ロジスティクスBigM(ビッグエム、東京都中央区)は、サプライチェーンデザイン(SCD)の最新動向とAI(人工知能)技術の活用をテーマにした「サプライチェーン・デザイン カンファレンス TOKYO 2026」を開催した。
地政学リスクや需要の不確実性が常態化するなか、従来の「正解を当てる計画」は限界を迎えている。同社は、AIを前提とした意思決定基盤により、変化へ柔軟に対応し続ける「適応化」(オーケストレーション)への転換を提唱した。本誌は、AI革命がもたらす意思決定の変容と、人間が果たすべき真価に焦点を当てる。
サプライチェーンを取り巻く環境は、過去30年で最も破壊的な変化に直面している。同社の村儀実社長は、現在の状況を「前提の崩壊」と表現した。地政学リスクや市場環境の激変により、単一の計画や静的な前提に基づく従来の手法では、場当たり的な個別調整やExcel(エクセル)管理を招くだけだ。

▲BigMの村儀実社長
同氏は、静的な「最適化」(オプティマイゼーション)から、複数のトレードオフを考慮しつつ変化に継続対応する「適応化」への進化が不可欠だと説く。
この変革の鍵を握るのが、変化を糧に組織を強くする「アンチフラジャイル」(反脆弱性)の概念だ。既存オペレーションを突き詰める「知の深化」に加え、前提の変化に合わせてサプライチェーンの形を変える「知の探索」の両輪が経営には求められる。
SCDは、戦略とオペレーションの橋渡しを担い、拠点配置やキャパシティー策定などの戦略的意思決定を支える基盤となる。
AIの台頭により、意思決定のプロセスも劇的に変化する。分析やモデリング、計算といった「中流工程」はAIにより圧縮・コモディティー化が進む。一方で、付加価値の源泉は、選択肢以前の「問いのデザイン」と、選択以後の「決断と責任」という、人間ならではの領域に再集中する。村儀氏は「AIはエンジンの拡張であり、人間はハンドルの操作を担う」と役割分担を明確にした。
米オプティロジックのドナルド・ヒックスCEOは、AI活用の判断基準として「6つの次元」を提示した。大量のデータがあり、過去からパターンが変わらないタスクはAIによる自動化に向く。

▲Optilogicのドナルド・ヒックスCEO
一方、過去のパターンが通用しない「未来のデータ」や、複雑な背景知識が必要な判断、結果に対する説明責任が伴う局面では、人間の判断が不可欠となる。ヒックス氏は「未来のデータはAIも持っていない」と述べ、AIと人間の役割を分ける重要性を強調した。
オプティロジックのヨリス・ヴァイカマEVPは、次世代プロダクト「PlanStar」(プランスター)を公開した。これはデータ、モデル、AI、そして人間を一つのワークフローで統合する「意思決定オーケストレーション」を実現するツールだ。

▲Optilogicのヨリス・ヴァイカマEVP
ユーザーが判断を下すべきポイントをワークフロー内に組み込み、対象者へ通知を行う。テクノロジーは人を置き換えるのではなく、人間の可能性を拡張するために存在する。
村儀氏は「AI時代において、人間の真価は問いを立て、決断を下すことに集約される」と強調した。計算や分析という重労働をAIという「エンジン」に委ねることで、人間は進むべき方向を指し示す「ハンドル」の操作に集中できる。
この人中心の思想が、不確実な時代を勝ち抜くための新たな羅針盤となる。次稿では、この思想を実務で体現するNIPPON EXPRESSホールディングスとダイキン工業の具体的な取り組みを詳報する。(菊地靖)

▲質疑応答の様子
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