ロジスティクス国土交通、経済産業、農林水産の3省は27日、新物効法の施行に向けて、基本方針や効率化取り組みの判断基準、特定事業者の指定基準などについての3省合同による検討結果を取りまとめ、パブリックコメントを実施。10月27日まで意見を公募する。
荷主企業、物流事業者、施設管理者をはじめとする物流に関わるさまざまな関係者が協力して、2028年までに、全トラック輸送のうち5割の運行で荷待ち・荷役など時間を1時間削減し、トラックドライバー1人当たり年間125時間の短縮を実現すること、そのために1運行当たりの荷待ち・荷役など時間が計2時間以内となるよう荷待ち・荷役など時間を削減することを基本方針として明示。また、28年度に全トラック輸送のうち5割の車両で積載効率50%、全体の車両で積載効率44%への増加を実現し、重量ベースだけではなく容積ベースでの輸送効率向上の改善や、脱炭素物流の推進を目指す。
荷主・物流事業者等の判断基準について
取りまとめでは、新物効法の公布から1年以内に施行される規定関係として、効率化の努力義務の判断基準などが示された。
荷主の判断基準については、積載率の向上に関して、複数荷主の貨物の積み合わせ、共同配送、帰り荷(復荷)の確保などに積極的に取り組めるよう、実態に即した適切なリードタイムの確保や荷主間の連携に取り組むこと、運行効率向上のため、繁閑差の平準化や納品日の集約などを通じた発送量・納入量の適正化や、配車システムの導入などを通じた配車・運行計画の最適化に取り組むこと(繁閑差の平準化が容易ではない場合は、納入単位・回数の集約などに取り組むこと) 、社内の関係部門(物流・調達・販売など)の連携を促進することにより、適切なリードタイムの確保や発送量・納入量の適正化を図ることを示している。
荷待ち時間の短縮では、トラック予約システムの導入や混雑時間を回避した日時指定などにより、貨物の出荷・納品日時を分散させること、寄託先の倉庫に対する受発注の前倒しを行うことなどにより、倉庫業者の適切な作業時間を確保するとともに、貨物の出荷・納品日時を分散させることとし、荷役時間削減ではパレット、かご車などの輸送用器具の導入により、荷役などの効率化を図ることを判断基準として、一貫パレチゼーション実現のため、発荷主・着荷主などの関係事業者間で協力して、発注数や納品数の調整を行うとともに、標準仕様パレットやこれに適合する包装資材の導入などのパレット標準化に向けた取り組みを行うことなどが示された。検品効率化、事前出荷情報の活用、適切な荷役環境と設備の整備、その実効性確保に向けた体制作りや関係者との連携も判断基準に含まれる。
連鎖化事業者(フランチャイズチェーンの「本部」)の判断基準については、適切なリードタイムを確保した発注をすること、繁閑差の平準化や納品日の集約などを通じた納入量の適正化や、配車システムの導入などを通じた配車・運行計画の最適化に取り組むこと、社内の関係部門の連携を促進することにより、適切なリードタイムの確保や納入量の適正化を図ることや、貨物の納品時間の分散、実効性確保に向けた取り組みが示された。
貨物自動車運送事業者の判断基準には、積載率の向上に向けた複数の荷主の貨物の積み合わせを行うことなどにより、輸送網を集約すること、荷主、連鎖化事業者、ほかのトラック事業者と必要に応じて協議を実施し、配送の共同化に取り組むこと、求荷求車システムなどを活用した帰り荷の確保により、実車率の向上を図ることや、 配車システムの導入などにより、配車・運行計画の最適化を行うこと、 輸送量に応じた大型車両の導入などにより、運送ごとの貨物の総量を増加させることも判断基準となる。
貨物自動車関連事業者(倉庫、港湾運送、航空運送、鉄道)の判断基準については、荷待ち時間の短縮について、トラック予約受付システムの導入や混雑時間を回避した日時指定などにより到着時間を調整すること、荷主から一貫パレチゼーション実現のためにパレットでの納品について提案された際には、パレット費用の適正な価格転嫁が確認できれば、その提案に協力を行うこと、倉庫から着荷主向けの配送車両への荷積みについて、倉庫業者の作業費用の適正な価格転嫁が確認できれば、納品先単位に仕分けた状態で貨物をトラックドライバーに引き渡し、荷役などの効率化を図ることなどが示された。
荷主等の取組状況に関する調査・公表について
新物効法では、国は、トラック運送サービスの持続的な提供の確保に資するトラックドライバーの運送、荷役などの効率化のために必要があると認めるときは、荷主などの判断基準に関して調査を行い、その結果の公表を行うこととされており、その調査・公表の具体的な方法も示された。
調査に関しては、物流事業者(トラック、倉庫など)を対象として、定期的なアンケート調査することとして、物流事業者からの回答を調査、点数化して、点数の高い者・低い者も含め公表することとなる。また、アンケート調査の結果、荷主などで長時間の荷待ち、契約にない付帯業務、無理な運送依頼などが常態化しているなど悪質な事例を捕捉した場合には、必要に応じて荷主などからのヒアリング調査などを行い、トラックGメンや公正取引委員会などによる働きかけや要請などにつなげていく。
荷待ち時間と荷役時間の算定方法
