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日野が信頼回復策前倒し発表、トヨタなどの批判で

2022年8月30日 (火)

荷主日野自動車の国内向けトラック・バス用エンジンの認証不正問題で、同社は30日、「信頼回復プロジェクト」を発足させたと発表した。「日野はもはや存在意義がない」といった社会からの評価に強い危機感を抱き、これまで11月ごろにまとめるとしていた再発防止策の策定を前倒しした。具体的な最初の取り組みとして「パワハラゼロ活動」も立ち上げた。同社は「全社で死に物狂いとなって」信頼回復に努めるとしている。

▲8月22日の会見で小型エンジンの不正について報告する日野自動車の小木曽聡社長

日野は8月2日に行った不正問題の特別調査委員会の調査結果報告と小木曽聡社長の記者会見の際、品質マネジメント体制構築や企業体質改善などの再発防止策と新たな執行体制を「3か月をめどに」取りまとめるとしていた。ところが、それから1か月を待たずに国土交通省の検査で不正が小型エンジンにも広がり、さらに親会社のトヨタ自動車の意向によって商用車技術の共同開発事業から除名されるに至り、「企業としての危機感が強まった」(渉外広報部)ことから、改善策の発表と実施を予定より大幅に早めたという。「すべきことを時々刻々と判断し行動していく所存」と決意表明もしている。

発表によると、プロジェクトは4本柱から構成され、(1)利害関係者への影響最小化(2)不正防止の仕組みづくり(3)不正を生まない風土づくり(4)事業再構築――から成る。今回の発表は項目の列挙にとどまるが、今後、マネジメント層と中堅層による社長直轄チームが主導し、個々の取り組みを具体化・実行していくという。

「影響最小化」については、運送会社などの顧客に対し、真摯かつ丁寧なお詫びと説明を行い、補償と事業継続支援を行うとしている。具体的な補償や支援については「個別の契約に沿って行う」(渉外広報部)といい、トラック輸送など顧客の稼働維持に取り組むという。

「仕組みづくり」では、不正を生んだ開発・法規認証・品質マネジメントの各プロセスを再構築するとした。「風土づくり」では、人事制度改革や経営情報の開示、組織体制の見直しなどに取り組む。不正を理解し風化させない仕組みづくりもし、一部の人間が握っていた権限を移譲するという。「事業再構築」では「守るべきこと、やめるべきことを決め実行」と、やや抽象的な文言にとどめた。

同時発表した「パワハラゼロ活動」については、パワーハラスメント行為の全社実態調査を行うほか、パワハラを行った者への処分の厳罰化と従業員への周知徹底を行うとした。また、小型トラック用エンジンについては、ノウハウを持つトヨタに認証業務で協力を依頼する方針も明らかにした。

日野が「信頼回復プロジェクト」を前倒しで発表した理由について、渉外広報部はLOGISTICS TODAYの取材に対し、「ステークホルダー(利害関係者)の反応を受けて危機感を強くした」と、繰り返し強調した。国交省検査で不正が小型トラックに及んだ頃から、トヨタが豊田章男社長の日野に対する厳しい批判のコメントを相次いで発表するようになり、「それも重要な要因」(渉外広報部)となって今回の対応に至ったという。

日野の小型用でも不正、国内向け大半出荷停止