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一般倉庫との「併設」でより幅広い付加価値を創出へ

プロロジス、業界注目の「危険物保管」で新境地

2022年6月10日 (金)

話題大型賃貸物流施設の開発をけん引するプロロジス(東京都千代田区)が、「新しい生活様式」の時代を見据えた新機軸を打ち出そうとしている。法律で「危険物」と指定された物品を保管する施設である「危険物倉庫」だ。国内の産業界ではコンプライアンス体制の構築を推進する動きが加速。新型コロナウイルス感染拡大を受けて、危険物にあたるアルコールを使った消毒剤の保管や輸送需要も高まっていることで、ビジネス機会の獲得につなげる好機と判断したためだ。

プロロジスは、多くの企業が入居できる「マルチテナント型」と、入居予定企業のニーズに合わせて専用開発する「BTS型」の両タイプの物流施設開発で業界をリードしてきた。事業拡大に向けた次なる一手として注力するのが、こうした一般的な倉庫に賃貸型の危険物倉庫を併設することで、新たな市場を開拓する戦略だ。(田中なお)

「コンプラ意識の変化」と「ひっ迫する工業専用地域」の兼ね合いで生まれた「併設」の発想

「これまで国内で開発した110のうち15施設に危険品倉庫の併設実績があり、ノウハウも勝算もある」。プロロジス営業部の佐藤英征部長は、危険物倉庫ビジネスにおける今後の展開に自信をのぞかせる。

新型コロナウイルス禍を経た今、手の消毒に使うアルコールなどの取り扱いが増加している。危険品と言えば工業用の薬品などをイメージしがちだが、香水や化粧品、ヘアスプレーなども成分容量に応じて危険品として扱われることがあるなど、実は対象品目は多岐にわたっている。こうした危険品を扱う企業は、サプライチェーンにおける最適化や安全性を確保する観点から、法令順守の意識をさらに高めている。こうした背景から、全国的に危険物を取り扱う物流施設の開発が相次いでおり、物流施設の開発事業者は、一般的な倉庫への併設型、さらには危険物専用倉庫の開発を進める動きを見せ始めるなど、業界でも注目が集まる領域になっている。

「『危険物扱いにしなければいけないのでは?』と感じている商品が、多くの物流企業やメーカー、卸にはあるはずです。少量危険物として取り扱うには量的に課題があると考えながらも、自社で危険物倉庫を建てるとなれば時間も手間もかかるし資産として危険物倉庫を保有するほど先の見通しも立たない。とはいえ、賃貸物件も見つからない。こうした思惑から、対応しなければならないとわかりつつも、テコ入れされてきませんでした。ここにきてニーズとして表面化する局面を迎えています」(佐藤氏)

「線引きが微妙なライン」の危険物も規程の量を超えれば、危険物倉庫で保管しなければならない。たとえば化粧品やヘアスプレーなども該当する。とはいえ、旺盛なEC(電子商取引)商材の保管需要によって、まとまった規模の危険物倉庫を建てられる土地はそんなに多くはないのが実情だ。

「プロロジスが物流施設用地として保有する土地を『生産工場用地として購入したい』と言われるほど、利便性の優れた立地の工業専用地域はありません。現在開発を進めている『プロロジス古河プロジェクトフェーズ2』の区画はすぐに埋まってしまう可能性があります」(佐藤氏)

15年のノウハウを持つプロロジスが語る「危険物倉庫を賃借するメリット」

プロロジスが危険物倉庫を計画しているのは、建設を予定している物流施設「プロロジスパーク古河4」(茨城県古河市)の敷地内だ。関東のど真ん中に位置するため主要都市部・港・空港まで1時間。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)・五霞インターチェンジ(IC)、境古河ICからいずれも10分で、東北方面や関西方面へのアクセスも良好なマルチテナント型物流施設と、それに併設する形で賃貸型の危険物倉庫を整備する計画だ。

「危険物について『これまで普通品とは別の拠点に保管していた』というお客様もいらっしゃいました」。こう話すのは、プロロジスコンストラクション・マネジメント部の小出敦子部長だ。

そもそも、一般倉庫と危険物倉庫を併設することで生まれる強みとは何なのか。佐藤氏と小出氏の両氏に聞いてみた。「まず、普通品と危険物を物理的に離れた倉庫に保管する場合は倉庫管理者が2人必要ですが、併設の場合は1人で済みます。輸配送面でも積み合わせをする必要がなくなるので、合理的かつ効率的な運用が可能です」(佐藤氏)

また、危険物倉庫を自社所有ではなく賃貸する最大のメリットについては「使わなくなったら返却できること」だという。近年、物流会社が仕事を受託する期間はどんどん短くなってきている。コストにシビアになった荷主企業が多く、昔から続いてきた契約も入札にかけなければならなくなったためだ。「その結果、物流会社が危険物倉庫を独自に建てても、10年から20年で回収するのは難しくなってきているのです。賃貸型倉庫であれば、受託期間や荷量によって賃貸が可能であり無駄がありません」(同)

実は、プロロジスは賃貸用物流施設のパイオニアであるだけでなく、危険物倉庫の開発・運営においても15年のノウハウがあり、さまざまな方法で危険物保管のニーズに対応してきた実績がある。

(イメージ)

「少量危険物保管のご要望であれば、マルチテナント型施設の建屋内に消防設備を設置し、消防法に則って対応するケースもありました。また、具体的な依頼となる前に、お客様のニーズを予想しながら賃貸用危険物倉庫を開発したこともあります。引火性液体の性質を有する「第4類の危険物」を想定して消防と協議しながら開発を進め、入居者が決まり次第、必要な消火設備を付帯する方法です」(小出氏)

