国際オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE、シンガポール)は10日、世界最大のコンテナ船ノンオペレーティングオーナー(NOO)であるシースパンの最終持株会社ポセイドンの株式を、既存株主から追加取得する契約を締結したと発表した。取引完了後、ONEの持分は現在の28.7%から48.9%に拡大する。過半数には届かないが、他の株主が分散しているなかで事実上の筆頭株主としてシースパンの経営に強い影響力を持つことになる。(編集長・赤澤裕介)
船社と船主の境界が揺らぐ

(出所:ONE)
コンテナ海運業界はこれまで、船を運航する「船社」と船を所有してリースする「船主」(NOO)が明確に分業してきた。最大手のMSCでさえ船隊容量の65%を用船でまかなっており、業界全体でもコンテナ船の半数以上がリース船とされる。ONEが船主側の最大プラットフォームに資本参加を深めたことは、この分業構造そのものが揺らぎ始めていることを示す。
ジェレミー・ニクソンCEOは発表文で、2023年の初期投資以来シースパンが世界トップの船腹プラットフォームとして成長を遂げたとし、追加出資がONE2030戦略成長計画に合致すると説明した。
ポセイドンは22年にフェアファックス・ファイナンシャル・ホールディングス系列、ワシントン・ファミリー、アトラス会長デビッド・ソコル氏、ONEの4者が形成した買収目的会社で、シースパン親会社アトラスを総額109億ドルで買収し非公開化した。金融資本と船社が共同で船主プラットフォームを所有するこの枠組みは、海運の「金融化」を象徴する事例でもある。
シースパンの船隊規模はONE本体に匹敵する。24年6月時点の運航船隊は217隻で、新造船41隻(自動車専用船含む)を加えた総容量は引き渡し完了ベースで230万TEUに達する。ONEの船隊が260隻超・200万TEU超であることを踏まえると、ONEはほぼ自社と同規模の船腹プラットフォームを傘下に収める形になる。
背景には船腹をめぐる争奪戦がある。世界のコンテナ船発注残は921隻・942万TEUに達し、前年比50%増と過去最高を更新した。主要造船所は20年代末まで建造枠が埋まっており、新規の発注枠を確保すること自体が難しい。シースパンは造船所に大量の建造枠を確保しており、この点がONEにとって戦略的価値を持つ。
脱炭素対応もONEが船主を押さえにいく理由の一つだ。メタノールやアンモニアなど新燃料対応船は1隻あたりの建造費が従来船より大幅に高く、船主が投資主体となるケースが増えている。船社単独では調達しきれない脱炭素船腹を、船主プラットフォーム経由で確保する狙いがある。ONEとシースパンは24年11月に船舶管理合弁ワンシー・ソリューションズをシンガポールに設立しており、資本関係と事業連携の両面で一体化が進む。
主要船社の船腹戦略を比較すると、各社のアプローチの違いが鮮明になる。

▲主要コンテナ船社の船腹戦略比較(注)各社の数値は2025年半ば時点の公開データに基づく概数。ONEの発注残はアライアンス経由の共同発注分を含むため単純比較が難しい。シースパンの230万TEUは引き渡し完了ベース(クリックで拡大)
MSCは自社保有船を軸に中古船の大量取得と新造発注で船隊を急拡大し、APモラー・マースクは船隊規模を維持したまま脱炭素船への世代交代を進める。CMA CGMは新造船の大量発注でマースクを抜き世界2位の座を狙う。ONEはこれらと異なり、世界最大のNOOへの資本参加という手法で船腹基盤を固める道を選んだ。コンテナ船社が船主側に資本参加する動きは近年加速しており、「船を運航する会社」と「船を所有する会社」の境界が揺らぎ始めている。
取引の完了は規制当局の承認など通常の条件を前提とする。
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