
話題日本経済は物流が支え、その物流の大部分をトラックが支え、トラックは人間が運転することによって初めて機能するものーーという裏テーマを設定し、人気トラックYouTuberかなちゃんにLOGISTICS TODAY記者が密着同行取材。「人間が支えるトラック輸送」に迫る連載です。
暮れなずんでいく富士山がなんだか切ない土曜の東名高速道路下りの足柄サービスエリアの駐車場。平日はずらっと休憩中の大型トラックが並ぶ光景が、うそみたいに静かだ。
そこに停まった一台の運転席でたこ焼きをほおばり始めたのは、ドライバーかなちゃん(23)だ。
「いっただっきまーす」
「このぬるさがいいんだよね。やけどしない」
「かなは、外がカリッカリのやつより、こういうやわらかいのが好き」
週末限定のごほうびだという、たこ焼きタイムだ。
身長146センチという思ったよりも小柄なかなちゃん。
へへっと笑いながら、少しだけハスキーがかったかわいらしい声で、ゴープロ(小型ビデオカメラ)ごしのドライバーたちと一緒に休憩時間を過ごしていた。
美容専門学校を卒業し、エステティシャンの資格をとったものの、引っ越し屋のバイトで初めて乗った大型トラックから見た景色に感動したことが忘れられず、20歳のとき悩んだ末、トラック運転手になることを決意。
3か月前からは、憧れの10トントラックデビューを果たした。
高校生のときから日常的につぶやいていたTwitterのアカウントで、トラックドライバーの日常を写真や動画付きで何気なくつぶやいてみた。
クラッチをただ、操作している動画だったり、「ドライバーになりました」と顔写真と一緒にアップしてみただけだった。
そうしたところ、同業のドライバーからのフォロワーが爆発的に増え、一時、アカウントも凍結した。凍結したとかたまに聞くけど、そんなことほんとにあるんだ、と思った。
その反応に手応えを感じたことから、2020年4月、動画の発信部分をTwitterから切り分ける形で、YouTubeチャンネルを開設。
今では「かなちゃんねる」という芸能人のフォロワー数顔負けの8万6000人もの登録者数を持つ、人気トラックYouTuberだ。
かなちゃんが走ると、かなちゃんの存在に気づいた対向車線のドライバーが、次々と手をあげてあいさつする。
かなちゃんも、「おーい」と手を振って笑顔であいさつしてすれ違う。
リアルでもYouTubeでも変わらない、きどらない等身大のイメージに、次々とファンが魅了されていく。
すれ違ったのは1秒にも満たない瞬間だけど、その瞬間が、トラックでひとり、長時間過ごすお互いの孤独をあたためてくれる灯火だったりする。
そんなトラック運転手同士だから分かち合える世界が、かなちゃんねるには詰まっている。
1月中旬、記者はかなちゃんの運転するトラックの助手席に乗って、かなちゃんの1日をお供させていただくことにした。
かなちゃんのフィルターを通して見えるトラックドライバーの世界に迫った。
(この連載の記事、編集は、編集部・今川友美が担当します)
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同行取材の様子は、かなちゃんのYouTubeチャンネル「かなちゃんねる」にアップされています。あわせてご覧ください。