ロジスティクス来月、特定荷主に対する物流統括管理者(CLO)の選任義務化が始まる。年間取扱貨物重量9万トン以上の荷主企業が対象で、該当するのは上位3200社程度。経営レベルで物流改革を主導する責任者の設置を法律で求めるという、日本の物流政策としては大きな転換点だ。(編集長・赤澤裕介)
CLOに求められるのは、荷待ち・荷役時間の削減、積載率の向上、中長期計画の策定と報告といった、サプライチェーン全体の効率化だ。対象企業は2026年10月末までに中長期計画を提出し、以降は毎年度の定期報告も義務付けられる。未選任や届出怠慢には勧告・命令・企業名公表、さらに罰金もある。これまで「物流は現場の話」で済ませてきた荷主企業にとっては、経営の問題としてサプライチェーンの全体像を見る必要に迫られている。
CLO制度と軽貨物安全規制の主なスケジュールを整理すると、以下のようになる。
2つの制度改革は同じ時期に並行して動いている。だが現状、それぞれの議論はほぼ別々に進んでおり、接点が見えにくい。
今回、全国軽貨物協会(全軽協)の西田健太代表理事に取材するなかで気になったのは、CLOの視界にラストワンマイルの末端──軽貨物ドライバーの現実がどこまで入っているのかという点だった。
CLOの責任範囲は幹線で止まるのか
CLO制度の議論は、これまで主に幹線輸送の効率化を中心に進んできた。トラックの荷待ち時間、積載率、パレット化、モーダルシフト。いずれも重要なテーマだ。一方で、荷物が物流センターを出た後、最終的に消費者や取引先に届くまでのラストワンマイルは、制度設計の議論ではあまり正面から扱われてこなかった。

▲全国軽貨物協会の西田健太代表理事
西田氏への取材(本誌インタビュー記事参照)で浮かび上がったのは、軽貨物業界が抱える構造的な問題──制度理解の欠如、低運賃、多重再委託、安全管理の空白──だ。これらは軽貨物の業界内部だけの問題ではない。荷主企業から見れば、自社の商品を最終顧客に届ける過程で、安全管理が十分でない事業者が関与しているかもしれないというリスクでもある。
25年4月に施行された軽貨物の安全対策強化で、安全管理者の選任、点呼記録の保存、業務記録の作成が義務化された。これにより、軽貨物事業者の運営実態がようやく可視化され始めている。ただ、その情報がサプライチェーンの上流──荷主やCLOの手元にまで届く仕組みは、まだ整っていないのが実情だ。
現状、多くの荷主企業は軽貨物の再委託構造を詳しく把握していないのではないか。元請けの物流会社に委託した荷物が、2次請け、3次請けを経て、最終的に個人事業主の軽貨物ドライバーが届けている。その過程で、安全管理の責任がどこにあるのかは曖昧になりやすい。CLOの役割が「サプライチェーン全体の効率化と適正化」であるなら、ここはいずれ向き合わなければならない領域だろう。
全軽協が開発したK-Linkは、個人事業主の法令遵守状況を元請けや荷主が確認できる設計になっている。25年4月からはCLO向けの閲覧機能も追加された。仕組みとしての方向性は分かりやすいが、利用はまだ広がっていない。
K-Linkに限らず、ラストワンマイルの可視化ツールは今後増えていくだろう。気になるのは、CLOがそうしたツールを使う動機を持てるかどうかだ。中長期計画の策定にあたって、ラストワンマイルの安全管理やコンプライアンスが評価項目に含まれるのか。定期報告で再委託先の管理状況を問われるのか。制度の射程がそこまで広がるかどうかで、CLOの関心の持ち方も変わってくる。
西田氏はインタビューのなかで、「軽貨物と一般貨物が異なるルールの下で共存している現状は健全ではない」と語っていた。CLO制度が掲げる「サプライチェーン全体の最適化」を実のあるものにするには、その「全体」の中に33万台を超えるラストワンマイルの黒ナンバーも含まれている必要がある。
もちろん、一足飛びにはいかない。特定荷主の多くは、まず自社の幹線輸送の効率化で手一杯だろう。ただ、26年度の中長期計画が出揃い、制度が回り始めた後に浮上してくるのは、おそらく「末端の管理をどうするか」という問いだ。そのとき、軽貨物の適正化がどこまで進んでいるかが、物流全体の底上げを左右することになる。
CLOは来月、各社に生まれる。その視界の中に、ラストワンマイルの現実がどう映るか。
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