行政・団体日本郵便における大規模な点呼不備問題で、国土交通省が同社に対し、貨物自動車運送事業法に基づき、トラックなど2500台を対象とした運送事業許可を取り消す方針を固めたことが明らかになった。全国の郵便局で長年にわたり安全管理の根幹である点呼が実施されず、さらに記録の偽装も常態化していたことを重く見たもので、大手事業者に対する事業許可取り消しは極めて異例の最も重い行政処分となる。
この問題は、日本郵便が4月23日に公表した内部調査結果で表面化した。全国3188の集配郵便局のうち、実に75%にあたる2391局で、乗務員の健康状態や酒気帯びの有無などを確認する点呼業務に何らかの不備が確認されたという内容だった。同報告書では、点呼を行わずに乗務することは重大な法令違反と認識しつつも、「点呼を実施していないにもかかわらず、点呼記録簿は作成するという行為が行われていた」と、記録の改ざん・不実記載という悪質な偽装工作の存在も認めていた。
これらの報告と事態の深刻さを受け、国土交通省は4月25日から日本郵便に対し、貨物自動車運送事業法に基づく特別監査に着手。全国の郵便局への立ち入り検査を進めていた。
報道によると、特別監査では、日本郵便が報告した以上の点呼未実施や、さらに悪質な記録改ざんが多数確認された模様だ。関東運輸局管内では、監査結果に基づく累積違反点数が、事業許可の取り消し基準である81点をすでに超過したという。
貨物自動車運送事業法では、事業許可が取り消されると5年間は再取得ができない。日本郵便は、年間10億個を扱い市場の2割を占める「ゆうパック」や郵便物の拠点間輸送に、許可対象の貨物車を広範囲に利用している。事業許可取り消しとなれば、これらのサービスへの影響は必至で、同社は子会社の日本郵便輸送や協力会社への委託を大幅に増やすなどの対応を迫られるとみられる。
国土交通省は、月内にも日本郵便に対し処分案を正式に通知し、行政手続法に基づく聴聞を行った上で、事業許可を取り消す方針だ。関東運輸局管内で許可取り消しが確定すれば、ほかの地方運輸局管内を含め、影響は全国に及ぶ。
日本郵便内部では、許可制のトラック輸送から届け出制の軽貨物車へのシフトや、車両・人員の子会社への移管などが検討されているとの情報もあるが、国土交通省はこうした動きが事実上の「処分逃れ」とならないよう、厳しく監視する姿勢を示している。
国土交通省は今後、郵便配達の主力である軽自動車(3万2000台)についても監査を本格化させる。これらは届け出制のため許可取り消しはないが、点呼義務は同様に課されており、多くの郵便局で車両使用停止などの行政処分が下される可能性が高い。
日本郵便は、問題発覚後、千田哲也社長が陳謝し、監視カメラによる点呼状況の確認や点呼システムのデジタル化などの再発防止策を発表したが 、その実効性より先に、過去の長年にわたる組織的な不正行為に対する厳しい行政判断が下される形となった。
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