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薄さで勝算見えた、シンテックホズミの物流ロボ

2021年12月6日 (月)

話題先日、物流倉庫で活躍するAMR(自律走行ロボット)の開発を手がけ、東京都に本社を構えるメーカーの営業と情報交換をする機会に恵まれた。同社は先日、ロボット本体の価格を期間限定で大幅にディスカウントすることを発表し、話題を呼んだ。

「思い切りましたね!?」──筆者の問いに、営業担当者は苦笑しながら答えた。
「あれね…客寄せパンダなんですよ」

営業担当者いわく、確かにAMRやAGV(無人搬送車)は話題になっているし、興味を持つ物流関係者も多いが、実際の価格を知る人は少ない。だから、値下げ後の価格そのものに営業的なアピール力は乏しい。では、同社が大幅な値下げを発表したのはなぜか。

興味・関心を集めることが目的なのだ。

冒頭の営業マンは「興味はあるけど、ロボットを本気で検討していない人たちに、どうやってアピールするのかが、私どもが抱えている課題です」と、言葉を続けた。

こうした課題を抱えるロボット会社は少なくないが、そこに明確な回答を持つのがシンテックホズミ(愛知県みよし市)である。本題に入ろう。

倉庫ロボット普及へ「越えなければならないハードル」は

革新的なサービスや製品が社会に普及するには、普及へのハードルを超えなければならない。現在、自動倉庫や搬送ロボット、ピッキングロボットなど、倉庫業務に使用されるロボットを利用しているのは、アーリーアダプター(製品、技術を早期に導入する初期の顧客)の一部が中心だと考えられる。

では、倉庫ロボットにおける「超えなければならないハードル」の正体は何か。

価格もその候補ではある。だが先のエピソードの通り、ロボットの価格を漫然と「きっと高いだろうな…」くらいにしか思っていない人が多い現状では、価格をハードルの正体と断定するのは早計だろう。筆者は、「ロボットは、本当に役立つのか」という、根源的な疑問こそが、越えなければならないハードルの正体だと考えている。

「とりあえずロボット導入」は、失敗の元

冒頭の営業マンの会社ではないが、ロボットを活用した自動化を目指す企業とのやりとりに関して、愛知県みよし市の搬送システム開発会社「シンテックホズミ」の物流向けソリューションのキーマンから、興味深い話を聞くことができたので、ここに紹介したい。

▲シンテックホズミSmr物流ソリューション事業部の金本英之統括部長

同社Smr物流ソリューション事業部の金本英之統括部長によると、「会社の上層部から『自動化を推進してほしい』『ロボットを導入しよう』といわれて、そのまま当社に相談されるケースが増えてきた。とりあえずロボットを導入したいというわけだが、結果として導入に失敗することも少なくないため、当社から別の提案をすることもある」のだという。どういうことか。

金本氏は「顧客の倉庫内業務を検証した結果、搬送ロボットを導入せず、工程の見直しだけで倉庫内業務の改善を実現した事例もある」と打ち明ける。

なるほど、自動化やロボット導入は手段であって目的ではない。本来の目的は、倉庫内業務の改善であり、シンテックホズミにおける搬送ロボットとは「倉庫内業務の改善を実現するためのツールの一つ」(金本氏)なのだ。

ここまで聞いて、シンテックホズミの事業に俄然、興味がわいてきた。「現場の改善」に相当な実績と自信がなければ、売り物であるロボットの導入抜きに、工程の見直しだけを提案するとは思えないからだ。

では、数多くの改善要求に応えてきた同社が、顧客の本来の目的を達成するために開発したという搬送ロボットは、他のロボットと何が違うのか。

その答えは「薄さ」である。

競合他社にはない、圧倒的な「薄さ」こそ、シンテックホズミが導き出した「本当に役に立つ」搬送ロボットの答えである。開発を担当する搬送システム事業部の角田功事業部長は、「これまでも製造・物流現場のニーズに応える形でさまざまなタイプの搬送ロボットを開発してきたが、とにかく薄さにこだわって開発したのが『NEXT(ネクスト)』シリーズだ」と話す。

「薄くて力持ちは正義だ」というキャッチコピーで注目されるシンテックホズミのNEXTシリーズ「NN-470」の高さは、わずか136ミリ。現場改善のプロフェッショナルは、どうしてここまで「薄さ」を追求したのか。

シンテックホズミの搬送ロボットが「薄さ」にこだわる理由

まずは「NN-470」が稼働する様子を見てほしい。「NN-470」がカゴ台車の下に潜り込み、台車に積まれた荷物を搬送する。

搬送ロボットの多くは、ロボットに適合する専用棚や台車・カゴ台車を必要とする。だが、現場では既に多数の台車が使用されており、搬送ロボットを導入するために専用棚を購入したり、適合する台車を買い換えたりすると、追加のコストがかかる。また、店舗・工場配送などの現場では、荷主指定のカゴ台車を使用するケースがほとんどで、勝手に台車を変更したり、カゴ台車を改造したりすることが許されないケースも多い。

そこでシンテックホズミは、製造・物流現場で使用される多種多様な台車を用いて製品テストを実施。よほど特殊な台車でない限り、どんな台車でも下に潜り込んで持ち上げられるよう、NEXTシリーズの改善を重ねた。6輪台車など、構造上どうしても潜り込めない場合には、アタッチメントを用いてけん引することも可能だという。

