ロジスティクス物流DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるための技術やソリューションは充実してきた。しかし、現場では「何を導入するか」という手段が先行し、「なぜ改革が必要なのか」という目的が十分に共有されていない――。
28日から30日までの3日間にわたり、本誌LOGISTICS TODAYが「物流DXウィーク」としてオンライン配信している「第4回物流DX会議2026」。29日公開の特別セッションには、国土交通省関東運輸局茨城運輸支局長で、前トラック・物流Gメン統括の田中幸久氏が登壇した。本誌の赤澤裕介編集長が進行を務め、物流関連法制度の最新動向を踏まえながら、荷主企業に求められる現場改革のあり方を議論した。

▲国交省 田中氏
田中氏は、物流改革の本来の目的について、ドライバー不足への対応と、担い手が減少しても物流を維持できる仕組みを構築することだと説明。個別の効率化策を導入する前に、この目的を経営層から現場まで共有する必要性を強調した。
荷待ち解消へ、従来の「当たり前」を見直す
田中氏が物流現場の改善で優先すべき課題として挙げたのが、荷待ち時間の削減だ。
現場のドライバーから寄せられる不満では荷待ちが大きな割合を占める一方、荷主側には改善の必要性を理解していても、何を変えればよいかわからない、自社の都合を変えられないといった事情がある。物流事業者への早期の情報提供や、納品リードタイムの緩和なども有効な解決策であり、物流事業者が事前に運行計画やドライバーの手配を行いやすくし、荷主も調整した納品時間を守ることで、輸送と荷役の効率化につなげられると呼びかけた。
例えば、営業部門が取引先に「朝一番の納品」を約束しても、物流センターでは前日からの滞留貨物の処理などで混雑する時間帯と重なる場合がある。結果として荷待ちが発生し、場合によっては貨物を持ち帰らなければならない。
こうした問題は、物流部門だけでは解決できない。営業や調達などの部門を横断して物流を管理する体制、CLO(物流統括管理者)のリーダーシップが必要になる。
田中氏は、従来の業務を前提に部分的な効率化を進めるだけでは限界があると指摘し、関係者が連携して、これまで当然と考えてきた業務や商慣行そのものを見直すよう促した。
輸送力には限界がある、その現実を可視化
もう一つの重要な論点が、物流に利用できる輸送力の把握だ。
田中氏は、トラックドライバーが年間に運転できる時間には制約があるにもかかわらず、荷主側では必要な時に必要なだけ輸送力を確保できることを前提に、生産や販売の計画を立ててきた面があると指摘した。
特に多重下請け構造では、複数の荷主や元請け事業者が同じ協力会社の輸送力をそれぞれ見込むことで、実際に利用できる輸送余力が把握しにくくなる。
この問題に対して田中氏は、運送契約の書面化や実運送体制管理簿の活用を通じ、誰が、どの程度の輸送を担っているのかを把握することの重要性を説明。大量の契約や輸送情報を管理するうえでは、物流DX会議の主軸であるシステムベンダーの技術が大きな役割を果たすとの期待も示した。
物流DXは、単なる業務の省力化にとどまらず、限られた輸送力を可視化し、荷主と物流事業者が共通の情報に基づいて計画を立てるための基盤にもなる。
Gメンの役割は取り締まりだけではない
田中氏は、10-11月の荷主集中監視月間におけるトラック・物流Gメンの活動にも言及した。
無償の荷役作業など従来から問題視されてきた商慣行に加え、取引上の不適切な行為などについても、関係行政機関が連携して指導に取り組んでいると説明した。
一方、Gメンの役割は、違反行為を取り締まることだけではないと強調する。物流事業者と荷主の間に入り、それぞれの声を相手に届け、取引関係の改善を促すことも重要な役割だという。
さらに、制度化に向けた検討が進む「適正原価」へと話題は広がる。議論が重ねられている状況を踏まえ、制度の詳細が固まるのを待つのではなく、荷主と物流事業者が今から協議を進める必要性を指摘。議論はまだ途中であることを踏まえつつ、負担を公平に分担し、必要な物流コストを商品価格にも適切に反映し、社会全体で支える仕組みをどう考えるべきかについて意見が交わされた。
物流センターの運営費用を納入業者などが負担するセンターフィーなど、物流に必要な費用は、どの事業者が負担するにせよ、サプライチェーン全体で発生していることに変わりはない。田中氏は、こうしたコストの負担構造も踏まえ、労働者の賃金や設備投資に必要な原資を確保できる仕組みを考える必要性を示唆した。
また、10月末に提出期限を迎える特定荷主などによる初回の中長期計画については、最初から完成度の高い計画を求めるよりも、物流事業者と協議しながら内容を見直し、実効性のあるものへと発展させることが重要だとの考えを示した。
物流DXの手段が多様化するいま、求められるのは技術の導入そのものではなく、限られた輸送力をどう維持し、有効に活用するかという目的の共有である。それには、荷主と物流事業者が従来の商慣行を見直し、改革を実行に移す必要性を改めて示した。

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