話題ホルムズ海峡の事実上の封鎖が長期化するなか、日本の産業界は原油やLNG(液化天然ガス)の供給不安にとどまらない、より深い構造的リスクに直面している。ナフサの枯渇が化学産業を止め、その先にある半導体製造を止めかねないという連鎖。輸入額わずか30億円のレアメタルが途絶すれば、1兆円規模の市場が機能不全に陥るという非対称性。そして、こうした依存構造が「見えていない」こと自体が、意思決定の遅延を招き、被害を増幅させている。
LOGISTICS TODAYはホルムズ海峡特集の一環として、グローバルサプライチェーン(SC)のデータハブ「ZENPORT」を提供するZenport(ゼンポート、東京都千代田区)の太田文行代表取締役を招き、この危機が突きつけている問題の根を掘り下げた。(編集長・赤澤裕介)
赤澤: いきなり踏み込んだ質問で恐縮ですが、今回のホルムズ海峡をめぐるSCの混乱、この本質は供給不足の問題なのか、それとも情報不足なのか。太田社長はどちらだとお考えですか。
太田: 情報不足だと思います。何が起きているか、皆さんわかっていない。私も含めて、全体像を把握することが非常に難しい。これが今回の危機で浮き彫りになっていることだと思います。その陰でどんどん構造が変わっていってしまっているかもしれない。だから今までのやり方を元に戻してもうまくいくかどうかわからないし、目の前の事態に対処する上でも全く違うアプローチが必要になる。何をすればいいのか判断が非常に難しい。ここをこの危機があらわにしていると思います。
赤澤: 突きつけられている、という実感がありますね。その裏側にあるものとして、太田社長はXでホルムズ危機を三つの力学で整理されていました。経路への集約密度、制度による増幅、不確定性による混濁。この三つがらせん状に拡大して不可逆的な変化を生むと。この枠組みを改めて解説いただけますか。
太田: まず集約密度の話からいくと、何か一つを止めたら、それがドミノ倒しのようにばあっと影響が広がってしまう部分がいろいろなところにあります。今回のホルムズ海峡でいえば、ナフサがその一つです。ナフサを起点にして、さまざまな化学品がバリューチェーンとしてその後ろに繋がっている。ナフサが止まることによって全部止まってしまうかもしれない。どこが首根っこなのか。それが集約密度ということです。

▲Zenport代表取締役の太田文行氏
制度による増幅というのは、例えばナフサが止まると、エチレンやポリプロピレンなどの化学物質の製造ができなくなり、川下にある製品が作れなくなる。PET樹脂はベンゼンとエチレンの誘導体から合成しますが、ナフサが止まるとそもそも原料がない。あるいは半導体に使う非常に重要な薬剤、フォトレジストですが、これはナフサの用途としては0.001%しか使わないのに、なくなれば世界中の半導体製造が止まりかねない。プラントが1基止まった時点で、そのシステム全体が機能不全に陥る。一度プラントが止まると復旧に時間がかかり、ナフサが入手できてもプラントが律速となり全体への波及効果が持続してしまう。
また、LNGの設備は一度止めると再稼働が難しい、というのも同様です。さらに、再開が不確定であると、システム全体の再開が遅れ、構造が変質していくことが、不確定性の混濁です。需要国がカタールに頼れないとなれば他の供給元と長期契約を結ぶ。そうすると市場の構造そのものが変わってしまう。ホルムズ海峡が正常化してカタールが供給再開できるようになっても、同じ経済条件では契約できないかもしれない。契約のサイクルも合わなくなる。世界の構造が不可逆的に変わっていってしまう。
赤澤: 一つ一つの事象を単独で見るのではなく、この三つが同時に回っているということですね。過去を振り返っても、コロナ、スエズ運河の座礁、ウクライナ侵攻、上海ロックダウン、紅海危機、トランプ関税、そして今回のホルムズと、2020年以降だけで有事が常態化しています。今回はこれまでの危機と何が違いますか。
