ロジスティクスプラスオートメーション(+A、東京都江東区)が、物流ロボットの提案領域を広げている。創業以来、仕分けロボット「t-Sort」を起点に導入実績を積み上げてきた同社は、保管、品出し、搬送、ラベル貼付といった前後工程へとラインアップを拡張してきた。東京・平和島のR&D/デモスペース「cube」(キューブ)では、単体機器の性能ではなく、倉庫内の一連の“ものの流れ”として自動化を確認できる。(編集長・赤澤裕介)

▲同社のR&D(研究開発)やデモ用の施設「cube(キューブ)」
東京・平和島の物流施設内に置かれたcubeに足を踏み入れると、最新のロボットが整然と並ぶ。来訪者はその動きを間近で見学し、実機に触れることができる。社長の山田章吾氏は、この空間を「契約前の実験の場所」であり、「自社社員のトレーニングの場」であり、さらに「パートナーと連携して物流産業全体を高度化していくセンター」だと説明する。顧客は自社の荷物を持ち込み、実環境に近い形でテストできる。導入の稟議を通すために、現場で効くことを事前に確かめる、そのための検証施設である。近江商人の「三方よし」になぞらえれば、顧客よし、自社よし、産業よし。cubeは、その3つを1つの場所で回そうとする試みでもある。

▲山田章吾社長
黄色いロボットを起点に
同社の拡張戦略は明快だ。t-Sortで入り口を作り、既存顧客の現場課題を起点に前後工程へ広げる。仕分けロボットt-Sortは、点数ベースで同社の取り扱いの9割ほどを占める主力である。創業からおよそ5年はこの“黄色いロボット”に集中し、7年目に入る段階で、保管、品出し、搬送といった周辺工程へと提案領域を広げてきた。t-Sortを採用した顧客が、立体型の自動倉庫や重量物ハンドリングのロボットを追加していく。そうした横の広がりが、いま同社の成長を支えている。2019年に設立された同社は、現在は国内導入拠点数247拠点以上、国内ロボット導入数7400台以上に達しており(いずれも26年3月末時点)、t-Sortという実績があるからこそ、その前後へ手を伸ばせる。

▲小物・アクセサリー・軽量物を効率的に仕分けする「t-Sort mini2」
cubeは、その拡張を一筆書きで見せる場でもある。入庫、保管、品出し、仕分け、そして配送会社への引き渡し。倉庫の流れに沿って機器が並び、それぞれがどう連携するかを、来訪者は順を追ってたどれる。
入庫から仕分けまでの流れ
倉庫の流れは、入庫から始まる。cubeでまず動くのは、パレットを運ぶハンドリングAMR(自律走行搬送ロボット)だ。可搬重量は1.5トン。人がハンドフォークで担っていた作業を置き換える。荷が置かれた場所まで自ら向かい、車輪を格納してパレットの差し込み口を探り当て、ほとんど揺らさずに持ち上げる。決められたルートを忠実に走り切る確実さが、この機種の持ち味である。
搬送領域でも、選択肢は広がっている。取材時点では、人が行き交う現場を想定した新たな搬送AMRの投入も控えていた。決められたルートを忠実に走る従来型に対し、複数台が互いに動きを見ながら、カーブを描いて避けるタイプで、山田氏は「初上陸だと思う」と期待を示した。

▲高スループットと高密度保管を実現する自動倉庫「AirRob」
入庫した荷は、保管へと渡る。ここで主役となるのが、自動倉庫「AirRob」(エアロボ)だ。t-Sortで仕分けを押さえた同社が、AirRobによって保管、品出しまで工程を広げる。専用トートを使う仕組みはすでに国内8拠点目に取り掛かっており、発売から1年あまりで、既存のt-Sort顧客が追加採用する例が増えている。今回、段ボールを扱うエリアも初めて公開された。指定トート以外の容器にも対応の幅が広がり、コストの最適化にもつながる動きだ。その先には、さらに踏み込んだ構想がある。夜間のうちに荷合わせを終え、朝には箱詰めだけが残っている、そんな仕組みを開発中で、具体的な商談もすでに動いているという。仕分けの小物を得意とする会社という従来の見方は、ここで塗り替えられていく。

