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複数拠点データ一元管理に強み、日立「HITLUSTER」

2023年6月8日 (木)

話題日立製作所は、「HITLUSTER」(ヒットラスター)で1999年にWMS(倉庫管理システム)市場に参入した。初代の製品「HITLUSTER-TC(通過機能)」「HITLUSTER-DC(在庫機能)」は、クライアントサーバー型で提供。その後は、主要ユーザーの荷主企業の要望をくみ取りながら、生鮮加工機能を搭載する「HITLUSTER-PC」の追加や複数拠点・荷主やトレーサビリティー対応、作業生産性管理の機能を盛り込んだバージョンアップ版をリリースするなど、製品に磨きをかけてきた。そして、2014年、1つの完成形ともいえるクラウド・仮想化に対応し、統合物流管理システムに進化したHITLUSTERを発売。機能拡充版などを加えながらユーザーに最適なシステムの充実を図り続けている。進化するHITLUSTERのすごみに迫る。

▲HITLUSTERのWMS機能

LMSとWMSで複数施設の生産性を一元管理

HITLUSTERは、倉庫業務、配送業務、物流管理などをトータルでサポートする統合物流管理システム。倉庫形態は、在庫型、通過型のそれぞれに対応。温度帯は常温、低温(チルド、フローズン)の商品を扱うことができる。流通に携わる企業が統一的に利用できるEDI(電子データ交換)の取り決めである「流通BMS」(流通ビジネスメッセージ標準)の業務プロセスに対応する。システムは小規模から大規模のセンターまで導入可能な高いスケーラビリティーも併せ持っている。

HITLUSTERが主なターゲットとするのは、複数の倉庫を展開している小売業。現在は、ドラッグストアや総合スーパー(GMS)、食品スーパー(SM)といった荷主企業が利用している。

HITLUSTERの最大の特長は、WMSが導入されている複数拠点のデータを一元管理し、拠点間の在庫コントロール、荷物トレースができるLMS(統合物流管理システム)が1つのパッケージになっていることだ。

▲複数拠点のデータを一元管理することが可能となる

一般にWMSは、1つの物流施設の管理に焦点を当てたシステムになる。そのため、1つの倉庫の「在庫」「入出庫」「商品」といった管理やデータ分析について深堀りをするのには向いている。1つの拠点だけを管理するのであれば、これだけで済むだろう。

しかし、HITLUSTERが顧客対象とする複数の施設を持つ企業にとっては、WMSだけでは十分とはいえない。なぜなら、施設全体の管理やデータを分析するには、拠点ごとのWMSを結び付け一元管理するために別のシステムを導入したり、開発したりしなければならないからだ。その場合には手間やコストがかかってしまう。

一方、LMSとWMSがセットになっている全拠点統合型システムのHITLUSTERであれば、こうした悩みも解消される。

▲複数拠点の様々な情報を管理するだけではなく、データ分析も行うことができる

HITLUSTERのLMSは、複数拠点の統合管理と、物流センターごとの在庫情報を一元管理し、在庫の補充や移動といった在庫の最適化が行える。「統合在庫管理」「統合商品管理」「統合マテハン資材管理」「統計/分析」の機能を搭載。施設単体の「縦」の管理やデータ分析はもちろんのこと、複数倉庫をまとめて扱う「横」の管理とデータ分析もできる。管理も1つのアプリケーションで行えるため操作も容易だ。

▲インダストリアルデジタルビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 ロジスティクス・リテールソリューション推進本部 チーフテクニカルエキスパートの佐藤秀樹氏

「LMSとWMSが1つのパッケージになっていることで、複数拠点の管理がスムーズに行えます。システムを別々に管理する必要もありません。その結果、例えば、生産性の高い物流センター、低い物流センターのデータを横並びで比較し、その差を埋める対策をとるといったアクションをすぐにとることができます。また、データも利用する企業様がほしいと思うものにアクセスしやすく、取り出しやすい仕様にしています。こうした利用者目線を重視し、使い勝手の良さを追求したシステムに仕上げていることがHITLUSTERの強みです」