太田: 影響の深さが違います。さきほど申し上げたように、集約しているものが多いので影響の範囲が非常に大きい。最終的には世の中の構造が変わってしまうというところが、今回の危機の恐ろしいところであり、難しいところでもあります。例えばナフサのプラントを一度止めてしまうと、もう閉じなければならない、廃業しなければならないということが起こりうる。もともと日本のナフサ業界は難しい判断を迫られる状態にありましたから、この危機がそれをさらに加速させてしまう。国内でナフサを作る場所がなくなるかもしれない。石油のバリューチェーン、ナフサのバリューチェーンをどう構築するかという構造自体を変えてしまう。そこが今回のホルムズ海峡危機の影響の深さの一端です。

▲コロナ以降の「平時」は常に「有事」への備えが必要となっている
赤澤: 一端だけで胸いっぱいですが、三つの力学のうち集約密度の問題を日本に当てはめると、太田社長がNoteで書かれた「アキレス腱」の話になりますね。ナフサは石油備蓄法の対象外です。
太田: そうです。備蓄の義務がないんです。
赤澤: ないんですよね。供給余力については、私と同じ名字のある大臣と対談させていただいた際に「4か月分ある」とおっしゃっていたんですが、中身を見ていくといろいろ精査が必要な部分もある。その点は別途記事にしていますので、そちらもご覧いただければと思います。フォトレジスト以外にも、こうした例はありますか。
太田: ガリウムですね。中国が精製を一手に握っている元素ですが、日本の輸入額は30億円程度で、決して大きいとは言えない規模です。しかしこれがなくなると、5Gの基地局が作れなくなったり、EVの充電器に影響が出たり、さまざまな波及があります。
赤澤: 30億円が止まると、兆円単位のマーケットに影響が及ぶということですね。金額の大小ではなく、あるかないかの問題だと。しかも中国がレアメタルの輸出規制を進めていますから、モノがないこと以上に、法律で動けないというリスクもある。
太田: 中国の法制度のリスクは非常に大きいですね。制度による増幅の一つです。日本政府も自前で掘削できるようにするなどの議論は進んでいますが、ホルムズ海峡の問題と合わせて、日本にとって非常に重要な論点だと思います。

▲LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長
赤澤: LOGISTICS TODAYの読者は大半が荷主企業と物流企業です。フォトレジストやガリウムの話はちょっと遠く聞こえるかもしれませんが、半導体が止まればトラックの電子制御ユニットが作れない。マテハン機器やロボティクスの導入も止まる。物流の現場に落とし込んだときに、そういう影響が遅れてやってくるイメージですよね。
太田: まさにその通りです。今回の影響の深さは、時間軸が非常に長いという点にもある。危機感があるようでなかったり、影響の深さが読みにくいということにも繋がってきます。
赤澤: こうした依存構造は以前からわかっていたはずです。なぜ今まで放置されてきたのでしょうか。
太田: やはりパクス・アメリカーナという前提があったと思います。アメリカが覇権国として存在し、冷戦が終結して、民主主義という共通言語で世界がコミュニケーションできるようになった。そういう時期が何十年も続いたという大前提がある。それが崩れつつある中で、見えていなかったものが一気に表面化しているのだと思います。
ホルムズ危機の影響はエネルギーや素材の上流だけにとどまらず、輸出入の現場にも直接的な打撃を与えている。太田社長の顧客企業から見えてくる実態はどうか。
赤澤: ホルムズ危機で船積みスケジュールが毎日変わるなか、Zenportの顧客企業の現場では具体的にどんなことが起きていますか。
太田: まずコンテナが取りにくくなっている。スケジュールが頻繁に変わるので分納やロールオーバーが増え、コミュニケーションの量が非常に増えています。さらにコンテナが取れないと1回の船積みを分けることになりますから本数が増え、それによって手間がどんどん膨らんでいく。

「ホルムズ危機の影響は、物流業界に長く影響を残す可能性がある」(太田代表)
