話題人気トラックYouTuberのかなちゃんにLOGISTICS TODAY記者が密着同行取材する連載第9話
出発したときには遠くにあった富士山が、目の前に迫っている。
サンバイザーを下ろすだけではまぶしすぎて前が見られないくらいの夕陽が正面から差し込む。
「ここはサングラス必須スポットです」と言って、かなちゃんはフロントに手を伸ばしてサングラスをかける。
そんな時間もあっという間で、テールランプが夕暮れへと溶け始めていった。
まもなく到着した足柄サービスエリアで、冒頭のシーンでもあるたこやきをかなちゃんがほおばる頃には、富士山も闇の中へとすっかりと姿を消していた。
週末のごほうびだというたこ焼きの腹ごしらえが完了すると、目的地まであと一息だ。
19時半ごろ、静岡県内のコネクトエリアへと到着した。
平日は順番待ちをする多くのトラックであふれるそうだが、週末はだだっぴろいさみしげな場所だ。
ここに、かなちゃんを含む関東方面からの箱を載せた2台と、関西方面からの箱を載せた2台の計4台が合流し、箱は開封しないまま相互積み替えする「クロスドッキング」が行われる。
ここで、ちょっとしたハプニング。待ち合わせ時間は19時だったが、誰もいない。
「え、誰もいないんだけど!うそ!大丈夫?え、もうみんな帰っちゃった?」
かなちゃんは、不安になりながらも、合流予定のドライバーが無事に向かっていることを信じて、気長に待つことにした。
とても冷や冷やするのだけど、よくあることらしい。
この時間、いつもはカーテンを閉めて、後ろのベッドでごろんとなりながら、スマホをいじったり、お化粧直しなどをして過ごしているという。
記者が横にいて気を遣って横にならなかったのかもしれないけれど、「その間に、運転日報書いちゃいますね」といって、座席の間に置いてあったファイルを取り出すと、メーターや発着時間、休憩時間などを記入していった。
そうこうしているうちに、関西地方からのドライバーのうち一人から、まもなく到着するという連絡が入る。
「あー、やっと帰れる」とかなちゃんから安堵のため息。信じて待っていてよかった。
ゴム手袋をはめると、脱着の準備を始めた。
1時間ほどたった20時半すぎ、暗闇のコネクトエリアが光った。関西地方からのトラックだ。
ドライバー同士のあいさつもそこそこに、縦1列に駐車したトラック2台が、お互いの荷室部分を入れ替える。
ピーピーピーというバックの合図とエンジン音だけが、それまで静かだった場所にとどろく。
ドッキングが完了し、ひと安心の静寂が訪れるかと思ったのも束の間、お互いエンジンをかけて、帰路へ向かう準備を進めた。
かなちゃんが運んだ荷物は関西地方から来たドライバーへと託され、かなちゃんは関西地方のドライバーから運ばれた荷物を託された。
荷物を受け取ったら終わりではない。また同じ道を帰って、その荷物を届けなければならない。
「これでやっと半分終了」とかなちゃんは、残り350キロの道のりに向けて出発した。