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導入トップは「ロジザードZERO」

クラウド型WMS導入ランキング

2023年5月22日 (月)

話題倉庫内の在庫管理や物流管理を支援するためのシステム「WMS(倉庫管理システム)」。コスト削減や在庫管理の強化を実現できるソリューションとして、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化の観点からも注目が高まっている。

WMSは利用形態として主にクラウドを使うため、オンプレミスのように機器の設置が不要でユーザー企業にとっては導入の障壁が低い。また、導入後は、すぐにサービスを利用できることに加え、運用コストの削減や拡張性、セキュリティを確保できるなどのメリットがある。そのため、物流現場などで利用が広がっている。LOGISTICS TODAY編集部が、2021年に物流企業や荷主企業を中心に行った実態調査では、65.8%の企業が過去に利用した実績があると回答している。

一方で、ユーザーはWMSをどう評価しているのだろか。そこで、編集部では、WMSを導入する物流企業などに対し、3月30日から4月28日にかけて、クラウド型WMSの導入に関する実態調査を実施。今回、その結果をランキングでまとめた。


導入ランキングトップはロジザードの「ロジザードZERO(ゼロ)」

今回の調査で「使ったことがあるクラウド型WMS」と導入したシステムを尋ねたところ、ロジザードの「ロジザードZERO(ゼロ)」が、56.1%でトップとなった。2位はシーネットの「ci.Himalayas(シーアイ・ヒマラヤ)」で、13.3%を獲得。ランキングでは上位2社で70%近くの割合を占めた。3位は、コマースロボティクスの「Air Logi(エアロジ)」で、3.1%だった。

「ロジザードZERO」は、BtoC(EC、電子商取引)が得意なBtoB機能も持つWMS。アパレルを始め化粧品など、様々な商品に対応し、RFIDなどのオプション機能、物流ロボットとの連携機能などを搭載する。また、顧客サポートの充実にも定評がある。

「ci.Himalayas」は、入庫、出庫、在庫、棚卸、請求などの倉庫管理に必用な機能について標準で210以上を搭載。ユーザーごとで異なる仕様の要望に対して柔軟に対応するカスタマイズ性も備える。

「AiR Logi」は、EC、ネット通販の物流に特化したWMS。通販物流に必要な自動化機能を搭載しており、カスタマイズを行うことで機能の拡張が可能。システムは小規模から大規模施設まで対応する。

そのほかの顔ぶれは「ONEsLOGI(ワンスロジ)」(日立物流ソフトウェア)、「COOOLa(クーラ)」(ブライセン)、「W3 mimosa(ミモザ)」(ダイアログ)、「クラウドトーマス」(関通)がそれぞれ2.6%、「ロジクラ」(ロジクラ)、「倉庫革命」(ヤマトシステム開発)、「Xble(キシブル)」(シーオス)が2%で並んだ。

また、ベンダーが提供するシステムではなく、自社の仕様に合わせ独自に開発する「自社開発あるいは委託先にて開発」も3.1%を占めた。

「ロジザードZERO」はサポート、「ci.Himalayas」はコスパで高い満足度

WMSについて、ユーザーは何を評価しているのか。上位2社の製品について「使い勝手の良さ」「サポートの手厚さ」「コストパフォーマンス」「拡張性の高さ」の項目で満足度を聞いた。

1位の「ロジザードZERO」は、「サポートの手厚さ」に対する満足度の「大変良い」が65.5%でトップとなった。特長の1つである顧客対応の充実ぶりが支持されているようだ。今回の調査でもユーザーからサポートを評価する声が多かった。

「たいがいのことは解決してくれる。電話サポートセンターの人たちもフレンドリーで、サポート品質とともに、満足できる。機能面もさることながら、アフターフォローがしっかりしているため、安心して運用できることに感謝している」(物流会社)。

「ロジザードはサポートがとても丁寧。ほかにもいくつかWMSを使っているが、サポートに関しては段違いによい」(物流会社)。

「困ったときにサポートセンターも、営業・システムの担当者もすぐに回答をいただけるので、滞りなく出荷作業が行えており、サポート面は抜群だと思っている」(総合物流会社)。

ロジザードでは「お客様から『出荷ができない』と電話があれば、当社は開発の手を止めてでも、解決に向けて調査を優先する。お客様が困ったときに電話がつながらないことがないように、おそらく今まで一日も途切れずに対応してきた」(亀田尚克・取締役営業部長)と強調する。

そのほかで「大変良い」となった評価は、「使い勝手の良さ」(47.3%)、「コストパフォーマンス」(43.6%)の順だった。

2位の「ci.Himalayas」は、「コストパフォーマンス」の「大変良い」が61.5%と機能と価格とのバランスのよさが評価された。また、ユーザーからは「提案をいろいろとしてくれ助かる」(運輸会社)との声があった。

「お客様の現場の声を反映した最適なシステムを、必ず稼働させるとの使命感こそが最大の強み」(鈴木喬・執行役員営業本部長)と、シーネットでは説明する。そのほかの「大変良い」の評価では「サポートの手厚さ」「拡張性の高さ」が46.2%で続いた。

調査ではユーザーからWMSに対する要望もあった。例えば、「Air Logi」では「単体での使用は、ほぼないが、OMS(注文管理システム)のコマースロボを一緒に使用すると汎用性が高くなる」(総合物流会社)、「COOOLa」については、「カスタマイズに柔軟に対応できたら助かる」(物流サービス会社)と、機能連携や拡張性に対する声が寄せられた。

