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「保管料商売はやめました」第3回コラム連載

2020年11月30日 (月)

話題立替運賃と同様に保管料も中抜き商売の典型。もしもまだ旧態依然のまま「いくらかの差益をのせて請求」を続けているのなら、早々に更改か撤退する準備をすべきだ。もちろん、床や運賃を仕入れて再販する営業倉庫や運送事業者に限った話なのだが、該当する企業は業界の大多数と思われる。

「保管料商売はやめました」第2回コラム連載(https://www.logi-today.com/408869

第3章- 中抜き商売の終わり

■ 原価呈示と手数料

(イメージ画像)

営業倉庫と荷主であるEC事業者を例として挙げればわかりやすいと思うが、運賃請求の最善方法は「運賃原価開示のうえ、個配会社からの請求実費+立替事務手数料」である。または運賃契約を荷主と個配会社の直接契約にして、その項目自体を請求から消してしまうことも有効策だ。個人的にはこの選択肢を推す。

これに準じて保管料請求を行うとしたらどのようになるのだろう。
同一拠点内の荷主には同一原価の開示と保管手数料の名目で坪単位での単価設定が可能となる。しかし複数拠点運営の営業倉庫会社なら拠点間の原価格差が発生する。これも運賃請求にかつて存在した拠点間格差と同じだ。

運賃問題については、「一荷主一契約」が個配大手によって徹底され、荷主コードに紐づいた運賃タリフが寄託先と地域の別を問わずに貫徹されるようになったことで解消した。多少のイレギュラーはあっても、今も原則はそうなっているはずだ。寡占状態の個配市場だからこそできたのだともいえるが、明朗化・標準化には絶大な効果があった。

■ 請求作法の分かれ道

保管料原価の開示にあたって、まず内部で行うべきは以下の選択だ。

(1)顧客向け開示原価の全拠点統一化、つまり営業原価の設定を行う
(2)拠点ごとの倉庫仕入原価はあって然りゆえ、そのまま開示して手数料は統一する

営業原価の統一は管理会計上好都合だ。しかし顧客側の視点からすれば、その拠点の実単価よりも割安だったり割高だったりする凸凹を受容しなければならない。「割高組の不評を買うぐらいなら、ややこしい仕組みは止めて、従来通りの『保管料単価』を見積もる方法に戻したほうがよい」という意見も必ず出るに違いない。

正解を判定することは誰にもできないのだから、「今までどおり」と「新しい仕組み」のいずれを採るかは各社経営の意志決定に拠るしかない。

■ 大きな流れとしては

読者諸氏も漠然と感じているかもしれないが、流れとしては「原価開示+保管手数料」の方が荷主への提案としては明快で、営業的には強くなりそうだ。なぜなら、手数料の高い安いは問われても、床原価についてはもはや交渉の具となりようがないからだ。

にもかかわらず、そこに断固こだわって交渉を続けるというのであれば、主要項目たる荷役をはじめとする倉庫側の提案に全く付加価値を感じていないことになる。それは、先が知れている関係の始まりにしかならない。だとしたら、そもそも組み合わせとして無理があるのだろうと判じてしかりではないだろうか。

■ 技術で勝負

(イメージ画像)

倉庫会社は荷役技術同様に、保管単価ではなく保管技術で勝負すべきだ。第三者の影響を多大に被る立替運賃や、仕入れた床の再販単価などの説明でつまずくことは、業務フロー説明という正念場の手前で足踏みしたまま、無益な摩擦や混乱の果てに、関与者全員がいたずらに消耗する結果しか生まないだろう。そんな事態は本末転倒はなはだしく、お粗末に過ぎる。

運賃や保管料に多少の不満は残っても、総額の及第と、荷役業務フローの提案に魅力を感じているなら、荷主は必ず折り合ってくれる。始まりの時にその落としどころが見いだせないのなら、取り引き自体を見送ったほうがお互いのためなのではないかと思うばかりだ。自身の経験を踏まえ、「同じ轍(てつ)を踏む担当者が減るように」という思いで書いている。

―第4回(12月7日公開予定)に続く


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■連載
コハイのあした(連載9回)
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