プロロジスが危険物倉庫の開発を手掛け始めた15年前の当時、危険物倉庫の賃借はおろか、倉庫を賃借する概念が浸透しきっていなかったために、しばらく空室が出てしまった苦労もあったようだ。

「マルチテナント型物流施設併設の危険物倉庫の賃貸を始めた当時は話題にも上がりませんでした。まだ時代が追いついていなかったんですね。今回はニーズの変化を感じ、満を持して古河4の開発で危険物倉庫の併設を進めようという話になりました」(佐藤氏)

15年の歳月を経て、今や危険物倉庫は業界におけるビジネスチャンスの宝庫と言われるまでに注目度が高まってきた。プロロジスは、満を持して本格的な事業戦略に打って出る。

普通品と危険物倉庫を併設、プロロジス古河プロジェクトフェーズ2

こうしたプロロジスの戦略を象徴するプロロジス古河プロジェクト。そのフェーズ2とそこで建設されるプロロジスパーク古河4はどんな構想なのか。ここでは、まずプロロジス古河プロジェクトの先駆けである第1フェーズに相当するプロロジスパーク古河1、プロロジスパーク古河2、プロロジスパーク古河3について振り返る。

この3施設は、要望に応じて入居企業専用の設計で開発するBTS型物流施設としてすでに稼働中だ。古河1は医薬品保管のため温度管理に必要なドックシェルターを完備し、免震構造を採用している。古河2は一般倉庫1棟と危険物倉庫8棟の併設型だ。工業専用地域でないと、危険物倉庫としてこれだけの面積を保有することは難しい。入居者である日立物流ファインネクストと、プロロジスとの共同開発によって建設された。

古河3は一般倉庫1棟と危険物倉庫2棟の計3棟で構成。一般倉庫は計32台分のトラックバースを確保。こちらも温度管理のためのドックシェルターを一部に備え、空調倉庫としてのニーズにも応えた設計になっている。

プロロジス古河プロジェクトフェーズ2では、マルチテナント型施設のプロロジスパーク古河4が危険物倉庫併設を併設する形で2023年3月に完成予定だ。広い敷地を活かし、ワンフロア最大9000坪(3万平方メートル)での効率的なオペレーションが可能な設計とすることで、大規模なマテハン導入・自動化にも対応できる仕様とする。梁下高も一般的な倉庫で5.5メートルのところ、6.3メートルから最大8.6メートルの高さを確保。貨物の高積みやラック4段積みも可能にした。敷地には開発余地があり、顧客のニーズに合わせて、順次BTS型物流施設を建設予定だという。

さらに付加価値を高める要素となるのが、併設する危険物倉庫だ。マルチ型施設であれば、最小賃貸面積のハードルを低くしたうえで、危険物倉庫をセットで使えるメリットを幅広い層の顧客に検討を促せるとの狙いがある。「マルチ型施設を賃貸されるお客様の中には『今はこれしか借りられないけど、今後はこれだけじゃ足りなくなる』といった事業拡大の展望をお聞かせいただくこともあります。マルチ型施設にいったん入居しプロロジス古河プロジェクトフェーズ2の敷地内に、いずれ専用施設を建てられるポテンシャルも、現時点ではあります」(小出氏)

プロロジスパーク古河1・2・3を「展示場」として参考事例としてもらうことにより、ニーズによってこれだけ違う建物が建てられるという実力をイメージしてもらう。プロロジスが危険物倉庫を併設するメリットは、こんなところにも見出しているのだ。実にしたたかな戦略と言えるだろう。

完成前の今だからこそプロロジス古河プロジェクトフェーズ2の広がる可能性

現在進行中のプロロジス古河プロジェクトのフェーズ2。入居者を募集中である今だからこそ、顧客にとって自由で拡張性を視野に入れた要望が可能だ。

「現状残っている土地が埋まってくれば対応できない要望も出てきます。その点、今ならどんな相談も受けられる。たとえば危険物倉庫群や冷凍冷蔵倉庫の建設もあり得ますし、成長軌道に合わせた倉庫拡張の可能性も残せます。大きな敷地を区切っての使用も可能です」(佐藤氏)

プロロジスだから提供できる危険物倉庫。それを実現するために必要なのは、仕事への強いこだわりだという。

「BTSは、お客様の課題や事業展望に合わせて、時間をかけた的確なニーズ対応が重要です。マルチ型であったとしても、竣工後の施設管理も行うので、入居後の感覚をヒアリングして再び設計に落とし込む、いわばPDCAの繰り返し。数多くのBTSを開発してきたノウハウを基に様々な要望に対応できるのが当社の強みですね」(小出氏)

プロロジスパーク古河4は、マルチテナント型で最大6企業​​​​、最小賃貸面積は3700坪(1万2200平方メートル)から入居できる。危険物倉庫は最大2企業、最小賃貸面積が150坪(495平方メートル)から利用可能。それとは別に、3万3000坪(10万8900平方メートル)の自由な要望に応えられるBTS型を建設できる土地を保有している。

あなたが取り扱う商品で「危険物」になりそうなモノはないだろうか。これを機に、気づいたときには遅かったということがないよう、一度見直してみてはどうだろう。危険物倉庫が必要であり、かつ事業拡張の可能性を見込んでいる企業にとって、今回のプロロジスの取り組みは、またとない魅力的なオファーになる可能性は十分にある。

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