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トップは自動棚搬送ロボ「EVE」、関心度ランキング

2021年12月23日 (木)

話題LOGISTICS TODAY編集部が、12月3日から8日にかけて物流企業や荷主企業を中心とする読者に対して実施した物流向けロボットに関する実態ニーズ調査(有効回答数902件、回答率29.1%)では、主要な46件のロボットサービスや提供企業を抽出。関心度をヒアリングしてランキングでまとめた。ロボットの機能面や導入実績もさることながら、他機能との連携やサービス活用に要する費用など、さまざまな指標が関心の有無を判断する材料になっているようだ。

前回は、物流向けロボットの導入に対する考え方や期待する機能について分析した。人手不足への対応策として普及が進んでいるものの、初期投資や維持管理コストの高さから導入に消極的な企業も依然として多いことが分かった。物流業界における本格的なロボットの定着には、さらなる低価格化や導入効果の明確化が求められそうだ。

とはいえ、物流現場における業務効率化を推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)化を象徴する取り組みとして、物流現場におけるロボティクス化に高い注目が集まっているのは間違いない。こうした動きを受けて、電機やITシステム機器などのメーカーを中心に、物流向けロボット市場に参入する企業が相次いでいる。物流現場はこうした企業にとってビジネスチャンスの「宝の山」と映っているようだ。

関心度トップはギークプラスの「EVE」

今回の調査では、こうした物流向けロボットサービスの関心度を聞いた。ロボットの機器やサービスの名称、物流ロボティクスを手がける企業名を示して、関心の有無について回答を求めた。

トップはGeek+(ギークプラス、東京都渋谷区)の自動棚搬送ロボット「EVE」(イブ)。回答者全体の44.2%が「関心がある」と回答し、注目度の高さを示した。

EVEシリーズは、富士経済の「2022年版 次世代物流ビジネス・システムの実態と将来展望」調査で、20年の市場占有率が76.9%を記録し3年連続でシェアトップを獲得。ギークプラスはEVEシリーズをナイキや大和ハウス工業、トヨタ自動車などを提供し、現場における業務効率化に貢献するなど、存在感を急速に高めている。

▲自動棚搬送ロボット「EVE」(出所:ギークプラス)

ギークプラスは、自動棚搬送ロボットで圧倒的な強みを持つ。現場の作業量に応じて利用料金を徴収する「ロボット従量課金サービス」を22年4月に開始。初期費用ゼロでロボットサービスを提供する画期的な取り組みは、物流業界のみならずロボット開発を手がけるメーカーに大きな衝撃を与えている。ロボットの導入を検討する企業にとっては、従来のロボット購入と比べて投資リスクが大きく下がるとともに、取扱商品や作業数量の変更など物流倉庫における環境変化への柔軟な対応も可能になるからだ。

安定した関心度を示したAutoStoreとMujin

(出所:オートストア)

EVEに次いで高い関心を集めたAutoStore(オートストア)は、専用コンテナを高密度に収納し、ロボットがコンテナの出し入れを行う自動倉庫型ピッキングシステム。ノルウェーで誕生し、国内ではオカムラが正規販売店として市場に展開している。

「スペースの再定義」をキャッチフレーズに、高い収納効率を生かして特に多品種少量のロングテール商品を扱う通信販売業界の物流拠点や、メーカーの保守部品サービスセンターなどに最適なロボットストレージシステムとして、世界中で活躍。国内でも物流改善ニーズに対応したロボットサービスとして広く知られる存在になった。

(出所:Mujin)

さらに、今回の関心度ランキングで3位となる35.8%の関心を集めたMujin(ムジン、東京都江東区)は、ロボットではなくロボットコントローラーの開発を手がける。いわばロボットの「知能」だ。

例えば、工場や物流センターなどで導入される産業用のアーム型ロボットは、ロボットアームとコントローラーで構成される。ロボットを制御する役割を果たすコントローラーに搭載される「モーションプランニング」技術を産業用ロボットで初めて実用化に成功したのがMujinだ。対象物を3次元センサーで認識し、それを取りに行く動作を自ら考えることで、人間がロボットに教える作業をなくした。現場でのロボットの導入スピードを速めることができるのが利点だ。