日立製作所インダストリアルデジタルビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 ロジスティクス・リテールソリューション推進本部 チーフテクニカルエキスパートの佐藤秀樹氏は、HITLUSTERの特長について、こう語る。

日立では2010年にLMSの発想が生まれ、開発に着手。当時の物流業界では、IT分野で物流の管理システムといえばWMSしかなかったという。日立はその頃から単体だけではなく、複数の拠点を効率的に運用できる一歩先をいく物流管理システムの開発に、他社に先駆けて取り組んできた。その背景には「ユーザーである荷主企業様のニーズや要望を聞き、常に応えていく」(佐藤氏)同社の姿勢があるという。

WMSはマテハン機器のマルチベンダーに対応

HITLUSTERは、もう1つのシステムであるWMSの機能も充実している。「入荷管理」「在庫管理」「出荷管理」「作業管理」といった倉庫業務に求められる基本的な機能を標準で搭載。パラメーターで作業単位の設定が行えるため、さまざまな運用パターンに対応ができる。倉庫形態では通過型が「入荷」「仕分け・出荷」、在庫型では「入荷」「保管(在庫)」「出庫」「出荷」の管理機能を持つ。

これだけではない。HITLUSTERのWMSは、倉庫内で活用されるマテハン機器で、さまざまなメーカーと連携が可能なマルチベンダー対応なのも大きな強みだ。そのため、ユーザー企業に最適な設備とITを組み合わせて提供することができる。

アプリケーションに加え、ハードでもユーザーの立場を重視した柔軟なシステムを構築する日立。「トータルエンジニアリング」と呼ぶ、こうした物流ソリューションの総合力を高める取り組みは、長年にわたって製造業で培ってきたモノづくりのノウハウがある同社だからこそできる技といえるだろう。

荷主企業のビジネススピード向上に貢献

HITLUSTERを導入した企業は、どんなメリットを受けることができるのか。まず、クラウド型のシステムであることから、オンプレミス型のように拠点ごとのサーバーの設置が不要で、導入コストが削減できることが挙げられる。しかし、インダストリアルデジタルビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 ロジスティクス・リテールソリューション推進本部 ロジスティクスイノベーション部 技師の平崎康弘氏は、それ以上の効果を次のように説明する。

▲インダストリアルデジタルビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 ロジスティクス・リテールソリューション推進本部 ロジスティクスイノベーション部 技師の平崎康弘氏

「導入していただいている荷主企業様からはビジネスのスピードが上がったと言われます。これはHITLUSTERが複数倉庫のデータを一元管理できるため、WMSだけで倉庫を管理するよりもデータの管理と分析速度が速くなるからです。また、基幹システムなどと連携がしやすいため、データをいち早くビジネスに生かすことができるからだと思っています」

データの活用による効果はビジネスのスピード向上だけにとどまらない。HITLUSTERによって物流情報が「見える化」され、アクセスもたやすくなることは業務改善や効率的な物流施設の運営にも役立つ。その結果、「経営のスピードアップも見込める」(平崎氏)という。

今後はSC上の「物流」と「商流」を結び付ける機能を強化

日立では、物流施設管理だけではなく、サプライチェーン(SC)全体の最適化も見据えている。今後はSC上でメーカー・卸と小売業がより連携できるよう、HITLUSTERの機能を強化していく考えだ。

「今はメーカー・卸と小売業で、SC上の『物流』と『商流』のかい離があると見ています。特に発注~センタ納品までの調達領域においてSC上では別の仕組みとなっており、業務効率化の妨げになっている。そのため、HITLUSTERで、メーカー・卸と小売業が同じポイントで情報を共有できるような機能を提供していくことで、この課題を解決していきたいと考えています」と、佐藤氏は意気込みを語る。

荷主企業の声に耳を傾けながら製品の機能改良と拡充を行い、物流管理システムのノウハウを蓄積してきた日立。同社は、今後もユーザーと市場の要望に応え、真に価値があるソリューションの提供をめざしている。それに伴い、HITLUSTERの進化はこれからも続く。

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