金本氏は「既存の台車をそのまま使えるメリットは大きい。専用棚やロボットに適合する台車への変更にかかるコストを抑えられるだけでなく、台車の変更に伴う前後工程の見直しも軽減できるため、スムーズにロボットを導入できる」と、薄さがもたらすメリットを説明する。

▲台車の買い替えや改造を必要とする搬送ロボットの投資総額に比べ、NEXTシリーズは2割〜3割ほどコストを抑えられる(出所:シンテックホズミ)

では、コンパクトな設計の犠牲になりやすい、搬送能力や運動性能についてはどうか。高さ136ミリの「NN-470」では最大400キロ、高さ155ミリの「NN-1100」では最大1000キロの貨物を搬送できるという。物流現場で使用するには十分といえる可搬重量だ。台車の向きにかかわらず、レーザースキャナーでセンタリングしてから持ち上げるため、搬送中の台車のグラつきを抑え、安定した自動搬送を実現する。

▲搬送システム事業部の角田功事業部長

また、無停止で進行方向を変えたり、横方向へのスライド移動も可能としているため、「ロボットの可動率(動くべき時に可動する割合)は、ほぼ100%をマーク」(角田氏)しており、倉庫内のように旋回スペースが限られた場所でも効率的な搬送を実現するという。

「きょうはロボットの機嫌が悪くてさぁ」──競合の搬送ロボットの中には、故障といわないまでも、搬送プログラムの不具合でたびたび停止を余儀なくされることも多いと聞く。ロボットの機嫌伺いをしなければならないようでは、倉庫内業務の省力化や生産性向上は望めない。

同社の搬送ロボットが、信頼・性能・コストといった顧客の基本要求にこだわっているのは、その生まれに所以する。

世界最高水準の自動車生産ラインを支えた技術とノウハウ

同社は長年にわたり、大手自動車メーカーの生産ラインを支えてきた。工場内における製造過程で必ず生じる部品搬送の自動化を実現するため、同社の搬送ロボットが活躍を始めたのが2004年のこと。シンテックホズミの搬送ロボットは、世界最高水準の品質が求められる自動車生産現場から生まれたのだ。

同社が大手自動車メーカーの製造現場で磨いたのは、搬送ロボットの品質や技術だけではない。実は同社では、自動車工場内における工程整備も請け負っている。

▲オペレーションプラットフォーム開発室の長谷川典昭室長

「ロボット導入の価値を最大化するためには、ロボットを効率的に動かすためのレイアウトを提案する必要がある」──同社オペレーションプラットフォーム開発室の長谷川典昭室長が語る。

その上で、誰もが気軽に触れられるような使いやすさ、ディスプレイ表示のわかりやすさがないと、現場での導入と活用は進まないのだという。顧客の現場に足を運び、現場の方に搬送ロボットの利便性を納得してもらいながら、改善提案を行う。搬送ロボットは、人と協働することで真価を発揮するものだ。現場の同意と納得がなければ、ロボット導入の成功はおぼつかない。

同社が自動車製造の現場で培ったノウハウは、工程をシンプルにし、移動導線をなるべく短くすることを目的とする。繰り返すが、ロボット導入は手段であって、目的ではない。だから同社は、搬送ロボットのメーカーでありながら、時として顧客にとっての最善の改善を実現するため、ロボットを導入しないことがあるのだ。

こうした同社の考え方や技術力を評価した日本ロジステック(東京都千代田区)も、大手通信事業者から請け負う携帯端末の物流現場に採用を決めた。この現場では、シンテックホズミが提案した庫内レイアウトの見直しで30%の省人化に成功し、搬送ロボットの導入で最終的に70%の省人化を実現。処理能力は従来の3.3倍にまで引き上げられたという。シンテックホズミはロボット単体売りではなくシステムまで面倒を見る、いいかえればシステム開発を別で用意する必要のない導入サポート体制も決め手となったに違いない。

■日本ロジステックの導入事例

ロボットの価値とは

搬送ロボットに限ったことではないが、導入に否定的な面々がその理由として「だって、すべてロボットができるわけじゃないんだろう」と主張する場面に出くわすケースがある。

当たり前である。なにせ、人が一人も働いていないような全自動の工場や倉庫など、まだ世界でも数えるほどしか実現していないではないか。

ここで取材中に、金本氏から発せられた「物を思い通りに動かすことで得られる価値は大きいが、さらに付加価値を高めていく努力が不可欠だ」という言葉を思い出した。

同社は、搬送ロボットを通じて、物を動かす以上の価値、すなわち倉庫内業務の改善や省力化、生産性向上を実現してきた実績と自信があるということなのだ。

ロボットは、人と協働して、初めてその価値と性能を存分に発揮する。「ロボットは、本当に役立つのか」と思っている人にこそ、ぜひシンテックホズミに相談してほしい。なぜならば、同社にはその疑問に応えるスペックを備えた搬送ロボットと、ノウハウが存在するからである。

問い合わせ
企業HP:https://www.shcl.co.jp
TEL:0561-35-5741(平日9時〜17時)
メール:press@shcl.co.jp
展示会出展
展示会:「スマート工場EXPO」
会場:東京ビッグサイト
会期:2022年1月19日(水)〜21日(金)
詳細・申込み:https://www.sma-fac.jp/ja-jp.html

■物流ロボット特集