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物流倉庫でドリフト大会、5000人が熱狂

2026年3月22日 (日)

(出所:レッドブル・ジャパン)

拠点・施設物流施設の中をドリフトマシンが駆け抜け、歓声が4階建ての建物全体を揺らした。ESRが運営する横浜市の大型物流施設「ESR横浜幸浦ディストリビューションセンター3」(ESR幸浦DC3)で21日、レッドブルとの共催イベント「レッドブル・トーキョー・ドリフト2026」が開かれた。国内外から5000人超のカーカルチャーファンが詰めかけ、普段はトラックが行き交う施設が一日限りのモータースポーツ会場に変わった。(編集長・赤澤裕介)

会場となったESR幸浦DC3は、2025年2月完成の延床面積16万5000平方メートル超のマルチテナント型施設だ(※)。同敷地内のDC1(22年完成、延床19万5000平方メートル)、DC2(23年完成、同)に続く3棟目で、パーク全体の敷地は33万平方メートルに及ぶ。

※…関連記事「ESR横浜幸浦DC3が完成、物流の要衝に新拠点」(2025年3月4日)

▲「ESR横浜幸浦DC3」の主要スペック(クリックで拡大)

柱スパン11メートル四方、1階床荷重2トン/平方メートル、40フィートコンテナトレーラーが走れるランプウェイ。1階フロアをそのままドリフトコースに転用できたのは、このスペックがあるからだ。3階と4階では500台規模の車両が並ぶカーミート(愛好家の車両展示会)、2階ではライブステージが展開された。全4フロアを使い切った多層型イベントが成立する物流施設は、そう多くない。


(出所:レッドブル・ジャパン)

昨年の初開催に続く2年連続の開催で、ESR代表取締役で共同創設者・共同CEOのスチュアート・ギブソン氏は「ESRが手がけるあらゆる資産の根幹にある野心とポジティブなエネルギーを象徴するイベントだ」とコメントした。

ただ、このイベントは単なる話題づくりにとどまらない。背景にあるのは、物流不動産の競争環境の変化だ。

保管能力では差がつかない時代に

首都圏の大型物流施設の空室率は、21年以降ほぼ一貫して上昇を続けてきた。不動産サービス大手シービーアールイー(CBRE)の調査では、複数テナントが入居するマルチテナント型(延床1万坪以上)で25年1-3月期に11.1%まで上昇した。その後3四半期連続で低下し同年10-12月期には9.8%と落ち着きつつあるが、20年前後の1-2%台だった時期と比べれば依然高い。22-23年に年間100万坪超の新規供給が相次ぎ、需要がそれを吸収しきれなかった。「造れば埋まる」時代は終わっている。

(出所:日本GLP)

立地とスペックだけでは選ばれなくなったいま、デベロッパー各社は倉庫以外の付加価値で差別化を図り始めている。日本GLPは旗艦シリーズ「アルファリンク」(ALFALINK)で先行する。相模原や流山の施設にフットサル場やカフェを併設し、地域住民に開放。自治体との包括連携協定を結び、年間100件を超えるコミュニティーイベントを実施している。

ESRのアプローチはこれとは異なる。地域密着型のコミュニティー活動ではなく、レッドブルという世界的ブランドと組んで施設そのものをコンテンツ化した。5000人規模のイベントを成立させることで、施設の認知度を押し上げる。広告費を投じて露出を買うのではなく、イベントとして成立させることで集客と発信を同時に実現する設計だ。ブランドの力を借りてマーケティング機能を外部化している。

では、この取り組みはどう収益に結びつくのか。直接的なチケット収入やスポンサー収入は主目的ではない。狙いはリーシング効率の改善にある。認知度を高め、内見機会を増やし、空室期間を短縮する。「話題になる施設」という評判は、テナント候補企業が最終的に入居先を選ぶ場面で効いてくる。賃料そのものを大きく引き上げられなくても、稼働率と契約スピードの改善を通じて資産全体の収益性を底上げできる。

もっとも、このモデルは誰でも再現できるわけではない。湾岸部で都市に近い立地、1階高荷重かつ大空間の床仕様、そしてレッドブルのようなブランドと組める関係性。この3つがそろわなければ成立しない。イベント開催には消防法上の用途変更対応、賠償保険の設計、テナントとの調整といったコストも伴う。実行できるプレイヤーは限られる。

それでも、物流施設の競争軸は「保管能力」から「人を呼び込む力」へ確実に移りつつある。ESRの試みは、物流不動産が稼ぐ手段そのものをすでに変え始めているのかもしれない。

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