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商用ICカード規格で動作する温度センシングデジタル回路を実現

NEDO、温度検知機能つき物流管理タグの商品化前進

2016年1月26日 (火)

サービス・商品新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、プロジェクトに参画する8者とともに、印刷で製造可能な有機半導体デジタル回路の高速化に成功し、世界で初めて商用ICカード規格で動作する温度センシングデジタル回路を実現した。

開発した温度センシングデジタル回路の速度は、近距離無線通信の国際標準規格「NFC」に準拠し、「低コストな温度センサ機能つきプラスチック電子タグとして、物流管理やヘルスケアなど広範な用途への商品化に大きく前進した」。

(出所:新エネルギー・産業技術総合開発機構)

(出所:新エネルギー・産業技術総合開発機構)

有機半導体は、塗布法・印刷法などの簡便で比較的低温での作製が容易、薄型、低コスト、プラスチックRFIDタグやフレキシブルディスプレイなどのユニークな用途が期待できる――といった特徴があり、次世代トランジスタなどエレクトロニクス素子への応用開発研究が盛んに行われているが、実際に商用周波数でRFIDタグと通信する高速応答性能を実現するのが困難だという課題を抱えていた。

そこで、NEDOはコア技術開発を行う研究機関とそれぞれが異業種に属する企業グループによる産学連携チームを構築し、有機半導体による革新的プラスチックRFIDタグの研究開発を組織的に推進。

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▲新規に開発した26.5kHzで動作する有機デジタル温度センサ回路

このうち、トッパン・フォームズ、富士フイルム、パイクリスタルなどのグループが、印刷で製造可能な有機半導体デジタル回路の高速化に成功し、商用ICカード規格の26.5kHzで動作するフィルム上の温度センシング電子回路を世界で初めて実現した。

具体的には、有機半導体を塗布し結晶化させる技術を基に、高速応答用に設計されたチャネル長5マイクロメートルの有機CMOS回路を集積化し、従来のスピードを1桁上回る世界最高速のDFF回路によるデジタル情報処理を実現。

得られたデジタルデータを、13.56MHzの商用周波数で信号伝送することにも成功し、開発した有機半導体電子回路が、スマートフォンや交通機関用ICカードで一般的なNFC規格に準拠できることを実証した。

独自開発した塗布して作れる有機デジタル温度センサと組み合わせ、従来の塗布型有機半導体よりも、10倍以上高い性能で、10分の1以下の低コスト化が可能な印刷法で形成できるため、プロジェクトが目標としている「温度検知機能つき物流管理タグ」の商品化に大きく前進した。

今後は、NEDOプロジェクトで開発を進めている温度センサを搭載した物流管理用RFIDタグの試作を進め、実用化への研究開発を加速する。

また、東京大学内に組織した有機材料開発からパネル部材、装置開発、デバイス開発を行う企業とのコンソーシアム「ハイエンド有機半導体研究開発・研修センター」では、RFIDタグに限らず、高速動作の有機エレクトロニクスデバイスの開発を広範に目指す。

■NEDOプロジェクト参画企業・団体
新エネルギー・産業技術総合開発機構
トッパン・フォームズ
富士フイルム
大阪府立産業技術総合研究所
JNC
デンソー
田中貴金属工業
日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース
パイクリスタル