ロジスティクス福山通運が27日、新たな届出運賃「2026年運賃」を11月2日から適用すると発表した。西濃運輸の8月、佐川急便の2027年1月と、大手の運賃改定が続いている。これを便乗や横並びと片付けず、業界が本来たどるべき道筋として見直してみたい。(編集委員・刈屋大輔)
大手で相次ぐ運賃改定
福山通運の2026年運賃は、24年度運賃と比べて、距離と重量に応じ20%程度の引き上げとなる。今回の適用は11月2日。休日配送の割増料金も改め、11月23日の集荷・配達分から1個当たり200円を250円に引き上げる。同社は自助努力で現行の水準を保ってきたが、24年4月に始まったトラックドライバーの時間外労働の上限規制への対応や、車両維持費の高騰を踏まえ、改定に踏み切った。

(出所:福山通運)
西濃運輸は8月21日から、一般便を対象に26年運賃を適用している。引き上げ幅は地域や距離、重量によって異なるが、24年運賃比で20%程度だ。法改正への対応、労働環境の改善、エネルギー費や車両価格の高止まりを、改定の背景に挙げた。
佐川急便は10月2日、27年1月1日から宅配便などの届出運賃・料金を改定すると発表した。宅配便も特積みの一形態にあたる。飛脚宅配便と飛脚ラージサイズ宅配便の平均改定率は約13.8%に上る。関東発関西着の例では、60サイズが1040円から1060円と小幅にとどまる一方、170サイズは3360円から4200円と25%上がる。140サイズ以上では、15-25%の幅で上がる。
三社の発表時期も対象も異なり、各社が自社の判断で届出を行ったものと受け止めるのが自然だ。そのうえで、大手が運賃の基準を先に示す動きは、本来の業界のあるべき姿ではないか。規模の小さな事業者は、荷主に値上げを求める際の根拠を持ちにくい。大手が水準を示せば、中小零細も自社の原価を積み上げたうえで、荷主へ値上げを説明しやすくなる。
各社が示し合わせて価格をそろえるカルテルや談合とは、まったく別の話である。他社の動きを見ながら各社が自社のコストで独自に判断することと、事前に価格を調整することは、はっきり区別される。
運賃相場を崩した大手の姿勢
トラック運送業界の競争の厳しさは長く指摘されてきた。その一因は、中小零細の数の多さだけでなく、大手が値下げ競争を繰り広げてきたことにもある。体力のある大手が採算を割り込む価格を示せば、それが荷主の相場観になる。同じ価格に付き合わされた中堅以下は、適正な運賃を収受できなくなる。
倉庫でも同じ構図があった。大手の一部には、減価償却の済んだ倉庫をタダ同然の賃料で貸し出し、周辺の相場を崩してきたという先例がある。保管や荷役の料金が下がれば、当然トラック運賃にも値下げの圧力が及びかねない。
本来であれば、価格の基準を示す立場にある大手が、その役目を果たしてこなかった。値引きで荷主をつなぎとめる経営が、中堅以下を含めた運賃水準を押し下げてきた歴史がある。
価格の基準を示す責任
プライスリーダーとは、市場での存在感が大きい企業が先に価格を改定し、ほかの企業がそれに従う価格形成の姿を指す。先導役が安値で攻めれば周囲も引きずられ、先導役が採算の取れる水準を示せば周囲もそこに収れんする。価格は、最も力のある企業の振る舞いに左右されやすい。
トラック運送は、事業者の99%以上が中小企業で、保有車両10両以下の小規模事業者だけで半数を超える。荷主との力関係も弱い。個々の事業者が自力で価格を引き上げようとしても、荷主に断られれば終わる。だからこそ、先導役の大手が先に数字を示す意味は大きい。
今回の福山通運、西濃運輸、佐川急便の動きは、大手がようやくプライスリーダーの役目を引き受け始めたものとも読める。西濃運輸と福山通運は24年運賃比で20%程度、佐川急便は宅配便で平均約13.8%と水準に違いはあるが、いずれも運賃の底を引き上げる方向にそろった。
もっとも、届出運賃の改定率が、そのまま収受できる運賃になるわけではない。荷主との個別の交渉が残る。福山通運の2026年3月期第3四半期(4-12月)の運送事業は、単価が前年同期比2.0%の上昇にとどまった。届出を引き上げたあとに、どこまで実際の取引へ反映できるかが問われる。
それでも、価格の基準が上向きに示される意味は小さくない。中小零細にとっては、荷主との交渉で拠り所にできる物差しが生まれる。大手が値下げの先導役から、運賃を守る先導役へ移るのであれば、業界にとって歓迎すべき転換である。大手の本気度は、届出のあとの交渉の場で試されることになるだろう。
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