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コンクリート土間床の沈下修正工法を開発したメインマーク

床を持ち上げる「縁の下のウレタン」

2021年9月29日 (水)

棚には荷物が載せられたままで、もちろん現場は作業中だ(写真は硬質発泡ウレタンを注入して床の沈下修正工事を実施している様子)

話題2018年9月。東京ビッグサイトで開催中の「国際物流総合展2018」の出展ブースを、ある企業の担当者が訪れた。「東日本大震災による液状化で、東北地方にある我が社の物流倉庫の床が沈んでいるんです」。コンクリートの床面に凸凹が生じ、フォークリフトや台車はスムーズに動かせず、かろうじて残った水平面に荷物を積み上げて保管している。腰痛を訴える従業員も出ているという。出展ブースの担当者は、床面の沈下を修正する画期的な工法を紹介し、展示会終了後に現地調査を実施。年が明けて間もなく、倉庫の床は8年ぶりに元の姿を取り戻した――。(LOGISTICS TODAY編集部)

大掛かりな工事なしに床を修正、その秘密は「テラテック工法」

堅固でまず壊れることはないと思いがちな、物流倉庫のコンクリートの床。しかし、こうした地震による液状化や構造体の経年劣化、軟弱地盤などで床が沈んだり傾いたりする現象は、実際にはそれほど珍しいことではない。とはいえ、床の修繕となれば、長期にわたって業務を止めて大規模な修繕工事を進めなければならない。床の状態によっては、建て替えも覚悟しなければならない。物流業務への支障は避けられず経営にも大きなダメージだ。従業員の業務中の事故や健康被害も心配だ。

ところが、そんな大掛かりな工事をしなくても倉庫の床を修正できる工法がある。その「テラテック工法」を展開するメインマーク(東京都江戸川区)を訪ねた。

▲テラテック工法を説明する新井さん

本社オフィスで記者を出迎えた、営業本部関東営業部の新井翔太・部長代理は、テラテック工法をデモンストレーションで解説した。「『テラテック樹脂』と呼ばれる硬質発泡ウレタンが広がりながら膨張し、床を持ち上げるのです」。つまり、このテラテック樹脂を沈んだ床の下に注入して膨らませることで、床を持ち上げて修正するというわけだ。

床が沈んだり傾いたりするのは、地盤の影響によるものです。沈下や傾きが生じている場合は、床下に空洞が生じていることが多いのです。この空洞にテラテック樹脂を注入することで、その膨張力で床を押し上げて水平にするわけです」(新井さん)。床の沈下や傾斜を修正する工法といえば、沈下した床を壊して砕石で埋めて再びコンクリートを打ち替えるもの、または沈んだ床の上から水平になるようにコンクリートを「増し打ち」するものが一般的だった。しかし、これらの工法には大きく2つの欠点があった。

1円玉より小さい注入孔で施工が可能、その秘密は「ウレタン」の特性

いずれの工法も、倉庫内の棚や荷物などの移動を含めると15日から1か月近くの工期が必要で、その間はほぼ業務を停止せざるを得ない。さらに、打ち替え工法の場合は、沈下部分を埋めるための砕石やコンクリート自体が重みとなって、地盤をさらに押し下げる可能性があるのだ。テラテック樹脂は重さが砕石の40分の1と極めて軽く、床下の空洞部分で膨張するため、樹脂原料の注入時に床に大きな穴を開ける必要がない。「注入孔は1円玉より小さい直径16ミリメートルで済みます」(新井さん)。これが、工事を最小限に抑えるポイントだ。200平方メートル程度の面積の修正工事であれば、わずか8時間で完了するという。もちろん、小さな穴から樹脂を注入する作業だけで済むので、従来の床材をそのまま使えて経済的だ。倉庫内の荷物を運び出す必要もなく、施工後もすぐにトラックの通行が可能であるなど業務も通常通り継続できるという。

▲テラテック工法の手順。小さな孔からウレタンを注入し膨張させて床を持ち上げる(出所:メインマーク)

液状化で被災した、東北地方の物流倉庫。メインマークの担当者が現地で調査したところ、最大で34センチメートルの沈下が確認された。600平方メートルほどの倉庫内で沈下箇所も広範囲に及び、さすがに6日間の工事が必要だった。しかし、現場の倉庫は24時間フル稼働で取り扱う荷物量も多い基幹拠点。先方からは、1年間で倉庫の操業を停止できる年明けの3日間の工期を求められた。人員を2倍に増やし、1日あたりの作業時間も2倍に広げることで、水平な床を再現することができた。新井さんは「テラテック工法は、お客様の使用用途や荷重に応じて注入する樹脂の圧縮強度を選定し、求められる強度に応じた施工が可能です。これも、樹脂ならではの強みです」と話す。実際の施工時に注入量を調整して全体のバランスを確認しながら工事を進めるため、床の修正をミリ単位で調整できるというわけだ。

▲床の沈下修正工事の進行イメージ

こだわりは「工事で業務を極力止めない」

メインマークは、このテラテック工法の他にも、建物の傾きの修正や沈下抑止、液状化や盛り土造成地の地滑り対策などに対応したさまざまな工法を提案している。テラテック工法だけでは解決が難しい場合も、他の工法を組み合わせることで、顧客の要望に応える体制を整えている。液状化対策工事はその代表例で、直径2メートル程度の立坑からトンネルを掘るように敷設する推進工法により、地上の工事占有面積を最小限にとどめることができる。ここでも、修正機能を維持しながら工事の影響を小さくするメインマークの考え方が反映されている。

ことし10月13日から3日間、東京ビッグサイトで開催予定の「国際物流総合展2021 第2回 INNOVATION EXPO」のメインマーク出展ブースでは、テラテック工法をはじめとする多様な工法を紹介するほか、テラテック樹脂を使った実演も披露する。

■沈下した床の修正デモンストレーション(2021年6月開催の関西物流展より)

メインマーク「テラテック工法」サイト
メインマーク「国際物流総合展2021」出展案内
展示ブース:B-506
展示内容:テラテック工法など多様な工法の紹介・実演

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