ロジスティクス倉庫管理システム(WMS)のシーネット(千葉市美浜区)、AI(人工知能)自動配車システムのライナロジクス(千葉県市川市)、動態管理システムの都築電気(東京都港区)の3社は8日、WMS・自動配車システム・動態管理システムの標準連携構築を目的に協業を開始したと発表した。それぞれのシステムをAPI連携させ、倉庫から配送までのデータを一気通貫で連携、物流プロセス全体の最適化を実現する連携基盤の構築を目指す。
今回の協業の核となるのは、これまで独立して運用されることが多かったWMS、自動配車、動態管理の各システムをAPIで連携させ、データの流れをシームレスにすることだ。
まず、シーネットのクラウド型WMS「ci.Himalayas」(シーアイヒマラヤ)とライナロジクスのAI自動配車システム「LYNA自動配車クラウド」を連携。WMSが持つ出荷情報(物量、納品先、時間指定など)をLYNA自動配車クラウドがリアルタイムで取得し、最適な配車計画を自動作成する。さらに、庫内作業の進ちょく状況と配車計画を同期させ、トラックの待機時間削減や、変動する物流量への柔軟な対応を図り、配送コスト削減と車両稼働率向上につなげる。
次に、ライナロジクス独自の荷姿予測AI「LYNAロジスティクス予測」を活用。WMSに容積情報がない場合でも、過去の出荷実績などからAIが出荷される荷物の個口数を高精度に予測する。この予測データを配車計画に反映させることで、より現実に即した積載効率の高い計画立案が可能となる。適切な積載率と配送ルートを自動調整し、トラックドライバーの労働環境改善にも貢献する。
そして、都築電気の動態管理サービス「TCloud for SCM」との連携だ。配送中の車両のリアルタイムな位置情報や配送ステータスを、WMSや配車システムで一元的に把握できるようにする。これにより、遅延の早期発見、納品先への正確な到着時間予測、納品時の検品データ連携による誤納品防止や納品時間短縮を実現。さらに、AIを活用したかご車・カートラックの必要台数予測により、庫内レイアウトの最適化にも寄与する。
この3システム連携により、倉庫内業務から配送計画、リアルタイムの動態管理、納品検品まで、物流プロセス全体を一貫して管理・最適化することが可能になる。無駄な作業や待機時間の削減、倉庫・配送状況の一元管理による迅速な意思決定、納品精度の向上、データ蓄積・分析による継続的な業務改善などが期待される効果だ。
また、適正な積載率の確保と最適ルートの自動調整は、トラック輸送の効率を最大化し、長時間労働の抑制と運行の安定化にもつながる。これは、後述する「新物流二法」への対応強化も支援するものとなる。
連携の実効性を検証するため、3社はサン インテルネット(横浜市西区)の物流現場でPoC(概念実証)を実施予定。さらに、学習院大学経済学部経営学科の河合亜矢子教授も参画し、学術的な視点から有効性や運用上の課題を検証する。
今回の協業の背景には、物流業界が直面する「2024年問題」や新たな法規制への対応がある。ドライバー不足や長時間労働が深刻化するなか、24年4月からの時間外労働上限規制適用や、荷主・物流事業者双方に効率化を求める「新物流二法」への対応が急務となっている。
特に、25年4月施行の改正物流総合効率化法(新物効法)では、積載率向上や荷待ち時間短縮などの物流効率化が努力義務となる。国の判断基準にはシステム活用も含まれており、物流システムの重要性が増している。しかし、従来システムのデータ断絶による非効率が課題となっていた。
3社は今後、技術とノウハウを結集し、WMS・配車(TMS)・動態管理のシームレスな連携を確立。将来的には、バース管理システムやマテハン機器との連携も視野に入れ、物流オペレーション全体の最適化を目指す。これにより、物流DXを加速させ、業界の新たなスタンダードを築いていく考えだ。
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