フードコンビニエンスストア大手が、物流効率化の対象を配送そのものから発注、製造へと広げ始めている。ローソンは常温・冷凍商品の納品リードタイムを1日延長し、セブン‐イレブン・ジャパンはおにぎりや弁当などの製造回数を1日3回から2回へ集約する取り組みを広域化した。2つを並べてみると、多頻度小口配送を支えてきた従来のオペレーションそのものに手を入れる動きが浮かび上がる。物流側の改善だけでは吸収しきれなくなった負荷を、発注や製造まで遡って再設計する流れは、コンビニ以外のチェーン小売りや外食にも広がる可能性がある。(編集委員・刈屋大輔)
ローソンが見直したのは「発注」である。9月から11月にかけて、常温・冷凍商品の発注から納品までの期間を全国で1日延長する。配送計画に余裕を持たせることで積載効率を高め、輸送に必要なトラックを月間120台削減する狙いだ。
一方、セブン‐イレブンが踏み込んだのは、さらに上流の「製造」である。北海道で先行していた、おにぎり、弁当、サンドイッチの製造回数を1日3回から2回へ減らす取り組みを、9月から東北、四国、千葉県の一部に広げた。店舗への総配送回数は減らさず、製造段階を集約することで工場と輸送の負荷を抑える。
両社の施策は一見異なる。しかし共通しているのは、トラックの使い方だけを変えるのではなく、トラックを動かす前段階の条件そのものを変えている点だ。
配送改善だけでは足りない
コンビニ物流ではこれまで、配送便数の削減、配送ルートの最適化、物流センターの集約、共同配送、AI(人工知能)による配車効率化など、物流工程そのものを対象とした改善が積み重ねられてきた。

(出所:ローソン)
ローソンはすでに全国のチルド・定温便を3便から2便へ移行しているほか、配送ダイヤの最適化や物流センターの移転・統合、他社とのトラックシェアリングなどを進めてきた。ファミリーマートも東北・新潟で、おむすびや弁当を配送する定温便を1日3便から2便へ変更している。
こうした取り組みは今後も続くだろうが、配送だけを磨き込むことで得られる改善余地は次第に狭まりつつある。
1日に何度も商品を届けるという前提、発注から短時間で納品するという前提、鮮度を保つために高頻度で製造するという前提が変わらなければ、物流側が吸収できる負荷にも限度がある。ここにきて大手各社が動かし始めたのは、その「前提」の部分だ。
ローソンは、店舗から物流センターへ発注するタイミングを変えた。セブン‐イレブンは、工場で商品を作る回数を変えた。ファミリーマートは、店舗へ届ける便数を変えている。
製造、発注、配送というサプライチェーンの異なる工程を各社がそれぞれ動かし始めたことに、今回の変化の意味がある。
「鮮度」と「即納」に手を付ける
もっとも、発注や製造は簡単に変えられる領域ではない。
コンビニの競争力は、欲しい商品が店舗にあり、新しい商品が短いサイクルで補充されることによって支えられてきた。とりわけ弁当やおにぎり、総菜などでは「作りたて」「鮮度」が商品価値そのものでもある。
セブン‐イレブンが製造回数の削減に踏み切れた背景には、産学連携による衛生管理技術がある。原因菌や汚染経路を特定し、製造時の衛生水準を高めることで品質を維持できる期間を延ばした。単純に製造回数を減らしたのではなく、従来の品質を維持したまま製造条件を変えるための技術基盤を先に整えた格好だ。
技術があったから製造回数を減らせたというより、製造という従来動かしにくかった領域に踏み込むために技術武装した、と見ることもできよう。
ローソンも同様だ。発注リードタイムを延ばせば、物流センターでは複数店舗分の荷物をまとめ、配送ルートや車両手配を組み直す余地が広がる。一方で店舗は、これまでより先の需要を見込んで発注しなければならない。
今回対象としたのが、賞味期限や消費期限が比較的長い常温・冷凍商品なのは偶然ではない。弁当や総菜のように当日の需要変動への即応性が求められる商品よりも、需要予測に基づく計画発注へ移行しやすい領域から着手したとみるのが自然だろう。
物流効率化のためにサービス水準を一律に下げるのではなく、商品特性や技術を使って「変えられる部分」を探している。
▲コンビニ3社、物流効率化で見直した工程
多頻度小口配送の前提を問う
コンビニ各社の動きを突き詰めれば、多頻度小口配送という業態の前提をどこまで維持するのか、という問題に行き着く。
店舗側から見れば、必要な商品を必要な時に少量ずつ補充できることには大きな利点がある。在庫を抱えず、売れ行きの変化にも対応しやすい。一方、その利便性を物流側から見れば、少量の商品を高頻度で運び続ける必要があり、車両やドライバーへの負荷は高まる。
これまでは、物流事業者や物流センター側の効率化によって、その両立を図ってきた。しかしドライバー不足や2024年問題による輸送力制約が強まるなか、その構図そのものが維持しにくくなっている。
4月に全面施行された改正物流効率化法が荷主側にも物流効率化を求めていることも、大手小売りにとっては無視できない。物流事業者に効率化を求めるだけではなく、自らの発注方法や店舗運営、製造計画を変えることが問われる局面に入ったといえる。
ローソンの発注改革も、セブン‐イレブンの製造回数見直しも、その文脈上にある。
次はチェーン小売全体か
こうした再設計は、コンビニだけの特殊事情とは限らない。
ドラッグストア、スーパーマーケット、ホームセンター、外食チェーンなど、多店舗展開する事業者は共通して、店舗ごとの在庫を抑えながら商品を高頻度で供給する仕組みを構築してきた。その裏側では、物流センターや配送車両、製造拠点が細かな需要変動を吸収している。
これまで成立してきた仕組みでも、人手不足や輸送力制約が強まれば最適解は変わる。
配送回数を減らすだけではなく、発注締め時間を早める、納品までの時間を長くする、製造ロットをまとめる、商品の賞味・消費期限を延ばす。これまで店舗サービスや商品政策として扱われてきた要素を、物流効率と一体で考える必要が強まっていくだろう。
もちろん、物流を楽にするために店舗の欠品が増えたり、食品ロスが拡大したりすれば本末転倒だ。ローソンの施策では、積載効率向上と店舗側の需要予測精度をどう両立させるかが問われる。セブン‐イレブンでは、製造回数を減らしながら鮮度や品揃えを維持できるかが焦点になる。
それでも、大手コンビニが相次いで発注や製造という従来動かしにくかった領域へ踏み込んだ意味は小さくない。
物流の効率化を「物流部門だけの仕事」と捉える時代から、商品設計、製造、発注、店舗運営まで含めてサプライチェーン全体を組み替える時代へ。セブン‐イレブンとローソンの動きは、その転換点を映しているのではないだろうか。
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