩本 設計や製造、研究開発、調達、生産管理などマテハン・物流機器開発展で想定していた属性の来場者が事前登録ベースで全体の15%を占めた。一定の開催意義はあったと考えている。一方で、関西物流展スペースと明確な区分けをしなかったことから、会場を探すのに苦労した来場者の声も届いている。次回の「第2回物流機器開発展」では、明確なスペースの確保とバナーを吊り下げるなどのアピールを強化していく考えだ。

▲第1回マテハン・物流機器開発展の出展ブース。技術面での訴求で一定の成果も

――今回の出展ブースやセミナーの内容における印象は。

岩本 ロボットをはじめとする各種機器を実演で訴求するブースが増えて、会場全体がさらに賑やかになった。それぞれの出展者が、相当気合いを入れて今回の関西物流展に臨んでいると実感した。一般的に、東京以外の地域で開かれる見本市では、実機ではなく映像や模型などを使った展示が多い傾向にあったが、今回は違った趣向を感じている。対面での商談の機会を心待ちにしていた担当者の思いが、来場者にも伝わったのではないか。

会場スペースを拡大する次回、課題は「回遊性」の確保と「技術」の訴求

――今回の会場運営で浮き彫りになった課題は。

岩本 2023年4月12日の開幕を予定している「第4回関西物流展」「第2回物流機器開発展」は、全体の会場スペースを広げる計画だ。出展者数を増やすとともに、各ブースの面積を広げることで、来場者にインパクトのある形で訴求できるデモンストレーションを展開しやすくする狙いだ。会場を広げることで、より滞在しやすく回遊性の高い会場運営が求められる。一案として、ポイント制でドリンクを提供するサービスなどを検討している。

――物流機器開発展との相乗効果にも期待が集まる。

岩本 物流業界では、ドローン物流や隊列走行、ラストワンマイル自動配送などの新技術の開発も話題を集めるテーマだが、なかなか出展者が集まりにくい。近畿運輸局や近畿経済産業局をはじめとする行政や、関係する各団体などと連携をさらに深めることで、こうした技術を訴求する機会にもしていきたい。

試練のなかで開催にこぎ着けた「関西物流展」、物流を盛り上げる契機に

3回目となることしの関西物流展が幕を閉じた。当初予定から2か月の延期による、コロナ禍における徹底した感染症対策下での開催も、終わってみれば前回を大きく上回る盛況だった。もっとも、来場者数だけが見本市の成否の判断指標ではない。むしろ、物流業界の見本市の「あるべき姿」を考える好機ととらえるべきだろう。


▲スター精機の段ボール箱積み付けロボットの実演風景

6月22日から3日間の会期中に会場に彩りを添えたのは、実機が動き回るデモンストレーションと、それを熱く解説する担当者の姿だった。先端技術の粋を集めた先進機器やシステムが手際良くピッキング作業を進めていくさまは、まさに近未来の物流現場をイメージさせるに十分なインパクトがある。実用化へのハードルやコストの話はともかく、企業が夢を提示するのは見本市の醍醐味でもあるだろう。

とはいえ、こうした洗練されたブースにいささかの「寂しさ」を抱いてしまうのは私だけだろうか。物流現場の問題を解決する画期的な技術は、確かに物流業界の未来を約束するのかもしれない。しかし、その手前にもうワンステップ、必要な段階があるのではないか。

そんな思いを抱いてブースをめぐっていると、いかにも場違いな風景に足が止まった。「物流系漫才」だ。「自社の事業だけでなく、『物流』を盛り上げたい」。ブース担当者の言葉で合点がいった。寂しさの根源、それは物流への愛着を掻き立てる発想が霞んでしまっていることだったとわかった。

物流見本市の役割。それは、社会に不可欠なインフラである物流への「親しみ」を生み出す機会を提示することだ。その意味で、今回の関西物流展は、コロナ禍をはじめとする様々な制約を乗り越えて開催にこぎ着けた関係者の努力の裏付けられた新たな使命を再認識する、またとない機会となった。(編集部・清水直樹)