調査・データ日本商工会議所と東京商工会議所は12日、「中東情勢の緊迫化による中小企業へのエネルギー等の影響調査」の結果をまとめた。燃料やナフサ由来の石油化学製品の価格上昇、供給不安が地域中小企業の経営に広く影響しており、回答企業の92.5%が何らかの経営影響を受けていることがわかった。物流費の高騰も38.7%に上り、燃料費や原材料費の上昇が運賃・サーチャージを通じて幅広い業種に波及している。
調査は5月7日から29日まで、全国47都道府県の商工会議所会員企業を対象にウェブで実施。回答企業は2497社で、回収商工会議所数は205。業種別では製造業が612社、建設業が535社、卸売業が217社、小売業が232社、運輸業が103社など。従業員規模では5人以下が30.2%、6-20人が28.5%を占め、小規模企業の回答が過半を占めた。
中東情勢の緊迫化による事業活動への影響では、燃料、石油化学製品ともに「価格の上昇」が最多となった。ガソリン、軽油、重油など燃料では79.0%が価格上昇の影響を受けたと回答した。供給の停滞・目詰まりは28.0%、供給の不透明化は25.3%だった。
一方、石油化学製品では、製品・サービスの提供に関わる原材料・部材、販売用商品などで72.1%が価格上昇、52.8%が供給の停滞・目詰まりの影響を受けた。業務で使う消費財、備品、業務用資材でも77.9%が価格上昇、50.1%が供給の停滞・目詰まりを挙げた。燃料に比べ、ナフサ由来の化学製品や加工品では、納期遅れ、受注制限、仕入数量の割り当てといった供給面の影響が強く出ている。
経営への具体的な影響では、「仕入価格の高騰によるコスト負担の増加」が74.8%で最も多く、「燃料価格の高騰によるコスト負担の増加」が62.9%で続いた。物流関連では、「物流費(運賃・サーチャージ等)の高騰によるコスト負担の増加」が38.7%に達した。原材料や燃料の価格上昇だけでなく、輸送費の上昇が中小企業の収益を圧迫している実態が示された。
供給面の支障も経営に影を落としている。「仕入物資供給の停滞・目詰まりによる操業率・事業活動の低下」は30.6%、「納期遅延や受注制限に伴う失注・売上の減少」は27.4%だった。燃料供給の停滞による操業率・事業活動の低下は10.3%、操業・営業停止は3.6%にとどまったが、石油化学製品を含む仕入物資の目詰まりは、より広い範囲で事業継続に影響している。
業種別では、建設業、製造業、宿泊・飲食業で「仕入価格の高騰によるコスト負担の増加」が8割以上となった。建設業では、仕入れ物資の停滞・目詰まりによる事業活動の低下や、納期遅延・受注制限に伴う失注、売上減少の割合も他業種より高かった。資材調達の遅れが工期や受注に直結しやすい構造が反映された形だ。
運輸業では傾向が異なり、「燃料価格の高騰によるコスト負担の増加」が95.1%で最多だった。物流費高騰の影響を受ける側であると同時に、燃料費上昇を直接負担する側でもある運輸業の厳しさが浮き彫りになった。運輸業では、コスト増加分を「ほとんど価格転嫁できていない・していない」とする企業が61.0%に上り、価格転嫁の遅れが課題となっている。宿泊・飲食業ではこの割合が75.6%とさらに高かった。
仕入れ価格、燃料価格、物流費高騰の影響を受けている企業に価格転嫁の状況を尋ねたところ、「ほぼすべて価格転嫁できている」は11.4%、「一部、価格転嫁できている」は35.2%だった。一方、「ほとんど価格転嫁できていない」は34.4%、「価格転嫁していない」は14.0%で、価格転嫁が十分でない企業も48.4%に上った。コスト上昇を販売価格に反映できる企業と、取引環境や需要面の制約で反映できない企業に分かれている。
供給途絶や著しい価格高騰が生じた場合の事業継続期間では、在庫活用などにより「1か月以上の事業継続が可能」とした企業は37.1%。「影響はない。あっても大きな支障はない」は13.0%で、合わせて50.1%が1か月以上の活動継続が可能とした。一方、「1週間程度」は11.1%、「1日も活動できない」は5.7%で、1週間以内に事業継続が難しくなる企業は16.8%あった。運輸業ではこの割合が35.9%に達し、燃料供給途絶への脆弱性が目立った。
企業の対応では、82.1%が何らかの対策を実施、または検討している。内容は「上昇したコストの販売価格への転嫁」が39.7%で最多だった。次いで「業務等で使用する消費財・備品・業務用資材等の在庫確保」が38.9%、「燃料の使用量の削減・節約」が29.4%、「電気・ガス使用量の削減・節約」が27.9%、「仕入先・調達先の見直し」が26.0%、「代替となる原材料・製品の使用・検討」が25.8%だった。
在庫確保の動きも広がっている。「燃料や石油化学製品(原材料・部材・販売用商品)の在庫積み増し」は16.0%。積み増しを行っている企業のうち、燃料については56.5%が通常の水準を確保し、通常より多く確保している企業は合計10.6%だった。石油化学製品では、通常の水準を確保している企業が25.1%、通常より多く確保している企業が26.6%だった一方、48.4%は通常より少ない水準しか確保できていないと回答した。石油化学製品では在庫積み増しの意向があっても、十分に調達できていない企業が多い。
政府・自治体に求める対応では、「政府によるエネルギーの安定供給確保」が57.5%で最も多かった。次いで「電力・ガス料金の負担軽減」が24.2%、「資金繰り支援」が23.7%、「燃料費の負担軽減」が23.6%、「政府によるナフサ等の戦略的備蓄の強化」が22.3%、「原材料・部材(石油化学製品)の安定供給確保」が21.3%と続いた。
調査結果からは、中東情勢の緊迫化が燃料価格の上昇にとどまらず、石油化学製品の供給不安、仕入れ価格の高騰、物流費上昇、在庫確保行動へ波及している実態が浮かぶ。特に運輸業では燃料依存度の高さから、供給途絶時の事業継続可能期間が短く、価格転嫁も十分に進んでいない。物流費を支払う荷主側にもコスト増が及ぶなか、燃料費やサーチャージを含む取引価格の見直し、在庫・調達先の可視化、エネルギー安定供給策が課題となる。
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