調査・データCBRE(東京都千代田区)は25日、「地方物流不動産マーケットのポテンシャル」と題したレポートを公開した。昨今、物流網や物流拠点の整備が相対的に遅れていた地方都市圏での物流施設需要がクローズアップされており、先進的な物流施設が不足している地方都市圏では賃料の上昇傾向が鮮明になっていると分析、主要な地方都市圏の物流マーケットの現状と今後の見通しをまとめたものとなっている。
同レポートでは、こうした地方都市圏の施設需要が注目される要因の1つとして、大都市圏以外の北海道、静岡県、広島県、宮城県などの人口と県内総生産で見た高いポテンシャルが前提にあるとする。
さらに、半導体産業の国内生産の増強により、地方都市における半導体工場の進出が、工業製品の保管や流通需要を創出し、工場そのものが稼働する前から物流施設の需要を押し上げることが確認されていると解説。人口集積地ではなく、半導体産業の活性化が地方都市の物流施設需要を後押ししているとして、熊本に進出したTSMC(台湾)の子会社JASMや、北海道千歳市のRapidus(ラピダス、東京都千代田区)、宮城県大衡村のJSMCなど半導体工場の大型投資計画事例を紹介している。
また、2024年問題への対応として拠点の分散化、地方拠点の在庫能力の強化が地方都市の施設需要を喚起し、北海道や九州はもちろんのこと、大都市圏からの中間に位置する東北地方や中国地方も物流拠点としての重要度が増し、東北地方では仙台市、中国地方では広島市や岡山市の周辺が物流拠点のターゲットになるとしており、国内地域間の自動車貨物輸送量を示して、地方都市の有用性を裏付けている。
さらにレポートでは、荷待ち・荷役時間削減などにも対応する、トラックバースなどを多く備えた機械化投資に適した現代的なスペックが整った倉庫が必要になるとしており、地方都市圏の先進的物流施設のストックは、その経済規模に照らしてまだまだ少ない現状を示しながらも、物流施設の開発余地は大きいと指摘する。
同レポートではこうした要因から注目される地方都市の中でも、特筆すべきエリアとして「札幌圏」「仙台圏」「岡山圏」「広島圏」をピックアップし、それぞれの需給バランスや空室率についてもレポート。
▲地域ごとの需給バランス。(左から)札幌圏、仙台圏(クリックで拡大)
それによると、札幌圏では18年の大型施設完成をスタートとしてマルチテナント型マーケットも本格化し、ラピダス工場の進出決定により製造業系の需要が浮上し、もともと低水準だった賃料が、23年は対前年比4.1%上昇するなど、顕著な値上がりをしている。
22年から大型施設供給が続いた仙台圏でも、半導体関連産業の保管在庫増のニーズが表面化し、今後も製造業系の物流需要が期待できると分析。賃料は、23年は1.7%の上昇だったが、過去4年の年平均はプラス3.3%であることから、今後の上昇の可能性もありとする。
▲地域ごとの需給バランス。(左から)岡山圏、広島圏(クリックで拡大)
岡山圏は、今後の開発計画があるものの、複数の強いテナント候補があるとみられることから、もともと低い空室率もあり今後も物件の選択肢が少ないタイトなマーケット。空室の枯渇に伴って、賃料は上昇基調とする。
広島圏は、20年からの施設供給も23年度末には空室率0%に。今後25年までの開発計画がないことから、賃料も23年にはプラス3.9%に上向いているとしている。
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