
▲ロボットソーター「t-sort」
話題物流ロボティクスサービスを展開するプラスオートメーション(+A、東京都港区)は、パッケージ型のRaaSサービスを展開し、ロボットソーター「t-sort」(tソート)をサブスクリプションサービスで提供するなど、ローコスト、ローリスクで導入・運用可能な環境を整備して数多くの現場効率化と省人化に貢献している。ただtソートによる作業効率化のみならず、独自開発のWES(倉庫運用管理システム)「+Hub」(+ハブ)と連動した運用管理で、ロボットとのスムーズな連携のほかにも、管理運用データをクラウド管理・可視化し、オペレーション改善へとつなげる。
一方、カメラ映像をクラウド化して共有できるクラウド録画サービスのリーディングカンパニーであるセーフィー(品川区)は、その映像情報のクラウド管理システムの活用を物流業界にも拡大し、監視カメラ、リモート管理など、情報通信技術を生かした業務効率化システムが多方面で活用されており、連携によって可視化できる領域を広げてきた。
両社とも、庫内作業の「可視化」を進めることで物流DX(デジタルトランスフォーメーション)促進への貢献を目指すが、データによる可視化、カメラ映像による可視化と、それぞれの扱う領域は違う。+Aとセーフィーの連携は、それぞれの専門領域の可視化から、庫内全体の可視化領域の連携を拡大することで、より全体最適化した物流現場を構築する試みである。
それぞれ得意の可視化現場をつないで全体最適目指す
仕分けの自動化で圧倒的な効率性の向上を実現するtソートと、その生産性向上の効果をデータで見える化する+ハブだが、ピッキングや搬送、シュート下のオペレーションについては仕分け実績データの管理の外にあり、効率化可能な余地があるのか検証できていない領域となる。tソートによる仕分け作業の前後部分、人手が介在する工程まで含めたより長い工程での作業状況を可視化するために、+ハブのデータだけではなく、セーフィーの映像データを活用して、庫内の全体での最適化を検証しようというのが、今回の2社の連携である。

▲セーフィーのクラウドカメラ
tソートによる仕分け工程の前後などデータだけでは可視化できなかった部分は、録画、画像解析によって、作業工程全体での生産性やボトルネックについて検証する。人手が必要な場所での課題は映像で検証し、よりスムーズな運用への改善点を洗い出すことが可能となる。工程時間帯ごとの各エリアの作業者人数や滞留時間(手待ち時間)などもデータ化して、複数工程を通じての清流化とさらなる生産性向上を目指すなど、さらに一歩先の最適化へと進むことができる。「データで見える工程」と「カメラ映像で見える工程」を連携してデータ管理、改善へとつなげることで、部分最適から全体最適へ向けた取り組みへと精度を上げ、さらにほかのWMS(倉庫管理システム)ソリューションなどへと連携領域を拡大することができれば、より実効性の高い庫内全体の最適化も実現に近づくことだろう。
物流課題解決へ、協調する仲間集めと、そのための実証が続く
プラスオートメーションは、「物流の根本課題を解決するための仲間集め」として、「物流DX会議」を先導している。バラバラな工程、分断された工程の効率化を個社だけで担うのではなく、「それぞれの領域のプレーヤーがつながる仕組みを作ること」こそが協調の意義であり、セーフィーとの取り組みでの試行錯誤や協議も、ただ理想論ではない「物流DX会議」の連携実現を具体化する取り組みだと言える。
それぞれの得意領域をつなぎ合わせ、個社では不可能な協働・共創を体現する今回の実証。8月23日に開催される「第2回物流DX会議」においては、両社から連携システム実装に向けた課題や今後の取り組み、ビジョンなどが紹介されることとなる。EC(電子商取引)商品の仕分けと配送サービスを提供するGBTechnology(ジービーテクノロジー、渋谷区)の物流現場は、tソートの運用により仕分けの効率化を実現した現場であるが、さらにセーフィーとの連携で庫内全体の見える化、一歩先の現場改善へ向けた検証が進められており、イベントではその現状についても公開予定である。個社システム導入だけの限界を乗り越えるアイデア、それぞれの専門領域をつなぐことで実現する全体最適など、ただ理想論に終わらない、より大きな連携実現に向けての取り組みが続いているのだ。