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機械関連産業で在庫増、中部地方の倉庫需要を促進

2024年4月2日 (火)

調査・データ三菱UFJ信託銀行不動産コンサルティング部はこのほど、「企業在庫から読み解く物流施設需要」をテーマにした不動産マーケットリサーチレポートを発行した。

レポートよると、企業が事業活動のために一時的に保管する製品や原材料などの企業在庫は、材料在庫を中心に継続的に増加しており、機械関連産業で特にその傾向が強く、併せて関連品目の倉庫保管残高も増加傾向を示している。また、改善基準告示の改正法施行による中継拠点ニーズの高まりを受け、機械関連産業を中心とした原材料在庫の増加は、中部地方での倉庫需要の追い風になると分析している。

▲(左から)製造業・卸売業での企業在庫の推移、製造業内での在庫内訳の推移(クリックで拡大、出所:三菱UFJ信託銀行)

まず、近年の企業在庫が増加していることに着目し、その背景要因として2つの要因を挙げた。

一つは、需要側の発注量減少などにより、結果として在庫量が増加したこと。特に、機械製造業は新型コロナウイルス禍、ロシアのウクライナ侵攻などに起因するサプライチェーンの混乱といった環境変化を受け、受注残高が乱高下した。こうした動きが生産計画の変更、部品メーカーに対する発注動向への影響につながり、産業の裾野全体で在庫を増加させる要因となった。

もう一つは、企業の在庫調達リスクに対する認識が高まったこと。サプライチェーンの混乱を受け、各企業で適正在庫水準を見直す動きが出てきており、特に自動車関連産業では、レアアースなど産出国に偏りのある原料を使用することも多く、物流の混乱や地政学上のリスクへの対応のため、政策的に在庫を積み増す動きが見られている。

レポートでは、企業在庫と倉庫需要とで一定の相関関係が見られ、企業在庫の動向が近年の倉庫需要に影響を及ぼしうる、注視すべき要因の一つであるといえるとした上で、倉庫需要に対する企業在庫動向の影響力の程度は、地域により大きく異なるとも分析している。

直近5年間での保管残高の増減を地域別にみると、首都圏では過半数が「日用品」「食料加工品」「雑品」。雑品の中に「宅配便貨物」や「特種積み合わせ便貨物」などを含んでいることから、首都圏でのこれらの品目の増加は、日用品や食料工業品などの域内宅配輸送、全国への長距離輸送の増加が背景にあるものと考えられる。特に首都圏でBtoC需要と深い関連性を持つ品目の残高が増加したことは、EC(電子商取引)物流拠点の首都圏に集中している傾向と整合的な結果といえる。


▲(左から)機械製造規模上位3県の機械品目の保管残高推移、地域別/品目別営業用倉庫の保管残高変化(クリックで拡大)

一方で、中部圏においては、機械関連産業と深いかかわりを持つ「機械」や「金属」といった、製造業の関連在庫の増加量が際立つ。品目別の保管残高割合を見ても、多くの地域で機械、金属の割合は低下したものの、中部圏のみ当該割合は増加している。さらに、長距離輸送力不足の観点から、幹線輸送をつなぐ中継拠点の需要拡大が見込まれている。以上の理由から、機械関連産業を中心とした企業在庫の増加は、今後、中部地方における倉庫需要の追い風となるのではないかとしている。

▲2017-22年の地域別/品目別 営業用倉庫の保管残高内訳(クリックで拡大)

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LOGISTICS TODAY編集部
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