例えば輸入を行っている企業で、スケジュールが変わるたびに入庫作業をやり直さなければならない。RCEPなどの特恵関税の書類の作り直しが発生したり、原産地証明の有効期限を確認し直したりという手戻りが、平時よりもはるかに多く発生しています。
赤澤: その現場を支えているのがエクセル元帳だと。
太田: 私どもの顧客企業はさすがにエクセルから移行されていますが、多くの企業ではまだエクセルが必須ツールです。皆さんご存じの企業でも、エクセルの達人が何十人もいるような状態で業務を回しているケースは非常に多い。
具体的に何が起きているかというと、どれだけ発注したかに対してどれだけ出荷されたかをエクセルで管理し、いついくつどこに届くかということを、通関書類やインボイスを目で見ながら、これはうちの発注商品のこれに当たるから今回は何ケースで、と手書きで書き写す。船会社のホームページに行ってB/L(船荷証券)番号やコンテナ番号を打ち込んでスケジュールを確認し、そのスケジュールをまたエクセルに書き込む。さらにそれを倉庫向け、通関業者向け、営業部向けと、相手に合わせて作り直して共有する。
赤澤: ちょっと待ってください。整理すると、まずエクセルがあって、船積書類のPDFが来る。インボイスやパッキングリスト、B/Lを目視でチェックする。エクセルに戻ってどこに記入するか探す。複数の箇所から複数の箇所に手入力して、注文データと出荷データを照合する。その上で船会社のホームページでスケジュールを頻繁にチェックし、転記して関係先にシェアする。これを普段からやっていて、ホルムズ危機でこの作業量が3倍、5倍になっていると。
太田: 爆発的に増加しています。
赤澤: データの大半が構造化されていないデータだということですね。PDFのインボイスを人が読んでエクセルに転記している。ホルムズで毎日スケジュールが変わる中にこれを何十件もやる。意思決定が仮に1日遅れたら、何が起きますか。

▲国際貿易では前工程から流れてくる紙やPDF、エクセルを人が読み取ってほかのファイルに転記し共有。運行状況が変わるたびにこれをやり直す必要がある
太田: いろいろな場面で影響が出ます。例えばいつ通関を切るか、コンテナをヤードからいつ出すかという判断が1日ずれただけで、フリータイムを超過する。倉庫のバースが空いていない、ドレージが取れないということも起こりうる。そうすると1日のずれが2週間のずれになり、2週間のずれが、次の製造ライン予約に間に合わないからさらに1か月後になるという形で、遅れが連鎖的に増幅されていく。
赤澤: 1日の遅れが1か月の遅れになる。それが今、現実に起きている可能性がある。ならば基幹システムをグローバルに導入すれば解決するかというと、そうでもないですよね。
太田: 基幹システムは絶対に必要です。ただ、途中の情報、間の情報を取るのは結構苦手なんです。グローバルSCは繋がりですから、その間にあるものが何かを把握していないと調整がかけられない。基幹システムを繋げれば何でもできるかというと、なかなかそうはならない部分がありますし、基幹システム自体が非常に複雑で重いものですから、地域を越えて繋ごうと思った瞬間に5年で何百億円という話が起きてしまう。
赤澤: SCマネジメントの発展段階として、線で繋ぐ段階、ハブを活用する段階、そしてメッシュ型と。日本企業は今どの段階にありますか。
太田: ハブからメッシュに移ろうとしている状況だと思います。日本の国内需要が小さくなっていく中で、海外で稼がなければならない。もともとグローバル化していた製造業でも、日本から北米という太い幹だけではもう成長できない。北米からインド、インドからヨーロッパ、インドからアフリカ、中国から東南アジアと、網の目状にネットワークを張り巡らせて最適化していかないと生き残っていけない。こういうプレッシャーが非常に強くあります。
赤澤: 急激に、かつ継続的に事業環境が激変していく中で、ERPの全社導入に5年かける。その間に事業構造は変わってしまう。ホルムズ危機で調達先を急きょ切り替えなければならないときに、ERPのアドオン開発に数か月かけるんですか。間に合わないですよね。太田社長がNoteで書かれていた「死の谷」というのはまさにここですね。

