話題人気トラックYouTuberのかなちゃんにLOGISTICS TODAY記者が密着同行取材する連載第4話
かなちゃんのトラックは、それから高速道路へと入っていった。
ガタッ、ガタッ、ガタガタガタ……
「ここらへんは、けっこう振動がやばいんです。道路のつなぎ目が、なみなみしてるから。あ、乗り物酔いとか、大丈夫なほうですか?」と、かなちゃんは記者をたびたび気遣ってくれる。
かなちゃんのトラックに乗って、初めて道路につなぎ目があることを知る。
記者は、乗り物に非常に弱いこともあり、あまりの振動の大きさに、普段持ち歩いている酔い止めのなかでも、いちばん効果が高いものを飲んだ。
酔い止め、効いてくれるのだろうかとたびたび不安になるなか、かなちゃんは「実は、助手席よりも、運転席のほうが疲れないんですよ」などと気軽におしゃべりを続けてくれて、緊張がやわらぐ。
かなちゃんを見ると、自己ベストよりまだあと2キロ届いていないとはいうものの、それでも30キロ台だというきゃしゃな体を乗せた座席が、車体が振動するたびに、ぴょこぴょこと飛び跳ねていることに気づいた。
ばね仕掛けのおもちゃみたいだ。
かなちゃんによると、運転席には長時間乗ってもドライバーが疲れないしくみが多く施されているという。
かなちゃんが飛び跳ねているように見えるのは、振動を吸収するサスペンション機能がつけられた「エアシート」というものが採用されているためだ。
現在、荷物の入った箱を装着するシャーシだけの状態で、車体も軽いため、道路にわずかな変化があるだけでも、とても揺れやすいという。
「あーもーほんと楽しい」
かなちゃんは、そうやって体がぴょこぴょこと飛び跳ねるたびに、うれしそうに笑う。
ほかにも、ドライバーの疲労軽減の機能はあって、オートクルーズ機能というのもあり、アクセルを踏まなくても時速80キロといったように、一定速度をキープして運転することもできる。
ときたまピピピと音がなるのは、制限速度をオーバーしそうになったり、車線に近づきすぎたりしたことを運転手に教えてくれる機能だ。
◇
そんな快適なドライブも束の間、かなちゃんに緊張が走った。
前を走る乗用車のペースが突然、落ち始めた。
道路は一見、なだらかなように見えて、緩い上り坂であることを示す道路標識があった。
平日は半分以上はトラックだが、土曜の今日は普通乗用車の割合が圧倒的だ。
普通乗用車にとって前も後ろもトラックに挟まれるのは圧迫感があって怖いものだが、それはかなちゃんにとっても一緒なのだという。
「私たちはメーターを見て一定速度で走ってるから、上り坂に気づかずに減速されてしまうと、渋滞の原因にもなるから、ひやひやしてしまうんですよね」
普通乗用車でもトラックでも、流れに乗る上で迷惑な存在になってしまったり、マナーが悪かったりするドライバーはいる。
けれども、かなちゃんと一緒にトラックドライバー目線でいつもの道路を見ることを通して、立場のちがう車同士がもっと譲り合ったり尊重できたりすることがあるのかもしれないなあと思ったりもした。
道路の状況が仕事に直結するドライバーにとって、荷物の到着が遅れてしまう渋滞は、悩みの種ではあるが、避けては通れない。
かなちゃんに同行してみて、これまでお盆や帰省ラッシュなどでの何十キロという大規模な渋滞が記者の「渋滞」のイメージだったが、小規模な渋滞も、実にたくさん発生していることに驚かされた。
かなちゃんの視点でトラックに乗ると、「○○で事故渋滞3キロ15分」といった、どこでなんの原因による、何分程度で、何キロの渋滞かということを知ら せる電光掲示板の情報がしょっちゅう目に付くようになる。
事故が起き、いままさに発生している渋滞の先頭に立ち会うこともあれば、現場検証により片側通行止めの渋滞が発生しているなか、サイレンをあげながら高速ですり抜けていくパトカーが後ろから近づいてきて、さらにまたその先で新しい事故が発生したことを知ったりする。
「普通の車だと、渋滞が起こってもどこが始まりかわからなくていらいらするけど、トラックは遠くまで見渡せるから、ストレス少ないですよ」とかなちゃんは話して、たしかにと思った。
「木が近い」と感じたこともトラックに乗って初めて感じたことなのだとか。
トラックからだからこそ見える世界がある。