拠点・施設いよいよ今月、東京都心に近い江戸川区東葛西でアライプロバンス(東京都墨田区)の大規模マルチテナント型物流施設が完成する。早くも入居を決めた企業に話を聞くと、同施設の立地と仕様を最大限に生かす物流拠点戦略が見えてきた。
保税倉庫としての活用にメリット見出す
新たに完成するアライプロバンス葛西(東京都江戸川区)は、どのような活用に向いているのか。完成前に入居を決めた物流会社トップウェル(東京都千代田区)の中澤有啓社長に話を聞くと、同社は輸入貨物の保税倉庫として活用するという。「東京港・東京税関エリアのなかで、港からのアクセスも、関東一円に向けた配送にも都合の良い立地でありながら、比較的安価に借りられることが魅力」と話す。
「港に近すぎると賃料が高すぎ、離れると所要時間が跳ね上がって自由度が下がってしまう。自由度とコストのバランスでいうと、葛西は保税倉庫としてはちょうど良い印象」という。
40フィートコンテナ車に対応、都内で余裕ある荷役能力が魅力
アライプロバンス葛西は、1903年から金属加工業を営んでいたアライプロバンス(旧:新井鉄工所)が、第一号物件のマルチテナント型物流施設「アライプロバンス浦安」(千葉県浦安市)に次いで展開する2棟目の賃貸物流施設だ。借り主から見たポテンシャルを問うと、中澤氏はなんといっても立地の良さを挙げた。
「保税倉庫は立地のメリットを生かしやすい。いっそ保税倉庫に特化しても良いのではと思うくらい」と中澤氏。郊外内陸エリアの賃貸倉庫に比べると賃料は高くなるが、港からのアクセスが重要になる保税倉庫であれば、十分にメリットを感じられる賃料設定になっているという。
施設面では、40フィートコンテナ車に対応し、トップウェルが借りる2700平方メートル超の区画に同時に7台が接車できる取り回しの良さが魅力だ。トップウェルではほとんどの貨物が40フィートコンテナで到着するため、対応は必須条件だった。施設全体では、バース128台分、トラック待機場10台分を備える。その意味でも、輸出入貨物の受け入れに適した施設であると言える。
中国の事業風土に合わせたスピード感を提供できる倉庫に
トップウェルは、中国出身者が日本で設立した会社の原料・製品や、越境EC商品などの国際物流・日本国内物流を一気通貫で支える企業だ。通関、保税、保管、発送をワンストップで受け付けている。同社の事業拡大を支えているのは、中国系企業の求める物流像の実現に特化しているところだ。
「中国系企業は、スピード感を大切にする。今週できるでしょう?今月できるでしょう?というのが当たり前。ところが、日本の物流会社に問い合わせると、15日前までのオーダーで、半年かかるなどと言われてしまう」(中澤氏)。中国系企業の求めるスピード感に合致した物流サービスを提供するために、自由度の高い運営ができる場所を求めてきたという。
しかし現在、同社に対する旺盛な需要に対し倉庫のキャパシティが不足してきている。中国での展示会などでは「前を通る人は全部お客さん(になり得る)」と話す中澤氏だが、自社倉庫のキャパシティに限界が迫るなか、アライプロバンス葛西の建設は渡りに船だった。
決め手は同社2施設の距離の近さ
トップウェルは、アライプロバンスの第一号物件である「アライプロバンス浦安」も賃借している。両倉庫は、車で15分前後の近さだ。浦安は横浜税関、葛西は東京税関と管轄が分かれていて、両方の倉庫を押さえておけば、首都圏に来る輸入貨物全般の通関・保税に対応できる。
「最初にアライプロバンス浦安を借りたのも、葛西と同じく、高速道路へのアクセスが良く、賃借料が高すぎないところが魅力だったからだ。オーナーが同じアライプロバンスで安心感もある。葛西と浦安の距離が近いので人材のやりくりもしやすい上、施設内の従業員向け共用スペースや、隣接する商業施設により従業員の就業環境も整う」(中澤氏)。
トップウェルへのインタビューからは、特に保税倉庫用途として、立地と賃料のバランス、40フィートコンテナ対応であることなどが決め手として働いたことが分かった。東京港からも関東一円への配送にも良い立地はもちろんのこと、豊富なトラックバースや待機場、従業員の就業環境もこの施設の魅力の1つである。
アライプロバンス葛西は、今年8月に完成予定だ。今回取材したトップウェルは2700平方メートル超を借りることになっているが、1100平方メートル程度からの小区画でも賃借可能だ。アクセスや取り回しの良さを、ぜひ実見してもらいたい。
TEL:03-3633-6931
メール:suzuki@araipro.co.jp
URL:https://www.araipro.co.jp/kasai-logistics/
敷地面積:3万5040平方メートル(1万599坪)
延床面積:8万7122平方メートル(2万6354坪)
構造規模:鉄骨造・地上5階建て
床耐荷重:1.5トン/m2、梁下有効天井高:5.5メートル(一部5.4メートル)
柱スパン:10.8×10.5メートル、ドックレベラー:20台(通過過重6トン)
貨物用エレベーター4台(3.5トン)、垂直搬送機2台(1.5トン)
完成:2024年8月
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