ラピュタ PA-AMRの際立つ「初期導入支援プログラム」

▲PEER(出所:GROUND)

GROUND(グラウンド、東京都江東区)のAMR(自律走行搬送ロボット)「PEER」(ピア)は、33.4%の回答を集めて4位にランクイン。国内で初めて物流・EC(電子商取引)の現場に導入されたAMRとして知られている。

先端のSLAM技術(センサーで周囲環境を把握し地図を創生しながら取得データをもとにロボットの自身の位置も推定する技術)とカメラ・レーザーの連携により、ロボット自身がリアルタイムに位置情報を取得し物理的なレイアウトへのマッピングが可能なのが特徴。経路情報を設定することなく自律走行できるため、経路上の障害物を回避して最適な経路を選べる。物流施設内の作業オペレーションやレイアウトの大幅な変更をすることなくスピーディーな導入が可能なほか、直観的で分かりやすい操作性にこだわり作業者への教育を最小限にすることができる仕様としている。

▲ラピュタ PA-AMR(出所:ラピュタロボティクス)

回答率27.3%で5位に入ったのが、ラピュタロボティクス(東京都江東区)の協働型ピッキング支援ロボット「ラピュタ PA-AMR」。国内で初めて商用化されたAMR型ピッキングロボットとして知名度も高い。倉庫の自動化に興味があるにもかかわらず費用面の懸念から投資に踏み出せない事業者に向けて、ラピュタ PA-AMRの「初期費用無料プログラム」の提供を開始し、話題を集めた。

ことし10月には、ラピュタ PA-AMRを活用して出荷した商品ユニット数が、20年7月の提供開始からの累計で200万ピースを突破。国内の物流現場で着実に普及していることを裏付けた。日本通運やSGホールディングスグループの佐川グローバルロジスティクス(東京都品川区)など幅広い導入実績で、ラピュタロボティクスの物流向けロボット業界における存在感を高めている。

ロボットに求められる「初期導入のしやすさ」

高い関心度を示した物流向けロボットサービスに共通するのは、「初期導入のしやすさ」と「現場ニーズに即した機能性」だ。

物流現場における業務効率化は、持続可能な社会を構築するうえで不可欠なインフラを支えるための喫緊の課題として、業界を超えて広く受け止められている。しかしながら、その課題解決に必要な取り組みとして注目を集める、物流DX化の代表格であるロボットは、その機能開発が進む一方で、コスト面や費用対効果への懸念の払拭には至らず、結果として業界全体への普及は道半ばの印象だ。

ロボット開発事業者は、初期導入障壁の低減化に着目。その壁を取り払うことで、普及を一気に進める戦略を掲げている。ギークプラスやラピュタロボティクスの取り組みはその好例だ。

こうした企業があえて収益獲得の機会を投げ打ってまで、初期導入の壁を取り払う取り組みに注力するのか。それは、ロボットの普及によって物流サービスの課題解決が促進されることで、国内の物流業界がより収益力の高いビジネスモデルを構築できるようになるからだ。その結果、ロボット開発企業も収益を得る機会がより高まり、現場ニーズに即したさらなる高性能な技術を創出できるようになる。つまり「正」のサイクルを作り出すことができるのだ。

アフターコロナの「新しい生活様式」が、物流業界にさらなる変革を迫ることは確実だ。人手不足に代表される物流現場の課題は、さらに深刻化する可能性が高い。その救世主になりうるロボットが、物流企業にとって「機能は素晴らしけど、高すぎて使えない」ものであるならば、あまりにももったいない。物流業界が社会のインフラとしての使命を果たす能力を喪失してしまうことにもなりかねない。

ロボット開発企業には、さらなる導入促進サービスの向上を、そして物流企業も長期視点に立った投資デザインを描くことで、現場業務の効率化を加速する必要があるだろう。ロボットの普及が進めば進むほど、投資効果が高まるだけでなくコスト面の懸念も緩和されていくはずだからだ。

■関心度ランキング(11位~40位)

■物流ロボット特集