イベントLOGISTICS TODAYは25日、「荷待ち荷役『2時間ルール』直前対策会議」を開催した。2026年4月の改正物流関連二法の本格施行がいよいよ目前に迫るなか、物流業界が直面する最大の懸案事項である「荷待ち・荷役時間の短縮」に焦点を当て、現場のオペレーション負荷をどう軽減しつつ、法規制を順守するかについて、専門家やITソリューションベンダーによる具体的な議論が展開された。

冒頭、モデレーターを務めたLOGISTICS TODAYの鶴岡昇平は、1運行あたりの荷待ち・荷役時間を計2時間以内とする、いわゆる「2時間ルール」の現状について厳しい認識を示した。国交省のデータによれば、20年度から24年度にかけての平均時間は3時間3分から3時間2分へと、4年間でわずか1分しか改善していない。「自主的な努力だけでは限界が来ている。2024年度の速報値でも1分しか縮まっていないという事実は、これまでの延長線上では太刀打ちできないことを物語っている」と鶴岡記者は指摘し、このルールが単なる努力目標ではなく、監視指導や社名公表のリスクを伴う「実質的な義務」として捉えるべき局面に来ていると強調した。
第1部から第2部にかけて議論の焦点となったのは、現状把握のためのデータ収集における「精度」の問題だ。多くの企業がデジタコやスマートフォンのアプリを導入しているが、現場では「操作の漏れ」や「入力の負担」により、正確な記録が残らないケースが多発している。

▲X Mile 物流DX事業部 トメインスペシャリストの砂川勇太氏
この課題に対し、X Mile(クロスマイル、東京都新宿区)の砂川勇太氏は、現場のオペレーション負荷がデータ欠損の主因であると分析した。「ドライバー一人一人に、本来の運転や荷役以外の『入力作業』を強いるのは限界がある。多忙な現場で操作が徹底されず、データが3割程度しか残らない、いわゆる『歯抜け』の状態では、荷主との交渉材料にもなり得ない。何より、その3割のデータだけを見て判断すると、残りの7割に潜んでいるかもしれない深刻な長時間待機を見逃してしまうリスクがある」と砂川氏は警鐘を鳴らす。
また、サンプリング調査による現状把握についても、リスクが指摘された。全案件の25%程度を占める深刻な長時間待機案件が、一部の抽出調査では見落とされる可能性があるからだ。全数把握こそが、法規制対応の第一歩であるとの共通認識が示された。
続くセッションでは、人手に頼らず自動でデータを取得する具体的なソリューションが提示された。

▲古野電気システム機器事業部企画マーケティング課担当課長物流DXサービス事業責任者の西村正也氏
古野電気(兵庫県西宮市)の西村正也氏は、ETCや車番認識カメラを活用した非接触型のデータ収集を提案した。「ドライバーが車両から降りることなく、ゲートを通過するだけで入退場を自動記録する仕組みが必要。ETCは全てのメーカーの車載器を検知できるうえ、車番認識と組み合わせれば、夜間や悪天候でも高い精度を維持できる。現場の作業工程を一切増やすことなく、100%に近い精度のデータを蓄積できることが、運用の形骸化を防ぐ唯一の道」と語り、インフラ側での自動化が、ドライバーのストレス軽減とデータ精度の両立を実現する鍵であることを示した。
一方、車両側の動態管理からのアプローチとして、traevo(トラエボ、東京都港区)の鈴木久夫氏はGPSとジオフェンスの活用に触れた。「既存のデジタコデータと連携し、あらかじめ設定した拠点の半径500メートルなり1キロなりの円内に入った時間を自動で判別することで、拠点の滞在時間を一元管理が可能。1台あたり月額500円という低コストで始められる仕組みにより、中小の運送事業者でも全数把握できる。このデータは、荷主に対して待機料を請求する際の客観的なエビデンスとしても非常に強力な力を持つ」と、導入ハードルの低さと実用性を説いた。

▲traevo代表取締役社長の鈴木久夫氏
さらに、バース管理の視点から、両備システムズ(岡山市北区)の木本一機氏はAI画像解析の有効性を主張した。「カメラで接車・離車を自動判定することで、待機時間だけでなく実際の作業時間も正確に切り分けられる。どこでボトルネックが発生しているのか、荷役そのものに時間がかかっているのか、それとも前後の事務作業が長いのかを可視化し、現場のオペレーションを根本から見直すことが可能になる。現場のスタッフに『打刻しろ』と言い続けるよりも、システムで自動的に事実を積み上げる方が、結果として現場の信頼を得られるはず」と述べ、可視化の先にある「改善」への道筋を示した。

▲両備システムズDX推進営業部移動体ソリューショングループエキスパートの木本一機氏
イベントの後半では、収集した膨大なデータをいかに実務の改善に結びつけるかについて、より踏み込んだ議論が行われた。
X Mileの砂川氏は、24年4月から義務化されている運賃と料金(荷待ち料など)の別立て契約についても言及した。「正確なデータがあれば、これまで曖昧だった『荷待ち時間』を明確な『料金』として請求できるようになる。これは運送事業者にとっての法順守であると同時に、収益性を確保するための正当な権利行使。X Mileとしては、使いやすいUI/UXを提供することで、事務方の負担も最小限に抑えつつ、この適正化を支援したい」と語った。
また、改善の優先順位について、鈴木氏は「まずはワースト20%の案件を特定し、そこを集中的に是正すること」の重要性を強調した。「全ての案件を一度に解決するのは困難だが、突出して時間がかかっている特定の荷主や、特定の曜日、特定の時間帯をデータで特定し、その要因を潰していくことで、全体の平均時間は劇的に改善される。データの真の価値は、こうした『狙い撃ち』の改善ができる点にある」という。
木本氏は、荷主と運送事業者の「共通言語」としてのデータの役割を強調した。「現場の感覚値で『いつも待たされる』と言うのではなく、客観的な数値データを持って対話することで、初めて建設的な改善策が生まれる。荷主側も、自社の拠点が物流停滞の原因になっていることを数字で突きつけられれば、動かざるを得ない。データこそが、立場の異なる両者をつなぐ架け橋になる」と述べ、データが相互協力の基盤になるとした。

▲LOGISTICS TODAYの鶴岡昇平
最後に、モデレーターの鶴岡は今回の議論を総括し、「2時間ルールへの対応は、単なる法規制への『守り』ではない。物流の効率化を加速させ、持続可能な産業構造に作り変えるための『攻め』の投資と捉えるべき。正確な全数データを持つことは、自社のオペレーションを磨き上げ、荷主とのパートナーシップを強固にするための最大の武器になる」と締めくくった。
26年4月はゴールではなく、新しい物流スタンダードの始まりに過ぎない。人手による入力に頼らない「自動化」と、そこから得られる「全数データ」を武器に、荷主と運送事業者が手を取り合って改善に挑む。その実践論こそが、この「直前対策会議」が提示した、物流クライシスを乗り越えるための明確な答えとなった。
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