「SCの乱れにより、書類作業は3倍、5倍と増えている」(太田代表)
太田: 今までと考え方を変えないとできないというところが、死の谷の本質だと思います。同じように歩いていたら死んでしまうかもしれない。メッシュ型に移行していくときに、自分の見えていない範囲でも物事がちゃんと動いていることが追えるとか、全体像が頭の中にあるとか、そういう状態を作っていく必要がある。組み合わせが増えていく中で、一つ一つ追いかけるのではなく、それがちゃんとシステムの上に乗っていて、サマリーがわかる、自動的に管理される。ネットワークとして機能する。これがこれから非常に必要になってきます。
オントロジー、有事の共通言語
ハブ型からメッシュ型へ。その移行を支える鍵として太田社長が繰り返し使う言葉が「オントロジー」だ。
赤澤: 太田社長がよく使われる「オントロジー」、最初は正直、何をおっしゃっているのかと思いましたが、理解してみるとなるほどと唸るものがあった。物流の現場の方にもわかる言葉で教えていただけますか。
太田: とっつきにくい言葉だと思いますが、一言でいうと、皆さんの持っている感覚やナレッジを言語化する、それを共通言語化していくということだと思います。
例えば国際物流の世界でも、ある物流会社が、ある取引ではフォワーディングをやり、別の取引では倉庫もやっているし、また別の案件では通関業務しかやっていないというケースがあります。1社なのに、文脈によって役割が違う。日々の実務ではそれを人間が判断して進めていますが、こういうことをデータ化していく。これによって複雑な業務をシステムの上に乗せることができるようになる。見えなかったものが見えるようになる。それがオントロジーの役割です。
赤澤: これからAIが業務に広がっていく上でも、この考え方はかなり重要ですね。オントロジーのアプローチでSCマネジメントを構築すれば、本社のERPも、海外拠点のエクセルも、フォワーダーからのメールも、個別の開発なしに一つのネットワークとして繋がっていく。そういう理解で合っていますか。
太田: その通りです。共通言語をちゃんと作ることによって、このメールではこう表現されている、このシステムではこう打ち込まなければならない、でも裏側ではこういう位置関係にあってこういう意味ですよ、ということを読み取れるようになる。いわば神経回路のような言語を作っていくことで、皆さんが別々の形式でやっていることをどんどん翻訳していくことができる。だから個別の開発なしに全部繋いでいくことができるんです。

「コンテナ革命は荷物のインターフェイスを標準化したが、オントロジーは情報を標準化するのではないか」(赤澤編集長)
赤澤: 私がぱっとイメージしたのはコンテナ革命です。コンテナは中身を標準化したのではなく、箱のサイズというインターフェースを標準化した。オントロジーも同じで、業務の中身はそれぞれ違っていい。接続の仕方を標準化するということですね。
太田: まさにその通りです。インターフェースを揃えることによって、今までバラバラだったものが全部繋がる。一つの土俵で皆さんがコミュニケーションできるようになる。
赤澤: ERPを一つのお城と見立てると、お城の増改築で対処するのではなく、お城の外に高速道路を敷いていく。そういう考え方は成り立ちますか。
太田: おっしゃる通りです。お城をどんどん大きくして世界全体を覆ってしまうのではなくて、お城それぞれの良さを活かしながら、それを繋いでいく。その上で全体像がどうなっているかがわかるような仕組みを作っていく。
赤澤: 具体例でイメージすると、例えばベトナムの工場からインドの販売先に三国間で直送するとき、出荷情報が東京本社のエクセル担当者を経由しなくてもよくなる。そういう理解ですか。
太田: そうですね。裏側でいろいろなものが読み替えられて全部データになっていれば、そこを人が介する必要がなくなる。直接繋がっていくことができます。
ここまで構造的な問題と、オントロジーによる解決の考え方を掘り下げてきた。では実際にZENPORTを導入した企業では何が変わったのか。
