
話題物流施設の立地を、賃料だけで選ぶことが難しくなっている。
輸送費の上昇、ドライバー不足、物流拠点で働く人材の確保。さらに食品物流では冷凍・冷蔵への対応など、施設に求められる機能そのものも変化している。倉庫の坪単価だけではなく、輸送距離や配送頻度、人材まで含めて物流全体のコストを考える必要性が高まった。
そうした視点で改めて注目したいのが、東京外かく環状道路(外環道)の沿線だ。
外へ広げる圏央道、内へ届ける外環道

外環道は、都心から15キロ圏を環状につなぐ高規格幹線道路だ。関越道、東北道、常磐道、東関東道など、東京から放射方向へ延びる高速道路を横につなぎ、各方面への交通を振り分ける。
物流拠点としてまず挙げられるのは、この広域ネットワークへの接続性だ。
三郷、八潮、川口など埼玉県東部・南部を拠点とすれば、常磐道から茨城方面、東北道から北関東・東北方面、関越道から群馬・新潟方面へ展開できる。三郷ジャンクション(JCT)から東側へ進めば千葉方面にもつながる。
東京建物も外環道の特長について、東北道、関越道、常磐道への接続による広域配送と、首都圏までの距離の近さを併せて挙げる。
ここで比較したいのが、国道16号と、さらに外側を走る圏央道だ。
16号沿線では柏、流山、相模原などを中心に大型物流施設が集積し、首都圏配送と広域配送の双方を担う物流圏を形成してきた。圏央道沿線では久喜、白岡、加須などに物流拠点が広がり、より広域的な幹線輸送や大規模センターの受け皿となっている。
いずれも都心を取り囲む環状方向の物流軸だが、役割は同一ではない。
言うならば、圏央道が「外へ広げる環」なら、外環道は「内へ届ける環」だ。
もちろん外環道も広域配送を担う。違いは、その機能を持ったまま、巨大消費地である東京へ一段近づけることにある。圏央道が広域物流網を組むための環だとすれば、外環道はその荷物を都市物流まで「組み切る」ための環ともいえる。
三郷への物流集積などで脚光、その先を見る
外環道沿線でも、とりわけ物流施設の集積が進んだのが三郷JCT周辺だ。
その背景には高速道路へのアクセスだけでなく、自治体による明確な産業拠点形成策がある。
三郷市は三郷インターチェンジ(IC)周辺を市の主要拠点の一つと位置付け、三郷インター南部地区では土地区画整理事業を通じて「自動車利用型の新しい流通・業務・工業系の拠点形成」を推進。その南側の南部南地区でも、既存の産業集積をさらに広げる方針を掲げている。都市計画マスタープランでも、IC南側を流通業務施設の誘導による「産業拠点」と明記している。
こうした計画的な用地供給を背景に、大型マルチテナント型物流施設の開発も相次いだ。
一方、集積が進めば、そのエリアを検討する企業も増える。三郷について「ニーズも物件もある」状態となり、賃料水準の伸びも大きいとの声が聞こえ始めた。あえて賃料が高額化する三郷を避け、八潮や川口をターゲットとした外環道拠点戦略も見受けられる。
物流施設が集まれば利便性や認知度が高まり、さらに需要を呼ぶ。一方で賃料や交通量、人材確保など、新たなコストも生まれる。
だからこそ、「外環道」という名前だけで拠点を決めるのではなく、三郷、八潮、川口など、同じ沿線内でどこに置くかまで比較する必要が出てくる。
「人」まで含めて立地を選ぶ
もう一つ、郊外へ拠点を広げる際の大きな制約となるのが労働力だ。
外環道東部では、つくばエクスプレス(TX)の開業や住宅開発によって人口集積が進んだ。
八潮市の人口ビジョンでも、2005年のTX八潮駅開業や周辺市街地開発などを背景に人口が増加してきた経緯が示されている。
同市の人口は05年の7万6166人から25年には9万3632人へ増加。15-64歳の生産年齢人口も16年の5万5192人から25年には6万1978人へ増え、人口に占める割合は66.2%となった。

