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東海・北陸信越エリアにおける物流施設関心度ランキング

関心集まる「小牧」「伊勢湾岸道沿線」「金沢近郊」

2022年8月4日 (木)

話題LOGISTICS TODAY編集部が展開している、東海・北陸信越エリアの物流施設に焦点を当てた特集企画「物流施設特集-東海・北陸信越編-」。ここでは、物流企業や荷主企業を中心とする読者を対象に7月15日から20日にかけて実施したニーズ調査(有効回答数304件、回答率10.4%)に基づき、このエリアにおける物流施設の関心度をランキングでまとめた。

※位置の番号は下の地図に対応


(クリックで拡大)

東海で有数の産業集積地である愛知県北部の小牧・一宮地区に割り込む形で、伊勢湾岸自動車道沿線の新規物件が上位に食い込む構図となった。さらに、富山県や石川県といった北陸で整備が進む物流施設への関心の高さも目立った。高速道路網の拡充を意識した物流施設開発プロジェクトの動きが顕著な東海・北陸信越エリア。東海における小牧・一宮と伊勢湾岸自動車道沿線の2極化が進む一方で、北陸では富山・石川を中心とした拠点化が加速している傾向が浮き彫りになった。

域内の「2極化」進む東海と北陸

東海では、東名・名神高速道路と中央自動車道が結節する小牧市を軸に、一宮市や春日井市といった愛知県北部エリアで産業立地が加速。こうした動きを反映した物流施設の進出が顕著だ。自動車産業を中心とした製造業を主軸とする経済圏を構成する土地柄もあり、こうした高速道路網の整備が物流施設の立地を左右する最大の要因になっている。

(イメージ)

近年、愛知・三重県境で物流施設開発プロジェクトが急速に進んでいるのは、伊勢湾岸自動車道の東西間輸送における機能が新東名・新名神高速道路の延伸でより高まっているからにほかならない。東西間の中継拠点としての役割も含めて、東海における物流拠点の立地動向は高速道路網の展開と切っても切り離せない関係にあることを象徴している。

一方の北陸における物流拠点網の進展も、東海と似た事情がある。日本海に沿って走る北陸自動車道に加えて、東海と直結する東海北陸自動車道が開業したことで、広域の物流拠点ネットワークの一角を担える地域としてのポテンシャルを見い出す事業者が登場。災害時における輸送ルートの複線化を模索する動きとも相まって、北陸の存在価値が高まってきているのが実情なのだ。

ランキング上位を独占する「伊勢湾岸道沿線」と「小牧」

今回の東海・北陸信越エリアにおける物流施設の関心度ランキングでも、こうした動きが色濃く反映されている。まずは、上位5位にランクインした顔ぶれを見てみよう。

▲DPL名港弥富II(右手前)。DPL名港弥富I(左奥)が隣接する。(出所:大和ハウス工業)

関心度で最多の回答率を獲得した大和ハウス工業の「DPL名港弥富II」(愛知県弥富市、回答率10.5%)は、ことし6月に完工したばかりの新規物件。伊勢湾岸自動車道「湾岸弥富インターチェンジ(IC)」に至近で、延床面積7万8329.95平方メートルと東海エリアでもゆったりとした大型施設だ。

人気の小牧・一宮エリアではなかなか難しいまとまった規模の敷地を探せるのが伊勢湾岸自動車道沿線の大きな利点。とはいえ、決してアクセス面での不便さもなく、名古屋市中心部や名古屋港、中部国際空港など物流ビジネス拠点への往来もしやすい。首都圏や関西圏と比べてコンパクトな都市圏を形成する中京圏の強みを発揮している点でも、大和ハウス工業に「先見の明」があったというべきか。

第2位に入ったのは、こちらも大和ハウス工業の「DPL小牧」(仮称、愛知県小牧市、9.2%)。まさに、長年にわたって東海地方における物流拠点を一手に引き受けてきた中心エリアにおける新規プロジェクトだ。伊勢湾岸自動車道の沿線で物流施設の開発が進んでいるが、今後はそれぞれのエリアで機能のすみ分けが進んでいく可能性もある。

日用品をはじめとする消費者向け荷物の取り扱いが多い小牧・一宮エリアに対して、産業向け重量物の保管・輸配送拠点と東西間中継機能を期待する伊勢湾岸自動車道エリアが役割を分担することにより、東海におけるこれまで以上に効率的なネットワークの構築につながる可能性もある。大和ハウス工業が両エリアに物流施設を展開する狙いも、まさにそこにあると言えよう。