赤澤: 思想の部分は非常によく理解できました。ただ、視聴者の方には「それは架空の話では」と受け止められる方もいらっしゃるかもしれません。実績で語っていただきたい。ZENPORTを導入して意思決定が変わった事例があれば教えてください。

「前後の工程の連携が取れると、コミュニケーションの頻度が下がっても、意志決定のスピードは上がる」(太田代表)
太田: メッシュの話でいうと、企業の中にもメッシュがたくさんあるんです。一番代表的なのは、調達の業務と後続のPSI(生産・販売・在庫)の業務が繋がっていないケースです。ZENPORTを使っていただくとそこが全部同期する。
ある会社さんで、箱詰め製品を作っている企業がいらっしゃいます。ZENPORTを使うことによって、何がいくつ発注されて、そのうちの何がいつ届くかがわかるので、箱に詰めるラインをこの画面を見ながら「これがいくついつ届くから、いつから工程が始められるね」という形で判断できるようになった。今まではエクセルに打ち込んで基幹システムに転記し、またどこかで取り出して、というプロセスだったのが、コミュニケーションは減っているのに意思決定の質が上がっている。
赤澤: 導入からどれくらい経ちますか。
太田: もう4、5年です。おかげさまでどんどん社内で使い方を広げていただいています。
赤澤: 4年以上使って、まだ広がっている。業務に完全に組み込まれているということですね。定量的に何が変わりましたか。
太田: やはりコミュニケーションが減る部分はわかりやすいですね。コミュニケーションというのは電話やメールだけではなくて、エクセルを作る、それを別の人向けに作り直す、システムに打ち込むといったことも全部含みます。そういう業務がごっそりなくなっている。メールだけ考えても50%程度は減っていると思います。
赤澤: 貿易というのはつまるところコミュニケーションです。書類や情報のやり取り、人間同士のやり取り。そのコミュニケーションの非効率をここまで30分かけて伺ってきましたが、それが半減するというのは絶大な効果だと思います。ZenportのWebサイトにもちゃんと50%の話が出ていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
もう一つ踏み込んで伺いたいのですが、逆に導入してもすぐには変わらなかったことは何ですか。
太田: やっている業務が複雑な中で、ソフトウエアに習熟していかないと本当に使いこなせないというハードルは、やはりどこかにあります。自分の業務をどこまで標準化するか、バッサリ切れるかということにもよりますし、逆に習熟速度が非常に速い方もいらっしゃる。さきほどの事例のお客さまなどは、現場の皆さんがわあっと集まってきて「これもできないか」「あれもやってみたい」と、部内に広がっていきました。ただ大きな組織になればいろいろな方がいらっしゃいますから、単純化の設計が必要な場面はあります。
赤澤: 最近、PDFの船積書類を自動的に読み取って構造化するサービスを出されましたね。ホルムズ危機のような局面ではどう効きますか。
太田: 数が出てくれば出てくるほど楽になるという話です。すでに導入いただいているお客さまの中では、PDFを入れたら一発でお客さまの基幹システムのデータに読み替えるところまで成功している事例があります。PDFがどんどん来ても、読み込ませて保存すればデータが入る。今までのように1個1個読んで書き換えて確認する作業が、場合によってはほとんど必要なくなる。それによって本当に身軽になって、世の中がどんどん変わっていく中で、変化に適応することに自分の頭と時間を使っていただけるようになります。
赤澤: 将来的にはAIが業務そのものを代行するイメージですか。
太田: そういう部分もあると思います。100%にはならないと思いますが。それだけでなく、在庫の最適化を計算するなど、違うAIの活躍の仕方も出てくると思います。
赤澤: ここまでさまざまな角度から伺ってきました。足元に戻ると、ホルムズ海峡がいつ正常化するか、現時点ではわからない。荷主企業や物流企業は、今日この話を聞いた後、今日から何を始めればいいのか。太田社長なりのメッセージをいただきたい。
