ロジスティクスBigM(ビッグエム、東京都中央区)開催の「サプライチェーン・デザイン カンファレンス TOKYO 2026」では、理論のみならず、日本を代表する企業による取り組み事例が紹介された。
NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)とダイキン工業の登壇者は、AI(人工知能)やシミュレーション技術をいかに実務に落とし込み、組織変革につなげているかを詳述した。SCDが「一度きりの設計」ではなく、継続的な意思決定基盤として機能する実態が明らかになった。
NXHDの今村匠吾グローバルヘッドは、グローバル輸入品メーカーのアジア圏ネットワーク合理化事例を報告した。

▲NIPPON EXPRESSの今村匠吾グローバルヘッド
同社は、多岐にわたる事業部がプラント・事業単位でサプライチェーンを個別最適化されていた「ブラックボックス」状態を解消するため、BigMの「MatchSolve」(マッチソルブ)とオプティロジックの「Cosmic Frog」(コズミックフロッグ)を活用した。マッチソルブにより、人間が気づきにくい潜在的な課題やサステナビリティへの意識をAIが俯瞰し、論点設定を支援した。
ネットワーク分析の結果、輸送コスト20%削減、総重量・距離の50%削減という改善余地を可視化した。今村氏は、定性的な判断に寄りがちなリスクを指標化し、シナリオベースで評価できる点が、意思決定を強力に後押ししたと振り返る。膨大な情報からAIがロジック推理を行い、地政学リスクや環境負荷など、人間が想定していなかった根本原因を洗い出せる点が大きな利点だ。
ダイキン工業の田中将太チームリーダーらは、急成長に伴う「現状踏襲」の打破に向けたシミュレーション活用の思想を語った。
同社は、経験と勘に基づく在庫補充ポリシーの限界を感じ、理論在庫の算出と将来の不確実性を加味したシミュレーションを組み合わせた。分析の結果、サービスレベルを維持しながら在庫を削減できるポイントを特定した。田中氏は「デジタル技術で過去の形骸化した業務運用を打破し、でかい中小企業からの脱却を目指す」と意気込みを見せる。

▲(左から)ダイキンの中尾賢二氏、田中将太チームリーダー、三宅聡一郎氏
両社の事例に共通するのは、テクノロジーを「人間の意思」を具現化する武器として捉えている点だ。ダイキン工業のプロジェクトも、人が意思を持って分析手法を推進してきた経緯がある。AIは飛躍的な発想や失敗を恐れる思考を苦手とするが、試行回数を増やして失敗のコストを下げる役割を果たす。これにより、人間はより高度な意思決定に専念できる環境が整う。
閉幕の挨拶で村儀実社長は、映画「インターステラー」に登場するAI、「TARS」(ターズ)を例に挙げ、科学的楽観主義を提唱した。

▲BigMの村儀実社長
AIを「仕事を奪う存在」ではなく、ユーモアを持ち人間に寄り添う「同僚」として捉える視点だ。失敗を恐れずに検証を重ねることで、不確実な未来を予測し、より良い社会を構築できる。テクノロジーと人間の「サイエンスとアートの融合」こそが、次世代サプライチェーンの姿だ。
閉幕後の会場では、企業の垣根を越えたネットワーキングの場が設けられた。

▲ネットワーキングの様子
参加者同士が自社の課題や最新技術の活用法を熱心に語り合い、業界の未来を模索する活発な交流が各所で見られた。登壇したエキスパートとの質疑も途切れることなく続き、知見の共有のみならず、新たな共創の可能性を感じさせる有意義な対話の場となった。(菊地靖)

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