
話題人気トラックYouTuberのかなちゃんにLOGISTICS TODAY記者が密着同行取材する連載第7話
かなちゃんにとって、自分をきらきらさせてくれたのも引っ越しバイトだったけれど、自分の性格や適性について、いちばん考えさせられたのもこの時期だった。
重い荷物を難なく運べるスキルや、梱包や仕分けや運び込みのてきぱきとした段取り力は認められ、かなちゃんはたちまち、3人1組の現場リーダーに抜てきされる。
自分の働きぶりが認められるのは、すごくうれしいことだった。
だが、いざなってみると、背負う責任や謝ることなどが増え、一人でやっていたときに感じられた「達成感」や「快感」が薄れていくのを感じた。
悩みに悩んだすえ、たどりついた結論は「成功も失敗も、自分のものとして引き受けられる『一人で仕事をするということ』がシンプルでわかりやすくていい」ということだった。

▲渋滞にはまって、コンビニで買ったポッキーをかじるかなちゃん
美容に興味があって美容専門学校に2年間通い、資格を取って卒業したものの、自分と同じような資格を取って女性と横一線で並んだとき、そんな自分がこれから先、生き生きと働いていける未来がどうしても思い描けなかった。
「できる」ことを「できる」人たちと同じようにやったところで、また、女性社会に女性である自分が入って埋没してしまうくらいなら、いっそ「やりたいこと」を、あえて男性社会に飛び込んでやったほうがぜったい楽じゃん、と思ってトラックドライバーを選んだのも本当のところだったりする。
まあ実際は、どんなリスクヘッジの道を選択したとしても、楽なことなんて何一つないなあと、いまは思うのだけど。
とはいえ、そんなふうにトラックドライバーを選んだことも事実なことについて、かなちゃんは言う。
「私の人生、全部逃げなんです」
「逃げて逃げて逃げまくって、ただ生きているだけなんです」
◇
ずっと同じ部屋でそういうことを思っていたら、ぐるぐると充満してしまうそんな感情も、移り変わる車窓の景色と一緒に、川のよどみに浮かぶ水の泡のように、消えてはまた生まれて、とどまることがない。
かなちゃんの語る言葉や風景には、もうもとには戻れない儚さがあって、だからこそ、そのときを精一杯に生きているアツいエネルギーに満ちている。

▲キャキャっと笑うかなちゃん
絶望を絶望と受け止めて自己憐憫するエネルギーを、「逃げ」というプラスのエネルギーに変えていける、それがかなちゃんの生きる証であるように記者には思えたのだった。