ロジスティクス極東開発工業と日本トレクスが10日、中東情勢に伴う製品供給への影響を相次いで公表した。3月27日に塗装工程への影響を顧客通知したパブコ、6日に同様の発表をした日本フルハーフに続く動きで、特装車·架装業界で塗装材料不足が広がってきた。ホルムズ海峡の事実上の封鎖を起点に、ナフサ由来の希釈溶剤の供給制限が40日あまりで架装工場に波及した。ダンプ、タンクローリー、トレーラー、ウイング・バンなど主要領域で、生産や納期への影響が意識され始めた。(編集長·赤澤裕介)

影響の開示は単発ではなくなった。3月27日のパブコが塗装工程への影響を顧客通知し、4月6日には日本フルハーフが同様の発表、10日には極東開発工業と日本トレクスが相次いで中東情勢に伴う製品供給への影響を公表した。3月末から4月上旬にかけて点として出てきた開示が、2週間足らずで架装業界の複数社に及んだ。
パブコは3月27日、一部の塗装材料のうち希釈溶剤などの供給が停止していると顧客に通知した。対象製品では塗装工程の実施が困難とし、防錆など機能面で必要な塗装までを施した状態で納車する対応を顧客に提案している。復旧の見通しは現時点で立っていないとしている。極東開発は10日、公式サイトで「中東情勢緊迫化に伴う製品及び部品の供給への影響について」を公表した。業界紙の取材に対しては、塗装材料の調達難を事実と認めたうえで、子会社の日本トレクスを含むグループ全体への影響を精査中としている。日本トレクスも同日、公式サイトで中東情勢緊迫化に伴う製品供給への影響を公表した。極東開発と日本トレクスはいずれも、塗装材料不足の詳細や納期影響の程度には触れていない。
塗装工程は完成車出荷の隠れた律速段階
先行開示したパブコの通知や業界報道を踏まえると、不足の中心は塗料そのものよりも、塗料を希釈するシンナーなどの有機溶剤とみられる。塗装工程は設計から納車までの製造フローの最終局面に位置し、ここが止まると電装·配管·完成検査の後工程が連鎖的に停滞する。架装業界にとって、塗装工程はサプライチェーンの隠れた律速段階となっていた。
川上の塗料メーカー側でも出荷制限の動きが相次いでいる。業界紙の報道によると、日本ペイントは3月19日発注分からシンナー製品を75%値上げした。関西ペイントは4月13日出荷分からシンナー製品を50%以上値上げしたうえで出荷制限を導入し、次回出荷予定が6月下旬と案内される事例も出ているという。業界紙は、仕入れ先から塗料の出荷制限を通達されたケースがあり影響がさらに広がるとの見方を伝えている。架装メーカー各社が同時期に同じ事象に直面したのは、共通する調達先で供給が一斉に細ったためだ。
背景には2月28日に始まった中東軍事衝突とホルムズ海峡の事実上の封鎖がある。日本は原油の94%を中東に依存し、うち9割ほどがホルムズ海峡を通過する。ナフサも輸入量の74%が中東産で、国産ナフサの原料も中東原油が大半を占める。開戦直後から邦船3社を含む主要船社はホルムズ通航を全面停止し、海峡通過船舶数は通常の1割未満に急減した。石油化学産業への波及も早く、3月には国内エチレン設備12基のうち6基が減産に入り、BTX(ベンゼン·トルエン·キシレン)の供給が細った。塗料用シンナーはこのBTXを主原料とする。4月8日にパキスタンの仲介で米イラン停戦が成立したあとも、ホルムズ海峡の通航は本誌確認時点で事実上再開していない。
2026年4月改正と重なる車両供給不足
今回の塗装材料不足は、改正物流効率化法の全面施行(4月1日)と時期が重なる。同法で選任が義務化されたCLO(物流統括管理者)を通じて、荷主と運送事業者はトレーラや連結トラックへの切り替えを含む輸送効率化を進めようとしている。日本トレクスはトレーラー国内首位、極東開発はダンプ・タンクローリー・コンクリートポンプ車などで高いシェアを持ち、パブコと日本フルハーフはウイング・バンの主力だ。これら車種の納期遅延が長引けば、2024年問題への対応として進められてきた車両大型化や更新計画は足元から揺らぐ。制度が輸送効率化を促す局面で、車両供給の遅れへの警戒が強まっている。
制度改正で輸送効率化を促しても、架装工程の停滞で車両供給が細れば現場は動かない。今回の塗装材料不足は、物流改革の前提が、工場の塗装ラインにまで依存していた現実を突きつけた。
この記事をより深く理解するために
–パブコ、原材料ひっ迫で塗装工程に影響(4月7日)
…架装業界で最初に塗装工程への影響を顧客通知した事例。本記事の直接の前報で、希釈溶剤の供給停止の具体像はこの記事で押さえている
–中東情勢で塗装材供給不安、日本フルハーフ(4月6日)
…2社目の開示。親会社系列を越えて同じ事象が広がっていることを示した記事
– 石化プラント減産、物流資材不足が4月迫る(3月9日)
…国内エチレン設備の減産が物流資材不足に波及する構図を早い段階で示した記事。ナフサからBTX、溶剤へと連鎖する起点として参照
– 備蓄放出でも届かないナフサ、21中分類に連鎖(3月27日)
…ナフサ在庫の逼迫が21業種に連鎖する広がりを整理した記事。今回の架装業界は連鎖の到達点の一つとなる
– 四月一日物流改正の全体像(4月1日)
…改正物流効率化法の全面施行とCLO選任義務化の全体像。本記事終盤の「制度は動いたが車両が細る」という論点の背景





