▲2027年8月の竣工を予定する「T-LOGI八潮」(出所:東京建物)
全国的に生産年齢人口の減少が物流現場の共通課題となるなか、施設の背後に通勤可能な人口を抱えることの意味は大きい。
東京建物への取材でも、16号や圏央道沿線に拠点を置く企業から、賃料負担を増やしてでも輸送距離を縮められる場所へ移りたいという相談があるという。同社は、物流立地を「賃料と距離と労働力のバランス」で考える傾向が強まっているとみる。
安い土地へ遠ざかることが、必ずしも物流全体のコスト低減にはならない。
冷凍冷蔵物流で問われる「消費地への距離」
外環道の「内へ届ける」機能をより鮮明にするのが、冷凍冷蔵物流だ。
冷凍食品は生活の中に定着し、低温物流を支える施設側にも変化を迫っている。
日本冷蔵倉庫協会は、冷凍食品や加工食品の増加によって、重量に対して容積の大きい貨物が増え、保管スペースの不足感が強まっていると指摘している。また、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、外食チェーンへの多頻度・少量配送が増え、冷蔵倉庫にも仕分けや流通加工など、単純な保管以上の機能が求められているという。
ここで初めて、東京ベイとの比較が意味を持つ。
東京・横浜などの湾岸部には従来から多くの冷蔵倉庫が集積してきた。一方、日本冷蔵倉庫協会は大都市圏での庫腹不足や既存施設の老朽化、建設費高騰などを課題に挙げている。
同協会が示す「流通型冷蔵倉庫」は、高速道路IC近くの内陸部に立地し、スーパー、コンビニ、外食チェーンなどへの配送ハブを担うものだ。
広域輸送で運ばれてきた商品を消費地手前で受け、仕分けし、多頻度で届ける。この役割を考えるほど、高速道路ネットワークと東京への近さを両立する外環道の物流適性が見えてくる。
施設も大きさ、汎用性から、新たな評価軸へ
物流需要が変われば、施設供給にも同じ変化が起きる。
三郷JCT周辺で大型マルチテナント型施設の集積が進む一方、すべての企業が大規模な標準型ドライ倉庫を必要としているわけではない。
一棟を自由に使いたい。配送車両の拠点も兼ねたい。冷凍冷蔵設備を自社で保有せず借りたい。低温でも保管だけでなく高頻度に商品を動かしたい。
施設に求められる答えは細分化している。多様なニーズの受け皿となることが期待される外環道エリアでは、よりその傾向が顕著となり、もはやこれまでの賃貸型倉庫の「標準」の定義さえも変わり始めている。
特に冷凍冷蔵は個別性が高く、賃貸物件の開発が難しい領域だ。ただ、既存冷蔵倉庫の老朽化が進む一方、新築や建て替えには大きな投資を要する。一般の賃貸倉庫を冷凍冷蔵仕様にする場合にも、設備投資や退去時の原状回復が負担になる。
こうしたなか、デベロッパーがあらかじめ冷凍冷蔵設備を備えた賃貸施設を開発する動きでニーズに応えようという動きが、今後ますます加速していくことは間違いない。外環道はその格好の開発ターゲットとなるエリアだ。
東京建物も外環道のエリア特性と多様化する物流への関心の高まりを重ね合わせ、新規開発に注力する一社だ。外環道沿線ではドライ型の「T-LOGI八潮」(27年8月竣工予定)に加え、「T-LOGI八潮II」(29年1月竣工予定)「(仮称)川口物流施設PJ」(29年秋竣工予定)で冷凍冷蔵施設を計画する。同社はBTS(特定企業向けオーダーメイド型)などを通じて蓄積してきた冷凍冷蔵施設の知見を、賃貸型施設の開発へと広げている。

▲冷凍冷蔵倉庫を備えた「T-LOGI八潮II」(出所:東京建物)
これは外環道に特定の用途が集中するという話ではない。
むしろ、都市へ近い物流拠点だからこそ、単なる大量保管ではなく、何を、どう動かすかまで含めた施設選択が必要になってきたということだ。
外環道を「立地」ではなく物流戦略で考える
物流施設の評価は、もはや賃料だけでは決まらない。
どこから荷物を運び、どこへ届けるのか。そこで何人が働き、何台のトラックを動かすのか。どの程度の頻度で商品を動かし、必要ならどの温度帯で管理するのか。
東京建物も今回の取材で、施設選びについて「賃料と距離と労働力のバランス」を見る傾向が強まっていると指摘した。
圏央道、16号、外環道は、いずれも首都圏物流を支える重要な道路網だ。
ただ、「どこが優れているか」ではなく、どの物流を担わせるかが違う。
「外へ広げる圏央道。内へ届ける外環道」
さらに言えば、広域物流を組むだけでなく、その先の都市物流までどう組み切るのか。
外環道は今、物流施設を置くための単なる「立地」ではなく、首都圏の物流ネットワークそのものを組み直す「戦略の起点」として検討すべきエリアになっている。
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