ロジスティクスEUが主導する税関制度の抜本的な刷新と環境規制が、日本企業のサプライチェーン再編を強く促している。オランダ経済・気候政策省企業誘致局(NFIA)は16日、自社物流を持つ大手・中堅企業を対象としたセミナーを機械振興会館(東京都港区)で開いた。計3回開催された関連イベントの最終回として、専門家が欧州の最新制度に対応する意義を強調した。
日本機械輸出組合(東京都港区)専務理事の赤津光一郎氏が開会のあいさつに立った。同組合は機械製品を輸出する220企業を抱え、大手・中堅企業の課題解決を担っている。赤津氏は2023年に実施したオランダ現地調査の実績を交え、脱炭素化やデジタル化への対応を促した。通商環境分野の新たな動向を的確に把握する重要性を説き、来場者に変革を訴えかけた。

▲日本機械輸出組合専務理事の赤津光一郎氏
NFIA駐日代表のエド・デ・ロンデ氏は、日EU経済連携協定の締結以降に両者間の貿易額が25%増加した事実を明かした。日本から欧州への投資額30兆円がオランダを経由していると説明し、その背景として同国が有利な税制や投資協定のネットワークを持つ点を挙げた。直近の動向として、郵船ロジスティクスによる医薬品物流企業の買収や、三井物産によるロッテルダム港の化学タンク保管庫の買収を紹介。「子どもの頃に日本の大企業のネオン広告を見て育った」と自らの原体験を振り返り、日蘭の深い結びつきを語った。

▲オランダ経済・気候政策省企業誘致局の駐日代表エド・デ・ロンデ氏
続いて、PricewaterhouseCoopers(プライスウォーターハウスクーパース、オランダ)関税・国際貿易部門パートナーのクラウディア・ボイシン・ダムステ氏が登壇した。今後のEU税関改革により、企業と税関のシステムを常時接続するデータハブが本格稼働すると説明した。7月に150ユーロ以下の少額貨物に対する免税措置が撤廃された事実を挙げ、無償の交換部品にも手数料が発生すると警告を発した。CBAM(炭素国境調整メカニズム)やEUDR(EU森林破壊防止規則)の対象範囲の広さも指摘し、機械に用いるゴム部品もEUDRの対象となるため注意が必要だと呼びかけた。

▲PricewaterhouseCoopersオランダ 関税・国際貿易部門パートナーのクラウディア・ボイシン・ダムステ氏
質疑応答では、来場者との間で活発な意見交換が行われた。海外子会社からの輸出におけるEUDR対応を巡る質問に対し、クラウディア氏は輸入者がデューデリジェンスを実行する義務を負うと明言した。デューデリジェンスとは、企業が取引先や供給網のリスクを適正に評価し管理する一連の調査手続きを指す。同氏は、取得した証明はバリューチェーンを通じて共有可能であると補足した。
さらに、CBAM導入の成否を問う学識者からの質問に対しては、「目的は関税徴収ではなく供給網のグリーン化だ」と切り返した。規則による税収入がゼロになれば制度として成功だと言い切り、参加者の理解を深めた。(菊地靖)

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