ベンダー共通の強みは「拡張性」と「顧客満足度の高さ」

一方、ベンダーではユーザーや顧客に対して、どんな特長を打ち出し、アピールしているのだろうか。

今回、編集部ではWMSベンダーに対して、自社製品の強みと実績についてのアンケート調査も実施。12社(ロジザード、シーネット、コマースロボティクス、アトムエンジニアリング、ダイアログ、ロジレス、シーオス、コネクテッド、日立製作所、関通、ブライセン、ロジスティードソリューションズ)から回答を得た。

アンケートでは、自社のWMSについて「アパレルに強い」「食品に強い」「ECに強い」「大企業に強い」「中小企業に強い」など20項目で自社が強みと思うものを複数回答してもらう一方、「導入クライアント件数」「導入拠点数」「導入現場数」などの実績について尋ねた。

アンケート結果を見ると、回答したベンダー各社が最も強みとする項目は「拡張性」と「顧客満足度の高さ」が92.3%とトップとなった。

一般に業務用システムは、導入後にそのまま運用が続けられることは少なく、利用企業のビジネス環境や経営戦略で機能の追加や拡充が求められる。そのためには、システムは柔軟に対応できることが不可欠だ。そのため「拡張性」を強みとするのは、当然ともいえる。

「顧客満足度」については、一例としてサポート体制が挙げられる。WMSを運用するのは、情報システム担当者(情シス)のようなITに詳しい人材ではなく、現場担当者の場合もあることから、トラブルやシステムの不具合対応が充実していることが満足度の高さにつながる。こうした点を重視するベンダーが多いということだろう。

次いで「中小企業に強い」(84.6%)と対象とする企業規模や、「食品」「EC」(76.9%)といった特定の業界やビジネス分野に対する強みを掲げていることがわかった。

ベンダー個別では、ロジザードが「アパレル」「製造業」「小売業」「EC」「大企業」「中小企業」など14項目を強みとしたほか、物流ロボットや自動梱包機などのマテハンとの連携、OMS(オーダーマネジメントシステム)、ERP(統合基幹業務システム)など周辺システムとの連携強化を訴えている。

シーネットも「食品」「製造業」「小売業」「コストパフォーマンス」など14項目、ブライセンも同じく、「印刷」「ヘルスケア」「製造業」「雑貨」「EC」「中小企業」など14項目を強みとして挙げた。コネクテッドは「卸」「製造業」「カスタマイズ」など7項目が強みという。

日立製作所では「ヘルスケア」「小売業」「食品」「拡張性」など7項目を強みにするほか、LMS(統合物流管理システム)の単独導入が可能なことも打ち出している。関通は「アパレル」「食品」「EC」「製造業」「小売業」「大企業」「中小企業」などの13項目を回答。また、業種業態を問わず様々な企業が利用できることをアピールしている。

導入クライアントはコマースロボ、導入アカウントは関通が最多

導入実績はどうだろうか。回答を得たベンダーで見ると、導入クライアント数は、コマースロボティクスがトップ。次いでロジスティードソリューションズ、ブライセンだった。導入拠点数ではシーネット、コマースロボティクス、関通の順となった。導入現場数はブライセン、導入アカウント数は関通が最も多かった。

(クリックで拡大)

ロジザードの「ロジザードZERO」の導入アカウント数は、1522(2022年12月時点の稼働数)、出荷件数は、年間で4589万9678件。シーネットの「ci.Himalayas」の導入クライアントは、累計で250企業以上。導入拠点数は1200拠点(累計)以上で、導入アカウント数は約200、出荷件数は月間で2000万以上となっている。

コネクテッドの「Connected Linc(コネクテッドリンク)」の導入クライアントは70社、導入拠点数が70拠点。導入アカウント数は700、出荷件数は600程度。日立製作所の「HITLUSTER(ヒットラスター)」は、導入拠点数が100拠点だ。

関通の「クラウドトーマス」と「クラウドトーマスPro」は、導入クライアントが160社、導入拠点数は200拠点以上、導入アカウント数は1805、出荷件数は1200万(自社のみの実績)。ブライセンの「COOOLa」は、導入クライアントは500(荷主単位)、導入拠点数は70拠点、導入現場数は500、出荷件数は約300万(月間)という。

必要なものを見極めることが満足度が高いシステム構築につながる

WMSは「在庫管理」「入出庫管理」「商品管理」などの基本的な機能は同じで、システムとして大きな違いはないといえる。機能が横並びとなる中、ベンダーは「アパレル」や「EC」など特定の業界に特化したシステムの提供や顧客対応の厚さなどで違いを打ち出しており、市場は成熟した感がある。

こうした中、ユーザーである物流会社や荷主企業に必要となるのは、システムに何を求めるかということだ。それは、機能、拡張性、サポート、コストなど、現状で自分たちが本当に必要なものや、将来のビジネスを見据え不可欠となるものを取捨選択し、システムに対する要件を明確にすることを意味する。このことに取り組んで初めて自分たちにとって使い勝手のよいWMSを構築することができる。それが、ひいてはシステムの満足度の高さにつながるといえるだろう。


抽出した潜在的な問題に応じたWMSの提案(コネクテッド)

選ばれるシステムの真髄は「出荷絶対」(ロジザード)

物流ロボとの連携視野に新たな地平開拓(ブライセン)

「営業と開発の強力タッグ」に使いやすさの源泉(シーネット)

システムベンダーと一味違う「クラウドトーマス」シリーズの機能とは(関通)

複数拠点データ一元管理に強み、「HITLUSTER」(日立製作所)