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SCなど社会インフラ特化型SaaSを提供、グリッド

2023年3月13日 (月)

サービス・商品グリッド(東京都港区)は13日、サプライチェーンなど社会インフラ特化型のSaaS(必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるソフトウエア)「ReNom Apps For industry(リノーム・アップス・フォー・インダストリー)SaaS」について、3月中に本格的な提供を開始すると発表した。

海運とサプライチェーン、電力の3分野におけるオペレーション最適化を実現するReNom Apps for Industry SaaSは、事業展開におけるさまざまな計画業務の自動化や最適化システムの導入を支援することにより、現場業務だけでなく経営全体の最適化による企業価値向上を促す。

▲ReNom Apps for Industry SaaSの全体像。当面は海運とサプライチェーン、電力の3分野で展開する(クリックで拡大、出所:グリッド)

曽我部完社長は13日のオンライン記者会見で、今後3年間でReNom Apps for Industry SaaSの100社への提供を目指す計画を発表。「インフラの稼働計画を、いつでもどこでも立案することが可能となり、さらなる業務効率化が期待できる。今後は対象分野の拡大や機能のアップデートを推進することで社会インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速していく」と話している。

▲グリッドの曽我部完社長

社会インフラ企業が策定する計画業務は、日々刻々と変化する社会動向や経営環境に対応して、熟練の担当者が無数の組み合わせの中から膨大な時間と労力をかけながら立案する業務だ。こうした業務の性格上、属人化からの脱却や効率化の実現が求められている。

グリッドはこうした問題の解決策として、AI(人工知能)やデジタルツインの活用に着目。計画業務の自動化・最適化システムの開発・導入によるDXを推進してきた。人手では困難な、極限まで無駄を省いた業務運用を可能とすることで、エネルギー消費量や二酸化炭素排出量の削減にも貢献できるシステムの開発の取り組んできた。

ReNom Apps for Industry SaaSは、複数のシナリオから最善の選択を可能とする「シナリオプランニング・デジタルツインシミューレータ機能」を搭載。AIが複雑な計画を自動化・最適化する仕様とすることで、わずか数回のクリックで複雑な計画の策定を自動化する機能が特徴だ。「人間が作成するよりも最適化された計画を作り出せることで、従来よりも大幅なコスト削減が可能」(曽我部社長)だ。

▲ReNom Apps for Industry SaaSのポートフォリオ分析画面。さまざまな指標に基づいて最適なシナリオを導いていく

海運領域については、石油などの化学製品から日用品まで幅広い商材を対象に、国内での貨物輸送の配船計画をAIで最適化。船舶の運航効率や製品の積み付けバランス、航海時間や荷役時間を含めた船舶の稼働時間など、さまざまな制約条件を考慮した最適な計画を立案できる。

サプライチェーン領域では、企業価値を最大化させる前提シナリオをAIで複数、導き出すことができる。「それぞれのシナリオについて、財務KPI(重要業績評価指標)の結果を瞬時に確認してさまざまな指標に基づき分析することにより、直感的に絞り込みながら最良の案を選べる」(曽我部社長)という。

グリッド「ReNom Apps」、社会インフラの持続的な最適運営に不可欠なツールに

「未来の予測は100%的中させることは困難だ。社会が複雑化するなかで、最適な計画をスピーディーに策定できるこのSaaSの意義は大きい」。曽我部社長は、ReNom Apps for Industry SaaSの提供が社会にもたらすメリットについて、こう強調した。

新型コロナウイルス禍を契機とした働き方の多様化がさらに加速するであろう将来を見据えて、場所を問わず最適な事業計画の迅速な策定を可能とするグリッドのこのSaaSは、「新しい生活様式」の時代も意識した経営戦略のDXの概念を提示する存在になりそうだ。

ReNom Apps for Industry SaaSの強みは、複数のパターンに基づき複数の計画を迅速に作成できる点だ。事業を推進する上で、さまざまなリスクや考慮すべきポイントが存在する。こうした観点から「最適解」をスピーディーに導くことで企業価値向上を図り、持続的な成長を支援する。

グリッドがまず想定するReNom Apps for Industry SaaSの提供対象は、海運とサプライチェーン、電力の社会インフラ3分野だ。物流や電力といった、社会に不可欠なインフラを担う大手を中心とした事業者が主なターゲットになるが、今後は「陸上輸送やエネルギーなどの領域にも訴求していく」(曽我部社長)との方針を掲げる。

▲パソコンを活用して場所や時間を選ばずに操作できる機動力の高さも特徴だ

グリッドは、ReNom Apps for Industry SaaSを先行導入する事業者における具体的な効果について検証中だ。今回の提供開始を契機として、今後はさらなるサービス強化を進めていく決意を明確化した形だ。

物流領域については、「日次」「長期経営計画」の間に位置する「中期計画」の策定を支援する取り組みを想定しているという。倉庫をはじめとする物流拠点や車両、人員といった経営資源の最適化を図るものだ。

物流業界では、人手不足やデジタル化の遅れなど、さまざまな構造的課題を抱える。グリッドはこうした事情も踏まえながら、海運大手の半数以上の事業者への導入を目指す考えで、AI以外のエンジンも積極的に活用しながらより「最適化」の精度を高めていくという。

事業者における計画立案は、経営を司る最も重要な指標である。裏を返せば、その策定には相当の時間と資源を投入する。とはいえ、経営環境がここまで複雑さを増してくると、もはや経験に頼った人間だけの力では解決できない事態に直面する。

グリッドが本格展開を始めるこのSaaSは、こうした混迷の時代に生き残りを図るうえで欠かせない観点を提供してくれるだろう。それがReNom Apps for Industry SaaSのの最大の存在意義であると考える。(編集部・清水直樹)

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