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トラック予約受付システムの課題検証イベント・レポート

バース予約システム課題解決に、新たな連携も拡大

2025年1月17日 (金)

▲本誌編集長の赤澤裕介氏

ロジスティクス改正物流効率化法の施行で関心高まる「トラック予約受付システム」の現状や課題、その効果的な運用を検証するイベント「24年問題を物流現場から打破せよ!ーー”トラック予約システム”を超える継続的な物流連携の新戦略」が17日に開催された。

政府が積極的な活用を呼び掛けながらも、運用現場では課題も指摘されるトラック予約受付システムについて、第1部の基調講演では運送事業者・物流事業者の実運用の場面での課題や提案を議論、第2部ではトラック予約受付システムのサービスベンダーなどが集まり、基調講演で提示された課題の解決策やより効果的な運用について検証した。

運用現場で顕在化する、トラック予約受付システムの課題

基調講演には、NBSロジソル(大分県日田市)代表取締役社長の河野逸郎氏、中部興産(岐阜県可児市)物流部シニアマネージャー(前キユーソーティス相談役)の山田啓史氏、カワキタエクスプレス(三重県亀山市)代表取締役社長、川北辰実氏という多様な立場の物流・運送事業者が参加した。

▲左からNBSロシソル代表取締役社長の河野逸郎氏、カワキタエクスプレス 代表取締役社長の川北氏、中部興産 物流部 シニアマネージャーの山田啓史氏

「大手発荷主でのシステム導入は進んでいるが着荷主との連携が進んでいない、全体がつながっていない」「そもそも建築現場にはバースなど存在せず、システム自体の導入が難しい」(河野氏)、「システムの種類が多く操作が難しい」「システムにがんじがらめで、かえって非効率」、「構内の渋滞が周辺に拡大し、近隣トラブルを招くケースも」(山田氏)などの課題が提示され、コスト負担を誰が担うべきかという導入課題や、発着荷主の連携ミスで運転手が板挟みになったり、システム導入だけで満足してしまうような状況も見受けられると報告。現場からは、システムへのポジティブな意見よりもネガティブな意見の方が圧倒的だという。

そもそも倉庫のキャパや処理能力が上がらなければ、予約受付システムで処理できる車両台数にも限界がある。バース部分だけの課題解決が全体最適につながらず、トラック運転手や運航管理者の負担増につながっているならば本末転倒であることも議論された。山田氏は「24年問題が24年ビジネスに終わってはいけない」と、ツールの普及ではなく本来目的であるトラックドライバーの労働環境改善に立ち返るべきと訴えた。河野氏からは同様に「可視化には賛成、問題はその先」と、システム導入をゴールとしない運用での改善取り組みの必要性を訴えた。また、川北氏からは運送会社やドライバーも時間管理のルールに準じた働き方への転換を推進し、ただ与えられるサービス活用だけではなく自ら提案していくような体制を整えていくことの必要性を指摘した。

中部興産は、中部エリアを中心にスーパー、ドラッグストアを展開するバローグループの物流インフラの構築と運営を担う。右肩上がりの事業成長の基盤は、バローグループと一体となった生産性向上の取り組みと、自前主義の物流センター構築とその物流オペレーションを支える人材戦略にある。

カワキタエクスプレスも、TikTokなどSNSを活用した独自の人材獲得と教育によって若手・未経験獲得に成功するなど、ドライバーの働き方改革を事業成長の柱に据えるだけに、荷待ち・荷役時間の削減の解決は、重要な取り組みである。

NBSロジソルによる建材物流主要事業者による建材ネットワークサービスの物流改善の取り組みや、カワキタエクスプレスのSNSを活用したドライバー確保、中部興産の物流センター構築とその物流オペレーションを支える人材戦略など、それぞれの観点でトラックドライバーの環境改善への取り組みが行われているが、現状、トラック予約受付システムがそこに貢献していない現場がまだまだ多いことも示された形だ。