▲ロボットと人手を併用し、繊細な商品の仕分けに最適な「t-Sort MAS」
そして、同社の原点である仕分けへ。最新のレパートリーが「t-Sort MAS」だ。ロボットと人手を併用し、割れ物や化粧品のような繊細な商品を、丁寧に格納していく。細かな店舗向けの仕分けで、荷扱いの品質が問われる場面に向く。デジタルアソートシステム(DAS)と組み合わせ、人が一つずつ整理整頓する工程を支える。同社の持ち味は、ロボットを何十種類も並べることではなく、厳選した機種の使い方を変え、運用を変え、現場ごとの課題に合わせることにある。立体化が難しければ平面で、平面で入らなければ立体で、荷が傷つくなら別の方式で。7年近く仕分けに特化してきた蓄積が、このレパートリーを生んでいる。各工程はレゴブロックのようにモジュールとして独立し、人が介在しやすい。t-Sort系の仕組みはアンカーを打たずに構成でき、移設やレイアウト変更もしやすい。サブスク型のRaaSと組み合わせることで、現場の変化に合わせた運用変更にも対応しやすくなる。
引き渡し前の一角で
倉庫の流れは、仕分けの先で配送会社への引き渡しを迎える。その際に必要となるのが、段ボールへのラベル貼付だ。cubeの一角では、この工程を自動化する取り組みが進められていた。ラベリング機器大手のサトーとの連携によるものである。
ただ、この日のラベリングゾーンは、まだ動き続ける完成形ではなかった。ベルトの回転、スキャナーの角度、ラベル貼付のタイミング。ラベルの送りが強すぎる、箱に対する角度が合わない。その都度、試運転と調整が繰り返される。社員が数値を変え、もう一度流し、また止める。セットアップ途上の現場が、そのまま置かれていた。
これを自社の手で詰めることに、山田氏はこだわる。「自社でできないと、お客様には胸を張ってサービスをお出しできない」。どこでつまずくのか、メンテナンスの勘所はどこか。建設や据え付けを外部に丸投げすれば、現場でトラブルが起きたときに対応できない。だからエッセンスは自分たちで押さえる、と話す。cubeが「社員のトレーニングの場」でもあるという説明は、この一角に具体的な姿を見せていた。
計画と制御をつなぐ
工程をつなぐのは、機器だけではない。自社開発の庫内実行システム「+Hub」は、倉庫管理システム(WMS)とロボット、周辺機器をつなぐ結節点となる。ただし、倉庫実行システム(WES)がロボットを直接動かすわけではない、と山田氏は整理する。計画や実行状況を扱う上位の仕組みと、実際の制御を担う仕組みは別であり、両者をどう接続するかが鍵になる。

わかっている顧客ほど、計画をある程度自動で組んでほしいという要求を出してくる。一方で、初めて訪れる顧客には、可視化だけのツールなのか、制御まで担うのかの区別がまだ伝わりきらない。cubeは、その境界を現物で確認できる場でもある。図やカタログではなく、実機が連携して動く様子を見せることで、言葉だけでは通じにくい役割分担を伝える。
自前で立ち上げる
cubeそのものの立ち上げも、同社は自前で担った。新しい仕組みは実験しながら組み上げ、今回のラベリングに合わせて新しいマニュアルも自分たちで作成した。メーカーに任せれば「見て、なるほど、で終わってしまう」が、自分でやればマニュアルが書ける、と山田氏は言う。中小規模であれば1日で立ち上げられるのが同社のRaaSの強みだが、新しい仕組みの習得には、それなりの人手と時間をかけている。
cubeの拡張は止まらない。来月にはまた新しい機種が加わり、パートナーとの協業エリアも設けられた。マテハン会社経由の供給に加え、ラベリングで組むサトーのように、自社製品とロボットを持ち寄って新しい事例をこの場で作る動きも出てきている。ソフトウェアの難易度が下がるほど、ハードウエアの多様化と、それを現場で動かし切る力が問われる、と山田氏は見る。倉庫の流れを一本につなぐ同社の挑戦は、cubeという場で、いまも更新され続けている。
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