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置き配、それは現場の知恵の結集/ドライバー日誌第23回

2023年8月2日 (水)

話題商品を届ける顧客の住居を特定する作業は、とりわけ新人ドライバーにとっては非常に神経を使うものだ。軽バンの荷台に商品を満載してセンターを出発する際、「今日は空っぽで戻ってこられるだろうか」と考えてしまう。

▲荷物を配り終えてセンターに戻る瞬間。宅配ドライバーにとって至福の時だ

配送業務でもっとも快感を得られる瞬間、それは積んでいる荷物をすべて配達し終えた時だ。訪問先が不在で荷物を持ち帰るとなると、「もっと遅い時間に訪問すればよかったかな」と反省する。その商品の到着を待っているのはほかでもない、注文した顧客自身だからだ。

こうしたドライバーのモヤモヤ感も、近年はかなり減ってきたようだ。その最大の要因、それは「置き配」サービスの定着だ。

置き配という概念がなかったころは、訪問先が不在であれば原則として、商品を持ち帰るしかなかった。週末の早朝や夜間ならまだしも、ワンルームマンションに平日の昼間に呼び鈴を鳴らしても、まず反応は期待できない。大きな箱詰めの飲料水の商品ならば、ポストはもちろん、近年急速に普及してきた宅配ボックスにもなかなか格納できない。

ところが、契約時や初回の配送時に顧客から置き配の承諾を得ていれば、次回から不在であっても商品を届けることが可能になる。もちろん、置き配をしないよう求める顧客に対しては、対面のみの配達とするのは言うまでもない。

(イメージ)

不在時の置き配については、顧客と配送員との間でいくつかの約束事を交わす必要がある。まずは商品を置く場所だ。「玄関先」など漠然とした決め方では配送員によって置く場所が変わる可能性があり、顧客を混乱させてしまう。「玄関扉の左側」「車庫の右側の壁際」などと具体的に定めておくことで、「配送員が変わっても同じ場所に商品が置いてある」状況を作ることができるからだ。

ドライバーは必ずしも、同じエリアだけを担当するわけではない。ベテランから新人まで、経験もスキルも異なるドライバーが均質なサービスを実現するにはどうすればよいか。運送会社だけでなく社会のあらゆる場面で課題になっているテーマだろう。それを解決に導く方策として、こうした詳細な取り決めが欠かせないのだ。まさに現場の知恵である。(つづく)

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