太田: 大きな話と目の前の話、二つあるかなと思います。一つは、今起きていることがどんな影響をもたらすのかを、答えがないなりに考え続けるということが非常に重要だと思います。全体像は誰もわからない。手探りでいい。どこにどういう痛みが起こりうるのかを皆が考え続けながら、それにどう取り組んでいくかを議論する。この協力と思考そのものが、非常に重要なことだと思います。
ただ、それをやろうとしたときに、物事が見える化されていないとアクションには結びつけられない。メッシュ型への移行が全体の流れとしてある中で、重い投資をするのではなく、素早く見える化していく。深く考えたことを、状況を確認しながらアクションに結びつけていく。この「深く考える」と「見える化する」の二つだと思います。
赤澤: 逆にそれをやらない企業はどうなりますか。
太田: 本当に、ずぶずぶと難しい局面に入って行くケースもあるのではないかと思いますね。
赤澤: 4月1日からCLO(物流統括管理者)の選任義務化が始まりました。太田社長からご覧になって、CLOが必要とするデータ基盤はどのようなものですか。

「SC改革を着実に進めていくことが重要」(赤澤編集長)
太田: 物流は物流だけで単体で存在するものではないですよね。物を運んでいる先にプロセスがあり、その先にビジネスの結果がある。全てを繋いでいる動線が物流です。その物流が果たしている役割を全体像として見える化する。これを見える化してマネージしていくことが、本来的なCLOの役割だと思います。
今までの平和な時代には、そこを気合いでやっていても回っていた。しかしこれからは、物流がどうやって繋がっているのか、経営としての意思決定にどうかかわってくるのかが、データとして見える化されている状態を作る必要がある。それをグローバルにやっていくのが、CLOの非常に大きな役割だと思います。
赤澤: CLOを設置しても機能しない企業も多いのが現実です。なぜでしょうか。
太田: 物流というふうに狭く考えてしまうと、本当に物流が果たしている役割が逆に見えなくなってしまう。販売、生産、調達といったいろいろな機能とちゃんと繋ぎ合わせて考えることができれば非常に効果が大きいのですが、縦割りの組織の中でそれをやりきれないケースは多いのではないかと思います。
赤澤: CLOの選任義務化をはじめ、物流に関わるさまざまなルールがこの4月1日から大きく変わりました。一方でホルムズ危機という未曾有のSCの危機が同時に来ている。この数年間の物流改革に日本が取り組んできたことは、本当によかったと思っています。間に合ったのかどうかはわかりませんが、前向きな取り組みではあります。荷主企業も物流企業も、自社の、業界の、日本経済のSC改革をしっかり進めていくことが、答えに近づいていくことになるのではないかと感じています。
太田: 本当にそうですね。対応力を上げる、健全にしていくということが、この先の本当に難しい状況に対応していく上での第一歩になると思います。4月1日からのさまざまな制度改正や取り組みは、今後の基礎になっていくのではないかと思います。
赤澤: 最後に、物流に関わるすべての方にメッセージをいただけますか。
太田: 今ホルムズ海峡という危機の中で、皆さん本当に模索されていると思います。有事の経営が試されているし、自分たちが学んでいくプロセスなのだと思います。皆さんが感じている痛みを共有しながら、一緒に社会を作っていく、物流を作っていく。本来苦しんでいるこの状態が、さらに新しいものを作る一歩に繋がるのではないかと考えています。これを契機に、よりよい社会を作るきっかけだと考えて、皆さんと一緒に取り組めたらと思っております。
赤澤: そういうことを考えている太田社長が作った仕組みですので、ぜひ皆さんご自身の目で確かめていただければと思います。太田文行社長でした。本日はどうもありがとうございました。
◆ この記事をより深く理解するために ◆
ホルムズ危機、サプライチェーンの急所は





























