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地経学時代の物流戦略、供給力強化へAI実装急務

2026年7月8日 (水)

ロジスティクス自由貿易の時代が終わり、国家が経済を武器にする「地経学」の時代へ突入した。ファーストライト・キャピタル(東京都港区)が7日に開催した「地域課題解決DXコンソーシアム」の全体会で、東京大学公共政策大学院教授の鈴木一人氏が、経済安全保障の観点から地域産業の供給網を見直す重要性を力説した。 AI(人工知能)などを活用し、物流などの供給力強化へかじを切る必要があると提唱している。

▲東京大学公共政策大学院の鈴木一人氏

同コンソーシアムがまとめた活動報告書によると、物流業はEC(電子商取引)の拡大で需要が底堅い反面、ドライバーの高齢化や人手不足が深刻化している。 2040年にはドライバーの不足率が24.2%に達し、99万8000人が不足すると予測。 時間外労働の上限規制の適用も重なり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の緊急度は「最高レベル」と結論づけた。

足元では配車や倉庫運営を最適化するプレーヤーが成長している反面、企業間のデータ連携や共同配送など供給網全体を統合する動きは乏しく、DX浸透度は低い水準にとどまるという。

基調講演に臨んだ鈴木氏は、冷戦後に中国やロシアが自由貿易へ編入した結果、価値観の異なる国との間で経済的な相互依存を深める「罠」に陥ったと指摘。相手が経済的な圧力をかけてきた際に抵抗できなくなる事態を危惧し、供給網の脆弱性を克服するため、特定国への依存度を下げる「戦略的自律性」の確保を提唱した。

同時に、日本の中小企業が持つ「匠の技術」を生かし、他国を依存させる「戦略的不可欠性」の構築を訴えた。 下流の組立産業ではなく、上流の素材や工作機械にこそ地経学的なパワーが宿ると見ている。供給網の急所を握れば、小さな力で他国に大きな影響を及ぼすと解説し、ホルムズ海峡封鎖の事例を挙げ、武力で劣る国が経済の要衝を押さえることで大国と対等に渡り合う手法の威力を説明した。 自動車産業のような代替性の高い分野ではなく、純度の高い素材などを生み出す技術こそが日本の強みになるという。

続くパネルディスカッションで、ファーストライト・キャピタル代表の岩澤脩氏が国際経済秩序の今後を問うと、鈴木氏は「トランプ政権が終わっても先10年は変わらない」と断言。 有事のバックアッププランを準備し、経営に地経学のリスクを組み込む必要性を説いた。

▲(左から)ファーストライト・キャピタルの岩澤脩氏、東京大学の鈴木一人氏

質疑応答では、参加したスタートアップ企業からフィジカルAIの社会実装について質問が上がった。 岩澤代表は「2040年の労働力不足を見据え、国の予算動向などを把握してスタートアップが自らの動き方を変えるべきだ」と回答。 地域経済の供給力を維持するため、金融機関とスタートアップが伴走して現場へのDX実装を進めていく姿勢を鮮明にした。(菊地靖)

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