イベントHacobu(ハコブ、東京都港区)は8日から開催されている国際物流総合展2026に出展した。トラック予約受付「MOVO Berth」(ムーボ・バース)や動態管理「MOVO Fleet」(ムーボ・フリート)を通じて車両・拠点を軸とした運行DX(デジタルトランスフォーメーション)をけん引してきた同社だが、今回の展示会では、請求突合サービス「MOVO Billing」(ムーボ・ビリング)と契約・運賃管理サービス「MOVO Contract」(ムーボ・コントラクト)の2大AI新サービスを初披露。ドライバーや運行管理といった動態領域から、紙や手作業が根強く残る営業所バックオフィスの事務領域まで支援対象を大幅に広げ、物流業務全体をカバーする布陣を整えた。
しかし、現場の事務負担軽減や取引適正化を果たすこれらツールの投入は、同社が描く壮大なロードマップの通過点にすぎない。今回の展示や取材、パネルディスカッションを通じて浮き彫りになったのは、蓄積されたビッグデータを束ね、業界全体の意思決定を自律化させる「AIドリブンロジスティクス」(ADL)への進化と、異種システムを横断する次世代データ連携基盤構想だ。

▲国際物流総合展のHacobuブース
会期初日に行われたパネルディスカッション「自動運転の進化による物流の未来」において、佐々木太郎代表取締役社長CEOは、同社が掲げてきた「データドリブンロジスティクス」の先にある次世代のビジョンについて次のように語った。
「これまで現場の情報をデータ化し、人がデータに基づいて意思決定を行う『データドリブンロジスティクス』を標榜してきたが、最近気づいたのは、それはあくまで前座にすぎなかったということだ。蓄積したデータをAIが能動的に活用し、最適な判断を下す、あるいは高度に支援する『AIドリブンロジスティクス(ADL)』の世界を具現化していく」
佐々木氏は、政府が掲げる国家戦略17分野の半導体・AI領域において、特定産業に特化した「バーティカルAI」が定義されている点に言及。「その中でも物流分野のバーティカルAIがもたらすインパクトは極めて大きく、Hacobuは今、それを社会実装する最も近いポジションにいる」と自負を示した。
このAIドリブン構想を具現化するため、同社が水面下で準備を進めているのが、業界の枠組みを越えた新たなデータ連携基盤だ。
ブースでの取材に応じた同社広報担当者によると、Hacobuは今秋(9-10月頃)の発表に向け、「各社が導入している既存システムを変えずに、異なるシステム間でシームレスにデータをつなげる新構想」の開発を進めているという。
物流現場では、個別最適化された基幹システムや配車管理、各種デジタコ、ドラレコなどの外部ツールが乱立しており、標準化されたSaaSの導入だけでは埋めきれない領域が依然として多い。同社は自社の「MOVO」シリーズの普及にとどまらず、他社ベンダーや実運送会社が持つ異種データを包含して結びつけることで、真の意味でのビッグデータ基盤を構築しようとしている。担当者はこの挑戦を「会社として非常に大きなチャレンジになる」と明かした。
こうしたデータプラットフォームの構築が急務とされる背景には、2030年代に向けた自動運転やAI配車の本格実装というタイムリミットがある。
パネル討論で佐々木氏は、「幹線輸送が自動運転トラックに置き換わっても、帳票が紙のままではサインをもらうために人が乗っていなければならない。出荷側と受け取り側の双方がデジタル化されて初めて、技術革新の恩恵を享受できる」と現場の遅れに強い警鐘を鳴らした。「現場が昭和から変わっていないと感じるなら、今すぐ意思決定すべきだ。今からデータを蓄積しておかなければ、技術が本格実装された瞬間に先行企業と絶望的な差が開く」
広報担当者も、実運送会社の間で進むデジタル化の二極化と、AI台頭による格差拡大の現実に危機感を示す。日々の運行計画が労働時間の限界に張り付き、わずかな渋滞や荷待ちで業務が破綻するような中小・零細事業者は、データ蓄積を進めなければ大手路線会社が主導する幹線無人化ネットワークへの接続すら拒まれる恐れがある。少なくともその時点で受発注その他の情報をデジタルで扱える環境を整えられていなければ、無人化・自動化された幹線輸送をしている物流事業者の、輸配送ネットワークに参画することは難しいだろう。
今回発表されたMOVO BillingやMOVO Contractは、営業所の事務負担を即座に削ぎ落とす実務ツールであると同時に、企業がAI時代に生き残るための「データ資産」を生み出すための入り口でもある。車両・拠点・事務の全領域から吸い上げられる現場データを束ね、分断された物流インフラをデジタルで再統合する。ADLへの挑戦は、産業の生命線を次世代へとつなぐ重大な転換点を示しているのではないだろうか。
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