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物流DX会議アフターレポート、パネルディスカッション②

ベンダー、商社が説くシステム・企業連携の必要性

2024年8月26日 (月)

ロジスティクス8月23日に開催された物流DX会議。午後の部では各種システムを開発するベンダーと、ユーザーでもありながら開発側に回ることもある商社を巻き込み、システム連携の必要性についてのトークセッションが行われた。

登壇したのは自動配車システム開発のライナロジクスの朴成浩氏、住友商事の犬山直輝氏、古野電気の西村正也氏。

▲左からLOGISTICS TODAY編集長の赤澤裕介氏、ライナロジクス代表取締役の朴成浩氏、住友商事・物流ソリューション事業ユニット統括・犬山直輝氏、古野電気システム機器事業部事業企画部主査・西村正也氏

業務の効率化は物流業界が抱える共通課題

物流現場が抱える課題が複雑化するとともに、WMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫運用管理システム)のユーザーニーズも多様化してきた。従来のように一社だけのソリューションですべて解決するのはほぼ不可能だ。

そうした状況を踏まえて、発言の口火を切ったのは住友商事の犬山氏。もともと何らかの技術を持っていない商社は「複数の企業と連携、協業するのが当たり前だった」という。犬山氏はそうした中立的な立場から、現在進む物流業界の連携がより加速すると考えている。物流のソリューションについては「ユーザーのスピード感が上がっている」と同時に要求も高まっているという。「自社でできることには限界があるけれど、技術が進歩して他社ソリューションと連携ができる環境も整っている」(犬山氏)。技術の進歩が、異なるシステム、他企業との連携を進めていくとみている。

ユーザーの側も、「ベンダーのサービスはインターネットで簡単に調べられる。ベンダーごとの特色は把握されているので、ユーザーが複数社のサービスを利用するのは当然のこと」とライナロジクスの朴氏。「昔はユーザーがベンダーを選定したら、一つのベンダーがシステム面のことを一括で引き受けるのが普通だった。しかし、近年はそういったアプローチするところが減った」とし、複数企業のソリューションが組み合わせられて利用されている現状を語った。古野電気の西村氏も「物流の現場は多種多様で、標準化が難しい。そこに一社で応えていくのは限界がある」とする。

「物流業界は『2024年問題』という共通の課題を抱えている。それを乗り越えるためにも企業間の連携は加速していく」と話すのは犬山氏。午前中のパネルディスカッションでは、WMSとTMS(輸配送システム)のシステム連携の必要性が議論され、トラックの動きを正確に追跡することが庫内作業の効率化につながるといった意見も出ていた。業界全体が深刻な人手不足、輸送力不足に直面する今、業務の効率化は急務だ。

各社の連携が進むとされる背景にはユーザーニーズが多様化するとともに、要求のレベルが高まってきたという実情がある。例えば人手不足に伴うトラックドライバーや庫内作業員の不足は、もはや物流現場がマンパワーに頼ることができないことを示唆している。「少ない人数で業務を効率的に回す」には、得意分野を異にする複数社の連携が必要不可欠だ。

とりわけ物流業務は企業ごとに課題がまったく違うため、一つのソリューションがあらゆる企業にマッチすることは滅多にない。もはや一社だけで課題に取り組むのは実情に即してはいないのだ。

企業間連携はライバル関係を維持しながらでもできる

さらに話題は連携の具体に発展していった。ライナロジクスの朴氏はクラウド化が物流課題解決のキーになるとにらんでいる。「クラウド化する前は開発環境がクローズで、システム連携が進みにくかった。クラウド化してオープンな環境になってからは連携が促進されていると感じる」(朴氏)。さらに「情報が広く共有されたおかげで、今はメーカーごとの棲み分けができている。それぞれの強みが分かりやすくなったので、企業間の連携もしやすいと思う」と語った。

西村氏は、自社が開発したETCと車番認識を組み合わせ、車両を確実に特定できるシステムを紹介。「この技術を他社のシステムと連携することで、物流施設への入退場を今よりスムーズにできる可能性がある」(西村氏)とした。

ベンダー側はやる気十分だが、犬山氏は「ユーザーからの働きかけがなければ連携は生まれない」とし、「連携には必ずコンセプトが必要。それは共通のユーザーを交えての話し合いのなかで生まれるもの。物流施設の業務改善を主とする個別の連携は進んでいるが、標準化を進めるには国全体を巻き込まないといけないかもしれない」と、行政からの働きかけを期待する発言を残した。

ディスカッションを締めくくるにあたり、西村氏は「昔と違い、今は企業同士の棲み分けが進んでいる。ライバル関係を維持しつつ、連携を進めることもできるのではないか。結果としてそれがユーザーのためにもなる」とした。また朴氏が「われわれの本当の敵はDXに抵抗する流れそのもの。そういう意味でベンダーは皆同じサイドのプレイヤーのはず」と語ったその言葉には、ベンダー同士の連携が加速する流れを確信する響きがあった。

「第二回物流DX会議」開催、協調への連携実証進む