荷待ち時間と荷役時間の算定方法も定められる。荷待ち時間に関しては、到着時刻・時間帯の指示がない場合、トラックドライバーが集荷・配達を行う場所やその周辺の場所に到着した時刻(到着後速やかに受け付けなどを行う場合はその時刻)から荷役などの開始時刻までとすることが示された。
到着時刻・時間帯の指示があった場合は、トラックドライバーが集荷・配達を行う場所やその周辺の場所に、指示された到着時刻・時間帯の始期よりも前に到着した場合は、指示時刻などから荷役などの開始時刻までとすること、トラックドライバーが集荷・配達を行う場所やその周辺の場所に、指示された到着時刻・時間帯内に到着した場合は、当該到着時刻(到着後速やかに受け付けなどを行う場合はその時刻)から荷役などの開始時刻までとするとしている。
トラックドライバーが集荷・配達を行う場所やその周辺の場所に、指示時刻・時間帯の終期よりも後に到着した場合は、当該到着時刻から荷役などの開始時刻までを荷待ち時間とするが、トラックドライバーの都合で指示時刻などを過ぎたことにより生じた待機時間については、荷待ち時間として計測しないとした。
荷役など時間については、トラックドライバーが行う荷役、検品、荷造り、入庫・出庫、棚入れ・棚出し、仕分け、商品陳列、ラベル貼り、代金の取り立て・立て替えなど、トラック事業に付帯する業務の開始時間から終了時間までとすること、荷下ろしと荷積みを並行して行うケースや帰り荷の積み込みを行うケース、輸送用機器を持ち帰るケースなど、1つの施設内で荷下ろしと荷積みの両方を行う場合は、積載率の向上などに向けた事業者の取り組みを阻害しないよう、荷下ろしと荷積みを別々に計測することも許容することとする。
また、荷待ち時間などについては、トラックドライバーが集荷・配達を行う場所やその周辺の場所に到着した後速やかに受け付けなどを行わずに業務上の指示などにより休憩する時間は除外するが、迅速に車両を動かせるような状態での待機や荷役作業中の立ち会いが要求されているなど、業務から完全に離れることができず、実質的に休憩がとれていない時間は、これらの計算から除外しないことを明確化して運用することとしている。
特定事業者の指定基準
公布の日から2年以内に施行される規定関係では、特定事業者の指定基準、CLOの業務内容、などが示された。
荷主や連鎖化事業者に対しては取り扱う貨物の重量が年間で9万トン以上とすることが示され、その算定方法についても示された。国内の上位3200社程度が対象となる。また、倉庫業者は貨物の保管量が年間70万トン以上(上位70社程度)、トラック運送事業者は保有車両台数が150台以上(上位790社程度)が特定事業者の指定対象となり、日本の取り扱い貨物量全体の半分をカバーする企業に、物流改善への施策強化が求められる形だ。
中長期計画・定期報告の記載事項について
特定事業者に求められる中長期計画の作成については、5年に1度の提出で、「運転者1人当たりの1回の運送ごとの貨物の重量の増加」、「運転者の荷待ち時間の短縮」、「運転者の荷役など時間の短縮」に関して、実施する措置、具体的な措置の内容と目標、実施時期などを記載することとする。また、定期報告については、事業者の判断基準の順守状況(チェックリスト形式を想定)、関連事業者との連携状況等の判断基準と関連した取り組みに関する状況(自由記述を想定)、荷待ち時間などの状況を記載することが示された。
物流統括管理者(CLO)の業務内容について
特定荷主、特定連鎖化事業者に課される物流統括管理者(CLO)の業務内容も示された。
CLOは、中長期計画の作成、トラックドライバーの負荷低減と輸送される物資のトラックへの過度の集中を是正するための事業運営方針の作成と事業管理体制の整備を担い、トラックドライバーの運送・荷役などの効率化のために必要な業務として、定期報告の作成、国からの報告徴収に対する当該報告の作成、事業運営上の重要な決定に参画する立場から、社内の関係部門(開発・調達・生産・物流・販売など)間の連携体制の構築、トラックドライバーの運送・荷役などの効率化のための設備投資、デジタル化、物流標準化に向けた事業計画の作成、実施・評価や、運送・荷役などの効率化に関する職員の意識向上に向けた社内研修などの実施、リードタイムの確保に資する調達・生産・販売を含めた在庫管理計画の作成などを業務として、フィジカルインターネットの実現に向けた連携・調整も求められる。
なお、荷主企業・物流事業者による物流改善の取り組みや実施状況などについてランク評価などによる見える化を行い、企業の努力が消費者や市場からの評価につながる仕組みの具体化も示され、省エネ法におけるS・A・B・Cのクラス分けを参考に、評価方法など検討が行われる。
各種業界団体から提示された以下の意見については、物流の効率化をより一層進めていく観点から、引き続き検討され、グループ企業におけるCLO選任、中長期計画・定期報告作成義務の一括化や、幹線やラストマイルなどの区分による積載効率の目標、地方における物流課題や、デジタル技術導入の支援措置など、活用しやすい制度運用や今後の課題について議論される。
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com