システム提供者自身から見た、システムの課題とその原因

第1部で示された、トラック予約受付システムの運用課題に、システム提供者はどのような回答を用意するのか。第2部では、シーイーシー営業本部西日本営業部グループマネージャーの西山充氏、ハコベル(東京都品川区)トラック簿事業部営業グループマネージャーの小窪亘氏、古野電気システム機器事業部事業企画部主査の西村正也氏が登壇した。

▲左からシーイーシー 営業本部グループマネージャーの西山充氏、ハコベル トラック簿事業部 マネージャーの小漥氏、古野電気システム機器事業部事業企画部主査の西村正也

システム自体の課題となるキーワードとして、バース管理システム「LogiPull」を展開するシーイーシーは“部分的”、トラック・バース予約受付システム「トラック簿」を展開するハコベルは“キャパ”、入退場管理の領域の効率化ツール「FLOWBIS」を提供する古野電気は“納得感”という言葉を提示した。前後工程など連携するより広い領域での効率化との連動が必須だが現状は”部分的”にとどまっていること、サプライチェーン(SC)を俯瞰したシステム運用が重要であり、そもそも倉庫の”キャパ”の検証がなくてはシステムの機能を発揮できないこと、社内の各部門や関係する多様な企業にシステムの”納得感”がなければ普及と運用は広がらないと指摘した。

またこうした課題の原因については導入目的の設定の不備や、目的の共有ができていないことや、そもそも物流の前工程、生産や計画の段階からの見直しが欠けているとして、SC全体での効果的な運用について、各サービスの機能をもとに議論された。

トラック予約受付システムの機能を最大限生かす運用

バースだけではなく、SC全域、特に前後工程の効率化を訴える西山氏は、庫内運用管理システム「LogiPull WES」とバース管理システムを連携した運送と保管のスムーズな連携、ユーザーに応じた柔軟なカスタマイズの最適化を自社サービスの強みと語り、物流サービスの自動化による荷待ち・荷役時間削減に取り組む。

小窪氏からはトラック簿について、契約期間の縛りが短期間で導入しやすく、コストパフォーマンスや導入後のサポートなどを強みとして業界シェア33パーセントを占めていることを紹介。繁閑のギャップが大きい飲料メーカーのSCマネージメント見直し事例では、企業内の調整、生産部門と計画部門をはじめとする全部門が連携して物流を見直し、属人化しない需要予測システムなど計画工程の効率化ツールと合わせた、全体最適化のなかにトラック簿を組み込んだ成功例が報告された。

これまで行政はトラック予約受付システムばかりに言及してきたが、今後、入退場管理システムへの関心も高まると予想される。西村氏は、ETCのトラックへの積載率の高さや高速道路での運用実績を強みとした同社のシステム活用によって、バースの前後からの管理の生産性とセキュリティ向上や、守衛配置コスト削減、データ集積の効果を紹介し、入退場部分とバース部分を合わせた構内領域の全体最適化を目指す方向性が示された。同社のETCを活用した管理システムは、LogiPullの車両入退管理、実績管理との連携を実現。さらに、ハコベルと古野電気の連携も現在話し合いが始まっていることも明かされた。システム同士の足りない部分を補い合うなど利用者にとってより使いやすいサービスとなる。連携力やつながりやすさをアピールポイントとできるような、システム提供者同士の新たな連携も議論されていることが示された。

バース予約受付システムの効果的な運用として、物流工程の一部分としてのバースではなく、運送と保管をスムーズにつなぐSC全域の改善として取り組むこと、導入をゴールとせずに、計画段階からの全体最適を見据えたツールと併用することなどが示された。小窪氏からは「100パーセント予約をゴールとせず、予約部分と予約しないで使える部分を分けた柔軟なサービス」なども検証していくべきとして、予約時間ががんじがらめの制約とならないような、多くの物流関係者が満足できるサービスの提供も視野に入れていると語った。

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LOGISTICS TODAY編集部
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