「伊勢湾岸道沿線」は東海における第二の核になれるか

▲MFLP弥富木曽岬(出所:三井不動産)

続く第3位と第4位には、ともに伊勢湾岸自動車道沿線の施設がランクインした。「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)弥富木曽岬」(三重県木曽岬町、8.9%)は、2023年3月に完成予定の大型物流施設。延べ9万8792.67平方メートルの広々としたスペースは、東西間の中継拠点としての「営業所」新設需要を意識した仕様としているのが特徴だ。営業所の新設で少量の荷物を保管するスペースのニーズも出てくると想定。最小で2059平方メートルから倉庫スペースを提供する予定だ。

大和ハウス工業の「DPL名港弥富I」(愛知県弥富市、8.2%)は、今回のランキング首位のDPL名港弥富IIに隣接。何と言っても最大の特徴は延床面積で、実に21万172.73平方メートルと東海のみならず全国でも最大級の規模だ。いかにこの立地における物流ビジネスの潜在能力を高く評価しているかがわかる。

弥富や木曽岬といった伊勢湾岸自動車道の沿線は、平坦な埋立地に農地や未利用地が連続する。ここに高速道路のICが近く大都市圏も至近となれば、これほど物流施設用地を取得しやすい場所もないだろう。三井不動産はMFLP弥富木曽岬の開発プロジェクト着手にあたり、このエリアを物流施設の集積地にしたいとの思惑がある。

物流施設の集積が進めば荷主企業が物流ビジネスの拠点として着目する度合いも高まり、さらに新規施設のプロジェクトが加速する。こうした連鎖が現実になりつつある今、小牧・一宮に続くネットワークの第二の核が形成されようとしているのだ。

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遠近両面で拠点化できる北陸の「絶妙な立地」

▲金沢物流センター(出所:大和物流)

同率の4位で、いよいよ北陸の拠点がランクイン。大和物流の「金沢物流センター」(石川県白山市、8.2%)は、北陸最大の都市である金沢市に隣接する白山市でことし4月に稼働。最寄りの北陸自動車道「美川IC」「徳光スマートIC」から北陸3県(福井・石川・富山)へのアクセスが容易で、金沢都市圏を中心とする近距離配送から中京圏・関西圏を含めた広域輸送まで幅広く対応できる立地が強みだ。

北陸における物流施設の展開で実績を持つ大和物流は、遠近両面での輸配送拠点としての役割を託せる絶妙な立地として、この地を重視していることがうかがえる。

大和物流のこうした思惑の背景にあるのは、北陸というエリアの位置だ。当地にいわゆる全国資本の物流施設開発事業者が本格進出するまで、こうした事業者の関西圏または首都圏の拠点が管轄していた。

とはいえ、EC(電子商取引)サービスの普及や物流事業に対する荷主や消費者のニーズの高度化・多様化の動きを反映して、こうした大都市圏以外での物流施設のネットワーク化が加速。北陸への物流施設の進出が進んだのは、こうした事情がある。冬季の積雪による道路網の遮断リスクも、こうした拠点化を後押ししている。その意味で、地方における物流施設網の「あるべき姿」をこれほど象徴している地域はほかにないだろう。

東海・北陸信越の経済特性を色濃く反映した物流施設ネットワーク

北陸では6位以下にも富山県の開発物件がランクインするなど、新たなプロジェクトも相次いでいる。北陸では、輸送インフラにおける基軸である北陸自動車道と、東海へアクセスできる東海北陸自動車道、さらに能登方面へつながる能越自動車道の結節点である「小矢部砺波ジャンクション(JCT)」を中心としたエリアと、金沢市近郊の2つのエリアを軸としたネットワークの構築が進みそうだ。

さらに信越エリアでは、域内における輸配送拠点を集約して効率的な物流サービスを展開したい地場の企業に、こうした新しい物流施設への待望論が強い。こうした経緯を踏まえて、やはり高速道路の結節点に近い場所でプロジェクトが動いている。

域内の産業物流と東西中継拠点という2つの顔を持つ東海。地方における拠点化の動きを象徴する北陸。地場企業の物流ニーズを反映した信越。各地域における物流施設網の進展は、それぞれの地域における経済・社会動向を色濃く示す「縮図」であると言えそうだ。

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